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フェムテックとは?概要と市場の状況、業界への転職のポイントを解説

フェムテックとは、女性に特有の悩みや問題をテクノロジーで解決するという概念です。フェムテックの概要や市場の状況、業界への転職のポイントについて解説します。

フェムテックとは?概要と市場の状況、業界への転職のポイントを解説

女性特有の悩みや問題を、テクノロジーで解決する「フェムテック」。この概念にもとづいて、近年では世界各国で多くの製品やサービスが開発され、市場に提供されています。 ここでは、フェムテックの概要や市場の状況のほか、フェムテック業界で求められる人材像などについて解説していきます。  

女性特有の悩みや問題をテクノロジーの力を使って解決するフェムテック

フェムテックとは、女性(Female)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。具体的には、女性特有の悩みや問題をテクノロジーの力を使って解決する製品やサービスのことを指す言葉です。   フェムテックで提供される製品やサービスは、多岐にわたります。生理周期や排卵日などを予測するアプリはすでに広く使われていますし、フェムテックをうたったサプリやコスメ、衛生用品メーカーとのコラボ商品なども、市場に多く登場しています。 フェムテックはすでに確立された市場として認識されており、大手メーカーからスタートアップまで多くの企業が参入し、女性たちのニーズを満たすために成長を続けているのです。  

フェムテック市場拡大の背景

前述のとおり、すでにフェムテックは一定の市場を確立しています。そして近年は、海外において急速な拡大を見せています。人類の約半数は女性であるため、その女性たちに向けたプロダクトやサービスであれば、一定の市場が形成されるのは当然のことともいえるでしょう。 フェムテック市場は、今後さらなる拡大が見込まれていますが、その背景にはいったいどのような要因があるのでしょうか。ここでは、代表的な4つの要因について説明します。

テクノロジーの進化

テクノロジーの進化は、フェムテック市場拡大をもたらした大きな要因のひとつです。生理日や排卵日を教えてくれるアプリを例に考えてみると、このアプリには膨大なデータだけでなく、ユーザー自身の体のサイクルを正確に予測するための、高精度のアルゴリズムが使われています。 また、各種センサーや検査技術の開発による新たなフェムテック関連製品の登場も見逃せません。検査時の被曝や痛みの心配がなく高精度で腫瘍の判別ができる乳房用画像診断装置や、唾液や尿を使ってホルモンバランスをモニターできるデバイスなども注目を集めています。 さらに、サービスの分野では、婦人科に特化したオンライン診療プラットフォームが挙げられます。このプラットフォーム内では、医療機関とユーザーをアプリでつなぐことで医師の診察や専門家への相談ができ、ピルの処方も受けることが可能です。 このように、各方面での技術の進化によって、近年ではさまざまな製品やサービスが生み出されています。  

女性の社会進出が加速している

世界的に見ると、女性の社会進出はますます加速しています。単に「社会で働く」というだけでなく、責任あるポジションに就いたり、みずから起業して多忙な毎日を過ごしたりする女性も増えてきました。こうなると、自分自身の心身の管理はますます重要になります。   また、社会で活躍する女性が増えれば声を上げる女性が増え、それが世の中に反映されやすくなります。すると、それまではなかなかオープンにできなかった悩みや問題を、積極的に世に問う動きも出てきます。SNSの普及と浸透も、大きく作用しました。その結果として起こった「#MeToo」運動は、まさに象徴的な出来事といえます。 女性たちが社会の中で活躍し、自分たちの意見や悩みを訴えていく。こうした動きに応えるべくフェムテックが登場し、拡大しているといえます。  

女性による企画、ベンチャーキャピタルの増加

フェムテックがビジネスの一分野として成立し一定規模の市場が作られると、そこに参入しようという企業が増え、同時にベンチャーキャピタルなどの投資も増加します。それらの企業には、当然ながら女性経営者や女性役員、企画担当者がおり、女性視点で製品やサービスが生み出され、投資が行われます。 この流れがニーズにフィットした製品やサービスにつながり、将来性の高いフェムテック企業に資金が集まるという好循環を生むことで、フェムテックの市場が拡大していくのです。  

世界的なジェンダーレス社会の流れ

近年は、世界全体が「ジェンダーレス社会」になりつつあります。その進み具合は、国と地域によって大きく異なります。長い歴史によって培われた文化や習慣、社会構造は国ごとに違うため、進み具合が異なることは仕方ありません。しかし、「男性だから」「女性だから」という性差によって、いわれなき偏見や差別を受けないジェンダーレス社会実現への流れは、今後とどまることはないでしょう。   そして、社会が変われば、人の意識も変化します。その結果、多くの女性たちが声を上げ、悩みや問題を我慢せず、その声に社会が応える形でフェムテックという領域が形成されてきました。 今後、ジェンダーレスの意識が人々のあいだでさらに浸透すれば、それだけフェムテック市場も拡大していくことになります。  

