近年、多くの企業で求められているのがDX(Digital Transformation)推進です。DXでは、デジタル化やツールの導入などにより業務効率化や競争力の向上を目指します。
DX推進が注目されたきっかけの1つが、2018年に経済産業省によって発表された「DXレポート」です。レポート内では、企業の成長のためにはDX推進が必須であると示されています。仮にDX推進が実現できず、競争力が低下した場合は、2025年から大きな経済損失が生じる「2025年の崖」問題が起こると指摘されています。
企業が組織変革を成功させて成長を続けるためには、DX人材の育成・確保が欠かせません。そのため、専門的な技能を持つDX人材のニーズは高まっているといえます。この記事では、DX人材を目指す方におすすめの資格や取得メリット・注意点、転職のポイントなどを解説します。
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1.DX人材におすすめの資格12選
DX人材とは、デジタルテクノロジーに関するスキル・知識・業務経験を有するとともに、経営戦略・業務改善にも造詣の深い人材のことです。リーダーシップを持ち、周りを巻き込みながらDX推進戦略を実行していくことが求められます。
ここでは、DX人材を目指す方にお勧めの資格をピックアップしてご紹介します。試験概要や受験資格、受験費用などの詳細は各公式サイトよりご確認ください。
■経済産業省推奨資格
・ITコーディネータ試験
経済産業省の推進する資格です。経営的視点を持ってIT活用をするためのスキルが学べます。戦略的なDX推進・IT活用には欠かせない知識が身につくでしょう。ITコーディネータの資格を取得するためには試験合格に加えて「ケース研修」を修了し、資格認定申請を行う必要があります。また、毎年の資格更新や、3年度ごとのフォローアップ研修受講も求められます。
【ITコーディネータ試験】特定非営利活動法人 ITコーディネータ協会
■IPA(独立行政法人情報処理推進機構)資格
●ITストラテジスト試験
「情報処理技術者試験」の高度区分試験の一つです。スキルレベルは最高のレベル4に設定されています。ITストラテジストとは高度な知識を備えたIT専門職のことで、プロジェクトの中でも上流のIT戦略策定に関わります。企業の経営戦略や事業戦略に基づき、ITを活用した戦略を立て、実行に移すための知識を習得できるでしょう。
【ITストラテジスト試験】IPA独立行政法人情報処理推進機構
●プロジェクトマネージャ試験
国家試験である情報処理技術者試験の高度区分試験の一つです。もっとも高難度であるレベル4に分類されています。システム開発のプロジェクト管理についての資格であり、学ぶ範囲は多岐にわたります。プロジェクト進行中に起こる課題に対処し、顧客からの要望にも応えながら、マネジメントを成功させるスキルを身につけたい方におすすめの資格です。
【プロダクトマネージャ試験】IPA独立行政法人情報処理推進機構
●データベーススペシャリスト試験
国家資格である情報処理技術者試験の一つです。スキルレベル4の高度試験に該当します。データベースに関する専門知識を体系的に習得できるのが特徴であり、データベース管理者などを目指す際に適した資格です。多肢選択式(四肢択一)と記述式の問題が午前・午後に分けて出題されます。
【データベーススペシャリスト試験】IPA独立行政法人情報処理推進機構
■クラウド関連資格
●AWS認定各種
AWS(Amazon Web Service)を適切に運用・構築するための知識やスキルを認定する資格です。Amazonが作成・管理しています。クラウドサービスの専門知識を深めたいときにおすすめです。基礎知識レベルから専門知識レベルまで、全12種類の認定試験があります。試験勉強を通して、実務レベルの知識を理解できるようになるでしょう。
【AWS認定】Amazon
●Google Cloud認定資格
Googleが提供するクラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」の活用スキルを認定する資格です。クラウド環境でのインフラ構築や運用、データ分析、機械学習など、多岐にわたる技術分野の専門知識を習得できます。DX推進において、Googleのテクノロジーを利用した高度なソリューション提供を目指す方におすすめです。
【Google Cloud認定資格】Google
●Microsoft Azure認定資格
Microsoftのクラウドプラットフォームである「Azure」に関するスキルを認定する資格です。Azureを用いたインフラ構築、データソリューションの設計・実装、アプリケーション開発など幅広い分野のスキルを証明できます。企業のDX推進にAzureを活用したクラウドソリューションを提供したい方に最適な資格です。
【Microsoft Azure認定資格】Microsoft
■AI/データ関連資格
●Python3エンジニア認定試験
プログラミング言語の「Python」についての基本的な知識を身につけられる資格です。初心者向きの試験であり、出題範囲は公式の教材でチェックすることができます。1年中、全国のどこの試験会場でも受験可能なため、忙しい中でも日程を調整しやすいメリットがあります。ディープラーニングや機械学習など、AI開発やデータ分析といった分野で役立つ知識を身につけられるでしょう。
【Python3エンジニア認定試験】一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会
●AI実装検定
AI技術者に必要な知識を身につけられる民間資格です。認定レベルはB級・A級・S級の3種類に分かれており、後述の「G検定」や「E資格」と併せて段階的に挑戦していくことも可能です。ディープラーニングの実装知識を獲得できるのが特徴で、出題形式は選択問題(四肢択一)のCBT(Computer Based Testing)形式が採用されています。
