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不動産ファンドに転職するには?年収の相場と必要なスキル・資格

  不動産業界に該当する仕事は幅広いですが、そのなかでも特に注目されている業種の一つが「不動産ファンド」です。資産運用の規模によっては大きい収益を上げられるうえ、高い不動産と金融の専門知識が求められることから、比較的年収が高い不動産業界のなかでも、特に高年収になりやすい傾向があります。転職における重要な判断材料であるため、不動産ファンドに魅力感じる人は少なくないのではないでしょうか。 そこで今回は、不動産ファンドの概要と年収の相場、未経験者が転職するためのおすすめの方法や資格について解説します。不動産ファンドへの転職を成功させたい人や転職を後悔したくない人はぜひ内容を確認してみてください。  

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目次
 

1.不動産ファンドとは?

不動産ファンドは「不動産特定共同事業」もしくは「不動産投資信託」のことで、いずれも複数の投資家から資金を収集して不動産に投資、運用することで利益を生み出す仕組みや組織のことをいいます。転職市場においては、不動産ファンドは組織(会社)として表すのが一般的です。 その詳細を以下で解説しましょう。  

不動産ファンドの定義と仕組み

ファンドには取引する商品によって、株式ファンド、債券ファンド、新電力ファンドなど様々な種類があり、組織としてのファンドは基本的に「投資のプロ集団」を指すことが一般的です。不動産ファンドはその中でも土地や建物といった不動産に特化しており、投資家から集めた資金を元に不動産に投資して運用し、家賃収入・売却益といった利益の一部を出資額に応じて、配当金として投資家に還元。残った金額が組織(会社)の利益となります。 不動産ファンドは、しばしば不動産投資や土地活用と混同されることがあるので注意してください。 基本的に不動産投資は投資家自身が土地や建物を購入して運用するのに対し、不動産ファンドは資金を集めた会社が主体となって不動産を運用します。投資家目線では、投資ファンドは不動産投資と比べると運用の手間やリスクが低いことが大きな違いです。 不動産ファンドとしても不動産投資と比べると、個々の投資家がより少ない資金で投資しやすくてハードルも低い傾向があるため、資金を調達しやすいというメリットがあります。  

不動産ファンドの主な種類

不動産ファンドの種類は「不動産特定共同事業」と「不動産投資信託(REIT)」に大別でき、さらに細かく分類されます。投資ファンドによって取り扱い領域や得意分野が異なるため、転職を検討する際は絶対に確認しておくべき項目の一つといえるでしょう。  

①不動産投資信託(REIT)

不動産投資信託(REIT)は、アメリカ発のお金を集めて不動産投資する仕組みです。そのため、日本における不動産投資信託は通称「J-REIT」と呼ばれています。後述する不動産特定共同事業との大きな違いは、出資者は不動産そのものではなく、不動産ファンドである不動産投資法人に対して投資するということです。そのため、J-REITに投資するには証券取引所を介して行う必要があります(公募REIT)。 一方、取引所に上場せずにオープンエンドで運用される「私募REIT」も存在します。  

②不動産特定共同事業

不動産特定共同事業とは、一口10万円、50万円、100万円といったように不動産を小口化・細分化して投資家に販売し、出資比率に応じて利益を分配する「共同運営事業」です。 一見、REITと似たような仕組みですが、不動産特定共同事業の投資先は不動産、J-REITは不動産投資法人という大きな違いがあります。また、相場変動や流動性、保有期間なども異なります。 以下の違いは実際に転職活動する際に明確にしておくことをおすすめします。

③不動産ファンドの主な仕事内容

不動産ファンドが担う主な仕事について紹介します。  
アクイジション(物件取得)
アクイジションは英語ではAcquisitionといい、「不動産物件の取得・仕入れ」を意味します。アクイジションによって収益物件を取得し、投資リターンの最大化を図るのは不動産ファンドにおける非常に重要な役割といえるでしょう。実際にアクイジションを行う際は、不動産投資戦略の立案や環境・収益性分析、さらに不動産の価値向上のためのバリューアップの必要性や有効な施策も取得段階で明確にする必要があります。  
アセットマネジメント
投資用物件の不動産形成から保全・運用業務の総称が「アセットマネジメント」です。業界ではAMと略すこともあり、特に不動産ファンドにおいては、出資者・投資家に変わって「アセットマネジメント=投資対象資産運用管理業務」を遂行し、不動産資産の総合的な価値向上を図ることが求められます。 アセットマネジメントを行う立場の人をアセットマネージャーといい、代表的な業務としては、アクイジションと同じ不動産投資戦略の策定のほか、取得後のパフォーマンス分析、運用、売却まで幅広く含まれます。  
デット調達
借入金や社債によって資金を調達する方法です。銀行や保険会社、証券会社から資金調達することが「デット調達」であり、物件を取得するために非常に効率のよい方法です。アセットマネージャーがデット調達を担うケースが一般的で、デット調達によって物件取得の柔軟性の向上やレバレッジ効果の向上による、エクイティ投資家への配分を高めることを目的としています。
IR・ファンドレイジング(エクイティ調達)
デット調達と並ぶ不動産ファンドにおける重要な資金調達方法が「エクイティ調達」です。 エクイティ調達の調達先は、私募ファンドであれば特定の株主、REITであれば不特定多数の株主になります。投資家から調達するためには、ファンドの魅力を伝えるプレゼンや資料が必要不可欠であり、重要な業務といえるでしょう。  
ミドルオフィス・バックオフィス
不動産投資ファンドの業務は、営業部門である「フロントオフィス」と事務仕事などを主とする「バックオフィス」、フロントオフィスとバックオフィスをつなぐ役割の「ミドルオフィス」に大きく分けられます。ミドルオフィスの仕事は各企業によって様々で、投資家・レンダー対応といった窓口業務から、クロージング関連業務やファンド事業計画のモニタリング、パフォーマンス管理といったマネジメント業務の一部、さらにファンド経理業務を担うこともあります。    