フェムテックが解決しうる課題

フェムテックの分野では、すでに多くの製品やサービスが登場し、女性たちに利用されています。それらを大きく分類すると、1つはスマートフォンアプリを中心としたデジタルサービス、もう1つは生理用品や検査キットなどの非デジタルのプロダクトです。日本では、後者の非デジタル領域のプロダクトが多いのですが、いずれも製品やサービスとして提供するには、医療分野の確固としたバックボーンが必要です。 これらの製品やサービスによってどのような課題が解決されるのか、解説していきましょう。  

生理によって起こる不調

月経周期を正確に予測するアプリのほか、肌触りや快適さを追求した生理用品が登場しています。生理用品については、大手メーカーが絶え間なく研究開発を行っていますが、よりパーソナルなものとして、ユーザー自身の月経周期や月経量に合わせた最適なアイテムを届けてくれるサービスもあります。  

妊娠・出産・育児などに関する悩み

近年では、基礎体温を管理・記録し、排卵日を予測するアプリなども出てきています。ほかにも、妊娠期間中のトラブルや体調管理ができるアプリなど、妊活中から出産後まで女性をサポートしてくれるものもあります。 また、妊娠・出産に関する情報収集や不安の解消のために利用されているツールとして挙げられるのは、SNSや医療機関、専門家とユーザーをつなぐオンライン診療、相談掲示板などです。これらのオンライン上のツールを活用することで、さまざまな悩みを抱える女性たちは情報共有をし、互いに支え合っているのです。  

更年期や閉経後の悩み

女性に起こる体の不調は、若い頃だけではありません。更年期から閉経後にかけても、特有の悩みや問題が起こります。その代表的なものが、GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)です。 この疾患は、過去には老人性膣炎と呼ばれ、「老化によるものだからあきらめるしかない」とされていました。しかし現在では、GSMへの効果的なケアを可能にするサプリや洗浄剤、尿漏れパッド、ショーツといった製品のほか、筋力を高めて尿漏れを防ぐためのトレーニングアイテムなども登場しています。 さらに、レーザーや超音波を活用した治療機器も開発されており、更年期以降のフェムテックとして注目を集めています。  

セクシャルウェルネスに関する悩み

セクシャルウェルネスとは、世界保健機関(WHO)が定義した「性に対して身体的、感情的、精神的、社会的に健康であること」という概念です。つまり、心身ともに、健全に性を楽しむことを指します。この分野でのフェムテック関連商品としては、セックストイが代表的でしょう。 セックストイの分野は、日本では男性向けの物がほとんどですが、欧米では男女それぞれにフィットする多種多様な製品が登場しています。  

フェムテック市場の今後の動向

早くからフェムテック市場が形成されてきたアメリカでは、すでに多くの製品やサービスが提供され、市場が急速に拡大しています。多くのベンチャーキャピタルやスタートアップが参入し、フェムテックに特化した投資会社も続々と登場しているのです。 女性の健康とウェルネスに特化したベンチャーキャピタルであるCoyote Venturesと、フェムテック分野の情報発信や起業支援を手掛けるNPO法人のFemTech Focusによると、世界のフェムテック市場は2027年までに1兆1,860ドルの規模にまで成長すると予測されています。   日本では、フェムテックに対する人々の認識が、まだ十分とはいえません。それだけに、アメリカと比較すると市場規模も小さなものです。しかし、反対の見方をすれば、今後の伸びしろが残されている分野であるともいえます。 ここでは、世界的な動向を踏まえながら、日本における今後のフェムテック市場を考えてみましょう。  

女性の社会進出の拡大とともに、市場も成長する

これまでご紹介したように、フェムテックの市場規模は、女性の声の高まりに応じて成長してきました。女性の社会進出という点では、日本は世界と比較してまだまだ遅れていますが、それだけに「成長途上にある」という見方もできます。政府は法律を整備し、政策として男女共同参画社会を推進していますし、公務員の女性参画拡大、女性閣僚の登用などにも積極的です。 こうした流れが今後も強まっていけば、これまでかき消されてきた女性たちの声が社会や企業に届き、それに応えるさまざまなサービスが生まれ、市場の成長が期待できるでしょう。  

医療・健康分野での技術開発がさらに進む

フェムテックは、医療・健康分野での技術開発によって、大きな発展が予測されます。これまでも、使用感の良い生理用品や痛みの少ない画像検査機器など、日進月歩の技術によって、新たな製品やサービスが生まれてきました。   医療・健康分野は人の生命に直結する領域だけに、製品やサービスには安全性と確実性が欠かせません。競争が激しく、精度が求められるため開発には大きなコストがかかりますが、優秀な製品を生み出すことができれば、大きなニーズをつかむことができます。そのため昨今では、大手メーカーや産学連携のベンチャーキャピタルなどがさまざまな製品やサービスを開発・提供しています。 技術の進歩とそれを反映した製品・サービスの開発がうまく回れば、フェムテック市場はさらに拡大するはずです。  