【AI実装検定】AI実装検定実行委員会(AIEO)
●G検定
AIやディープラーニングを活用するために必要な知識を体系的に学べる検定です。AIでできること・できないことの判断や、AI活用のために求められることなどを身につけることができます。DX推進のためにリテラシー向上を狙いたい方におすすめです。合格後はAI人材コミュニティである「CDLE」への参加が可能になります。
【G検定】一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)
●E資格
上記のG検定と同じ一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施している資格試験です。E資格のほうがより専門性を問われる試験内容となっており、AIエンジニアや研究者などが対象の資格といえます。G検定とE資格ともに出題数が多く、試験時間内に素早く回答できるスピード感が求められます。
【E資格】一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)
■サービス系資格
●SAP認定資格
SAP社が提供するERPシステムやビジネスアプリケーションの導入・運用に関するスキルを証明する資格です。業務効率化やデータ活用、経営管理の分野での専門知識が習得でき、企業のDX推進を支える基幹システムの専門家として活躍したい方におすすめです。
【SAP認定資格】SAP
●Salesforce認定資格
世界的に広く利用されているCRMプラットフォーム「Salesforce」の導入、運用、カスタマイズに関するスキルを認定する資格です。顧客管理や営業支援、マーケティング自動化など多様な領域で専門的な知識を深められ、企業の顧客体験の向上や業務プロセス改革を推進したい方に最適な資格です。
【Salesforce認定資格】Salesforce
2.DX関連資格を取得するメリット
ご紹介したようなDX関連の資格を保有していなくても、DXの推進は可能です。しかし、資格を持っておくことは自分がDX人材として専門的な知識・スキルを備えていることの証明となります。以下では、DX関連の資格を取得する具体的なメリットを解説します。
①専門知識の証明になる
資格を取得することにより、自分の持つスキルを客観的にアピールできます。DX関連の実務経験が少ない場合も、資格を得ていることが高い評価につながる可能性があります。
②必要な知識やスキルがわかる
資格取得のために学習計画を立てることで、合格に必要な知識・スキルを明確化できます。効果的に学習できるのはもちろん、自分に不足している知識や、今後のキャリアにおいて必要性のあるスキルなども見えてくるでしょう。DXに関する事業へのモチベーション向上も期待できます。
③キャリアアップにつながる
DX関連の人材不足は課題となっており、多くの企業でニーズがあります。資格を取得できれば、専門性の高いポジションへの異動や、大きな成長機会のある企業への転職の可能性を高められるでしょう。これまでの経験や希望するキャリアパスなどによっては、企業のDX化を支援するコンサルタントとしての道も選択肢に入るようになります。
3.DX関連の資格を取得する際の留意点
DX関連の資格は、闇雲に取得を目指すのではなく、明確な目的やビジョンを描いた上で挑戦することが大切です。以下では、資格取得に際して気をつけておきたい点をご紹介します。
【資格取得の目的を明確にする】
DX推進にどのような形で関わりたいのかによって、取得しておきたいDX資格は変わってきます。自社内でのキャリアアップやスキルアップを目指すのか、特定の企業への転職を目指すのかなど、今後のビジョンを明確に定めておきましょう。希望する道で求められるスキルや資格を把握し、取得に向けて動くことがポイントです。
【取得後のキャリアプランを考える】
資格取得は最終目標ではなく、今後のキャリア形成に向けての新たなスタート地点となります。取得後にスキルを活かし、どのようにキャリアアップしていきたいか、具体的な計画を立てましょう。
4.DX転職を成功させるには?
DX人材として転職するには、どのような準備・対策を行えば良いのでしょうか。以下では、転職成功のために知っておきたいポイントをご紹介します。
<必要なスキルや知識を身につける>
DX転職では、プログラミングやデータ分析といった技術的な知識に加え、問題解決能力やコミュニケーション能力などの、人間関係を円滑に進めるためのビジネススキルも必要です。こういった知識・スキルを身につけておくと、転職時のアピールポイントになるでしょう。自分に不足している部分があると感じたら、個人的にセミナーや講座などを受けることもおすすめです。
<DX人材の主要職種と役割について調べる>
DX人材の職種には、ビジネスデザイナー・アーキテクト・データサイエンティスト・エンジニアなど、さまざまな種類があります。転職活動を始める前に、職種や仕事内容を調査しておきましょう。志望する職種を絞ることで、転職先の候補を決めやすくなります。
<実践経験を積む>
プロジェクトの参加経験があると、DX転職で有利に働く場合があります。未経験者の場合は、インターンシップに応募する方法や、スキルを活かして社会貢献する「プロボノ活動」に参加する方法などで経験を積むと良いでしょう。自分でプロジェクトを立ち上げ、運営する選択肢もあります。実際にプロジェクトに携わることで、知識・技術を応用する方法や、プロジェクトマネジメントのコツなどを実践的に学べるのがメリットです。
5.DX転職を成功させるために資格取得も検討しましょう
DX人材におすすめの資格や、資格取得のメリット、留意点などをお伝えしました。DX人材向けの資格には多数の種類があり、初心者向けのものから合格率の低い高度な試験まで、難易度もさまざまです。ご紹介した情報も参考にしながら、自分の成長につながる資格を探し、スキルアップに取り組みましょう。
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