2.不動産ファンドの年収相場

不動産ファンドの年収相場は日系と外資系で傾向が異なります。それぞれを以下で確認してみましょう。  

日系不動産ファンドの年収相場

日系不動産ファンドの年収相場は運用担当者レベルでは600万円~1600万円程度。部長などの役職者であれば1200万円~1800万円とされており、役職の有無によって下限の相場が大きく上がる傾向があります。一方、職種による年収の違いは後述する外資系ほどは大きくなく、非運用系の管理職であっても1000万円~1500万円とされています。 また、メガバンクや財閥系企業の総合不動産デベロッパー、総合商社などが親会社となっている不動産ファンドの方が年収が高くなる傾向があります。反対に、大きな資本を持つ会社の後ろ盾が少ない「独立系」の不動産ファンドは、財閥系の不動産ファンドと比べると年収は低くなる傾向があります。さらにいずれの日系不動産ファンドであっても、外資系と比べると年収が少ないケースが多いです。 ただし、定年まで勤務しやすく安定性が高いほか、近年ではワークライフバランスの向上に積極的に取り組む企業もあるため、転職する際は労働環境なども含めた総合的に判断する必要があるでしょう。  

外資系不動産ファンドの年収相場

外資系不動産ファンドの年収相場は、担当者レベルで800万円~2000万円。部長級・マネジメント層になれば2500万円~4000万円です。 外資系不動産ファンドの方が日系不動産ファンドと比べると、年収相場は高めです。ただ、外資系不動産ファンドは成果主義が強く、マネジメントポジションになれば1億プレイヤーになるのも夢ではありません。 退職金や福利厚生の未整備、リストラされるリスクが日系企業よりも高い、成果に対するプレッシャーが大きいといった注意点はあるものの、本人の実力次第では年収を大きく伸ばせる可能性があるのが外資系不動産ファンドの魅力といえるでしょう。  

3.未経験者も不動産ファンドに転職できる?

不動産ファンドは金融、不動産に対する高度な知識と経験が求められるため、基本的には未経験、異業種からの転職の難易度は高いと言えるでしょう。また、多くの不動産ファンドではヘッドハンティングやエージェントによる求人が一般的であり、採用ページから直接申し込めるケースは多くはありません。そのため、不動産ファンドに転職するのであれば、基本的に転職エージェントの活用がおすすめです。 特に不動産ファンドへの転職支援経験が豊富なエージェントに相談することで、実績経験が豊富これまでのキャリアで身に着けたスキルや経験が、不動産ファンドでどう活かせるのか客観的に棚卸して親和性の高い業務も明確にしやすくなるでしょう。また、資料だけでは把握しにくい不動産ファンドの社風なども知ることも期待できます。  

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4.不動産ファンドへの転職に役立つスキルと資格

  不動産ファンドへの転職のほか、実務においても役立つスキルと資格を紹介します。自身のキャリアや希望する転職先の業務に適したものを取得・習得しましょう。  

①不動産ファンドへの転職に役立つ主なスキル

英語力

外資系不動産ファンドでは、日々のレポートティングや会社内でのコミュニケーションを英語で行うことは珍しくありません。そのため、転職するにはビジネスレベルの英語のスピーキング・リーディング・ライティング能力などが必須であるケースも十分に考えられます。 一方、日系不動産ファンドでは英語能力が求められない会社もあるうえ、部門によっても業務で必要な語学力は異なります。  

不動産や金融に関する知識・業務経験

不動産(物件)の売買経験や資金調達経験など、デベロッパー、銀行、証券会社で得られやすい知識や経験は、不動産ファンドでの業務に活かしやすいです。  

Excel(エクセル)の処理能力

不動産ファンドでは、不動産に関する膨大なデータをExcelを使って計算、管理していることもあります。賃料や運用に必要な各種費用、調達資金の計算モデルをExcelで適切に処理できれば、ミスを防ぎつつ効率的に業務を遂行できるでしょう。  