スタートアップでも参入しやすい

医療・健康分野の研究開発には大きなコストがかかりますが、デジタル領域、それもアプリ開発となれば、事情は変わります。ニーズを的確につかんで応えることができれば、少ない資金で多くの支持を得ることも可能です。 こうした事情もあり、日本でも2019年頃から、大手だけではなく多くのスタートアップがこの分野に参入してきました。   ただし、参入企業が増えれば競争も激化し、企業間の淘汰が始まります。すでに主だったフェムテックプロダクトは出揃っており、これからは製品やサービスの淘汰が始まるという見方も存在します。単に、「女性特有の問題の解決を図る」というだけでなく、上質さや心地良さ、細やかさなどの点でいかにユーザーの期待に応えていくかが、フェムテック企業の今後の課題となるでしょう。  

時代が変わっても、ニーズはなくならない

フェムテックが扱うテーマは、女性特有の悩みや問題です。つまり、女性がこの世の中に存在する限り、そのニーズがなくなることはありません。 一方で、一時的に大きな市場を形成しながらも、ほかの手段で代替されたりニーズそのものが減少したりしたために市場が縮小、さらには消滅してしまうということが、世の中ではしばしば起こります。   典型的な例が、郵便事業です。日本全国どこへでも数十円の送料で手紙が届く郵便事業は、人々の交流を支える貴重なツールとして1940年代から着実に件数を伸ばしてきました。しかし、インターネットとPCが家庭にも普及し始めた2000年、扱い件数は268.6億件をピークに減少に転じ、2020年には196.0億件にまで数を減らしています。 このように、当然のように存在した市場が、技術や生活スタイルの変化で縮小、さらには消滅してしまう可能性が現実にあるのです。ですが、人類のほぼ半分が女性である限り、フェムテックのニーズがなくなることはありません。  

フェムテック業界に求められる人材とは?

まだまだ発展が見込めるフェムテック業界に、転職を考えている人も多いのではないでしょうか。この業界では、どのような人材が求められているのでしょうか、詳しく見ていきましょう。  

幅広い領域のスキルを持っている

フェムテックは日本ではまだ新しい分野であるため、提供されているサービスもそこまで多くありません。ですから、市場の状況を正確に分析してユーザーニーズに正確に応え、評価を得ることが求められます。 そのため、これからのフェムテック業界では、マーケティングスキルやマネタイズスキル、カスタマーサクセス、セールスなど、幅広い領域のスキルが求められるでしょう。例えばSaaSのローンチを手掛けた経験など新規事業を立ち上げた経験などがあれば、フェムテック業界でも大いに役立つと思われます。  

事業に対する熱意を持っている

日本人は国民性として、性的な事柄を隠したがる傾向があります。悩みや問題があってもそれをオープンにしたり、周りに相談したりせず、自分一人で解決しようとする感覚が根強いのです。欧米諸国と比較してフェムテックの普及が進んでいないのは、そうした日本人の感性も大きく作用しているでしょう。それは、日本でフェムテックを推進する上での障害ともいえます。   そうしたハードルを乗り越えるために現在のフェムテック業界が求めているのは、事業に対する強い熱意を持った人材です。そういった人材がいることで、競合企業に打ち勝ち、ユーザーに受け入れられる製品やサービスを生み出すことができるのです。  

フェムテック業界への転職は、タイグロンパートナーズへ

フェムテック業界は、拡大成長の期待感の大きい分野である一方、他者との競争に打ち勝つために求められる要素も多くあります。何より、日本ではまだ十分に確立されていない領域であり、製品やサービスを受け入れるユーザー側にもハードルは存在します。 自分自身の生理周期をクラウドサービスに通知するといった行為には、程度の差こそあれ、抵抗感を抱く女性は多いでしょう。だからこそ、医療・健康の分野での知見や新規事業の立ち上げなどの経験に加え、「このサービスを社会に普及させるのだ」という、強力な熱意が必要なのです。   タイグロンパートナーズは、プロフェッショナル人材に特化したトップレベルの人材紹介サービスを行っています。医療・健康分野での実績も豊富であるため、転職先企業の実状を踏まえたご提案も可能です。 フェムテック業界への転職を検討している方や、優秀な人材を採用したい企業担当者の方は、ぜひタイグロンパートナーズへお問い合わせください。  

この記事の監修

野尻 剛二郎

Nojiri Kojiro


【担当職域】 ・アセットマネジメント ・グローバルマーケッツ ・法務コンプライアンス 【経歴】 タイグロン パートナーズの前身であるアカマイフィナンシャルマーケッツジャパンの代表として入社以前は、日興証券ロンドン支店、リーマン・ブラザーズ証券、モルガン・スタンレー証券にて内外の機関投資家向け日本株式営業および営業のヘッドポジションを担当。その後、外資系大手サーチファームであるラッセル・レイノルズ・アソシエイツの金融担当のシニアコンサルタントとしてエグゼクティブサーチのキャリアをスタートさせる。英語堪能。南カリフォルニア大学にてMBA取得。 【自己紹介】 証券や資産運用会社のサーチを得意としています。自分自身が20代から30代のあいだに、日系・外資系証券会社においてビジネスの最前線にいた経験から、顧客や候補者と同じ目線での採用や転職のアドバイスができることが私の強みです。 弊社の特徴のひとつに、業界や採用企業の内部に精通し、ポジションを深く理解している点があります。転職をお考えの方、優秀な人材を募集している企業担当者の方は、ぜひ一度弊社までお問い合わせください。    
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