②不動産ファンドへの転職に役立つ主な資格

宅地建物取引士

不動産業界の資格のなかでも特に人気なのが、不動産取引において一定の専権業務が与えられる国家資格「宅地建物取引士」です。具体的な専権業務は以下の通りです。 ・不動産売買 ・賃貸の契約時における重要事項の説明 ・重要事項説明書面の記名 ・押印、賃貸借契約書の記名 宅地建物取引士は、不動産取引を行う会社の従業員5人に対して1人の割合で設置しなければなりません。これは不動産ファンドでも例外ではないため、宅地建物取引士の有資格者は無資格者と比べると有利であると考えられます。 また、宅地建物取引士の資格を取得することで一定レベルの知識があることも証明できるので、転職時にアピールしやすくなるのもメリットです。ただ、近年は宅地建物取引士の試験の難度が高まっているうえ、受験のチャンスは年1回です。不動産ファンドへの転職に活かすのであれば、在職中に計画的に取得を目指す必要があるでしょう。  

簿記2級

不動産ファンドの経理業務に携わりたい場合、経理の知識を証明する簿記2級(日商簿記検定2級)を取得することは有効だと考えられます。ただし、不動産ファンドの経理業務は一般企業の経理業務とは内容が異なる点があるので注意が必要です。 また、アセットマネジメントや資金調達などの経理以外の業務でも、社内外の関係者と円滑に連携するためには帳簿や企業経営の基本となる数値の理解、処理能力を高めておいて損はありません。  

不動産証券化協会認定マスター

不動産証券化の専門家としての知識・スキル習得を証明する数少ない資格が「不動産証券化協会認定マスター」です。社団法人不動産証券化協会が実施している民間資格で、Web講義の受講と試験、レポート提出などを経ることで、不動産・金融の専門知識の習得を社会的に証明できます。登録している不動産ファンドが多い「総合不動産投資顧問業者」の要件の一つに「不動産証券化協会認定マスターの取得」があるため、重要視されている資格と考えられます。  

一級建築士

建築物の設計および工事監理の業務を行うための最高位の資格が一級建築士です。一級建築士はどのような大規模な建築物も設計可能であることから、不動産ファンドにおいてもビルなどの大規模な改修、建て替えにおいてとても貴重な人材といえるでしょう。各プロジェクトの予算の策定、工事進捗管理から、近年、注力する不動産ファンドが多い「コンストラクションマネジメント」まで、一級建築士の知識と経験を活かした幅広い業務で活躍できます。 ただし、一級建築士になるためには、豊富な実務経験や非常に難度の高い試験に合格する必要があり、不動産ファンドに転職するためにゼロから取得するのは現実的ではありません。  

不動産鑑定士

土地や建物の適正価格・適正な価値の判定し、コンサルティングなどを行うための国家資格が不動産鑑定士です。実物不動産の取得や譲渡には、不動産鑑定士による鑑定評価が義務付けられているほか、不動産を証券化する際にはその収益性の検証や金融機関からのノンリコースローンに係る担保評価なども行うため、不動産ファンドにとっては非常に価値がある資格や人材といえるでしょう。  

ファイナンシャル・プランニング技能士

ファイナンシャル・プランニング技能士は、資産設計提案業務などの実務における知識の活用能力を証明するための国家資格および資格取得者のことです。ファイナンシャル・プランニング技能士は1級~3級まであり、上位の資格ほどより高度で専門的な金融や投資の知識を取得しているとアピールできるでしょう。  

5.不動産ファンドへの転職は準備が大切

不動産ファンドの転職を成功させるための基本的な情報について解説しました。不動産ファンドは年収面などで大きな魅力がある一方、転職や実務では高度なスキルや経験が求められます。 異業種からの転職も簡単ではないため、業界研究や企業のリサーチはもちろん転職エージェントを活用して、自身のキャリアを棚卸したうえで計画的に転職活動する必要があるでしょう。  

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この記事の監修

信藤 啓吾

Shindo Keigo


【担当職域】 ・投資銀行 ・PEファンド ・不動産 ・VC ・事業会社 【経歴】 タイグロン パートナーズの前身となるアカマイフィナンシャルマーケッツジャパンの日本支社へ入社前は、約5年間にわたり、ロバート・ウォルターズにて金融マーケット(投資銀行、不動産、PEファンド)を専門としたリクルーティングに従事。産業カウンセラー。英語堪能。 【自己紹介】 投資銀行、不動産ファンド、PEファンドの3つを主な専門領域としています。また、これら3つから派生した、一般事業会社のM&A担当部門や戦略企画、ファンド投資先企業のCFOポジションへの転職もサポートしております。 私の一番の強みは、私が転職支援を行った候補者のほとんどの方が現在も在籍しており継続的に情報交換をしていることです。それによりアップデイトされた企業内部の情報をもっております。また、私の紹介で入社した方が、採用窓口担当者、責任者の場合もございます。加えて、クライアント企業の採用動向や採用目線、面接内容を詳しく把握しているため、面接対策の準備を具体的に手伝える点も強みといえます。 日頃から、個々のニーズに合わせたオーダーメードコンサルティングを心掛けています。今すぐ転職したい方はもちろんのこと、中長期的に情報収集したい方や、「すぐの転職は考えていないけれど一度相談したい」という方も大歓迎です。皆様からのお問い合わせ、心よりお待ちしております。
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