
株式市場の変動性が高まり、世界的に金利環境も多様化する中、従来の投資手法だけでは安定的なリターン確保が難しくなっています。こうした状況下で、伝統的な株式や債券とは異なる資産に投資する「オルタナティブ投資」への関心が高まっています。
本記事では、オルタナティブ投資の中でも代表的な存在である「プライベートエクイティ(PE)ファンド」に焦点を当て、その基本的な仕組みから投資プロセスなどを網羅的に解説します。
プライベートエクイティ(Private Equity)とは?
プライベートエクイティファンドについて解説する前に、プライベートエクイティ(Private Equity)(以下、PE)とは何かについてご説明します。 PEは、非上場企業の市場に公開されていない非公開株を指す言葉です。株式会社は株式を発行し、それを市場に上場して売り出すことで、資金を調達します。企業の業績が上がれば自社株の市場価値は高まり、株価が上がるとともに自社のバリューも向上します。
一方、株主は株主総会での議決権を持ち、それは保有株式の数量に応じて高くなるものです。そのため、特定の株主が多くの株式を保有すると発言権が強まり、企業側からすると経営の自由度が下がってしまいます。そうした事態を避けるため、可能ではあるけれどもあえて上場しない、あるいは上場を廃止するという手法をとる企業も存在します。こうした企業の株式こそが、PEというわけです。
投資家から集めた資金で非公開株への投資を行うPEファンド
PEファンドとは、機関投資家や個人投資家から資金を集めることでPE投資を行う投資ファンドのことです。PEが非上場企業の非公開株を指すなら、PE投資は「非上場企業の非公開株への投資」ということになります。 企業が株式を非公開とする理由は様々です。
先述したように、株主による経営への関与を避けるためにあえて上場しないということもあれば、上場を目指しつつもまだそのレベルに至っていないというケースもあります。または、経営破綻や株価の下落によって、上場廃止となる場合もあるでしょう。 理由が何であれ、将来的に成長や回復が見込める企業であれば、安価なうちに株式を購入しておき、成長して株価が上昇したところで売却すれば、大きな利益を得ることができます。もちろん、株主は投資先企業が成長していくことに対して、ただ指をくわえて見ているわけではありません。
専門的なノウハウや経験、人脈を持った経営者や役員を送り込むなどして、企業価値の向上を助けます。 これが、PE投資の基本的な考え方です。
PEファンドの種類
PEは未公開株式のため、当然ながら市場で購入することはできません。そのため、投資ファンドを組んで機関投資家や個人投資家から資金を調達し、市場の外で売買することになります。PEファンドは投資期間や投資先企業の状態などによって、4種類に分類されます。ここでは、それぞれのファンドの特徴について解説していきます。
企業の将来性に投資する「ベンチャーキャピタル(VC)」
ベンチャーキャピタル(以下、VC)とは、設立して間もないスタートアップや、成長が見込めるベンチャーに投資し、大きく育ったところでIPO(新規株式公開)やM&A(合併・買収)で株式を売却し、キャピタルゲインを得るファンドのことです。
一般的な傾向として、スタートアップやベンチャーは独自の技術やユニークなアイディアを持ち、魅力的な製品や新たなサービスで事業を推進していきます。その反面、実績に乏しいため、銀行など金融機関からの融資を受けにくく、事業拡大のための資金が不足しがちです。
また、若い経営者やエンジニアが主導する企業の場合、経営のノウハウや各業界とのパイプが十分ではなく、人材の確保もしにくいということも少なくありません。 このとき、サポートを行うのがVCです。資金に加えてマネジメントにも関わり、数年かけて企業の成長を助けます。企業側にとっては貴重な存在ですが、投資する側から見るとハイリスク・ハイリターンな投資といえます。
安定した企業を投資対象とする「バイアウト投資」
バイアウト投資は、発行株式の過半数を買い取ることで経営に参画し、様々な手法を用いて企業価値を向上させる方法です。最終的には株式を売却して利益を得ますが、VCと異なるのは、すでにある程度の成長を果たした企業を投資対象とする点です。
ある程度の規模まで事業を拡大しながら、なかなかそれ以上の成長を果たせないという企業は少なくありません。こうした企業は程度の差はあれ、成長を阻む何らかの要因を抱えています。例えば、成長戦略の不備、非効率な業務プロセス、多すぎる余剰人員などです。
バイアウト投資では、こうした弱点に大胆にメスを入れ、企業価値の向上を図ります。 すでに成長している企業が対象であるため、回収までの期間は短めですが、目に見える成果を出すのが難しいという側面もあります。
危険水域にある企業を再生する「企業再生投資」
企業再生投資とは、経営危機、あるいは経営破綻の状態にある企業に投資して業績を回復させ、資産を売却することで利益を得る方法のことです。
バイアウト投資の場合は安定した企業への投資ですが、企業再生投資は危機的状況にある企業への投資です。そのため、大鉈を振るうような改革・改善を断行することになりますが、もしも再生が失敗すれば、損失を被ることになります。それだけに、投資先の選定は慎重に行うことが必須ですし、企業再生に関する豊富なノウハウがないと手を出しにくい投資です。
瀕死の企業を食い物にするという意味合いで「ハゲタカファンド」などと呼ばれることがありますが、成功すれば危機的状況にある企業を救済できます。また、株価が下落した状態で投資を始めるため、うまくいけば大きな利益を得ることができます。
財政的危機をチャンスに変える「ディストレス投資」
ディストレス投資とは、財政的に破綻の危機にある企業に投資する方法のことです。企業再生投資よりも、さらに危険な状態にある企業が投資対象となります。 財政危機にある企業の株は、本来の価値よりも大きく下落しているため、安価で購入することができます。その上で、ある程度のレベルまで業績が回復したところで売却することで、膨大な利益を得ることができます。
ただし、投資対象となる企業の価値を正確に見極め、業績回復の可能性を探ることは、決して簡単ではありません。そのため、一般の投資家向きとはいえず、多くはディストレス投資専門のヘッジファンドによって行われています。
PEファンドの投資・運用・回収プロセス
ここまでPEファンドの概要についてご紹介しました。では実際に、どのような仕組みで投資から利益分配まで進められるのか、PEファンドの運用プロセスを5つのステップで解説します。
- 投資家からの資金調達(ファンドレイズ)
- 買収案件の発掘・選定(ソーシング)
- 投資の実施(エグゼキューション)
- 価値向上支援・運用(バリューアップ)
- 投資資金の回収(イグジット)
それぞれ詳しくみていきましょう。
投資家からの資金調達(ファンドレイズ)
PEファンドが投資活動を行うためには資金調達が必要です。PEファンド業界において「ファンドレイズ」とも呼ばれ、PEファンドによる投資家からの資金調達の事を指します。
具体的には、ファンドの運営者であるゼネラル・パートナーが、投資家からファンドへの出資を募るプロセスは下記の3つのステップで行われます。
- 投資方針の決定
- 投資候補への打診
- 投資家からの出資
それぞれ詳しく見ていきましょう。
投資方針の決定
PEファンドは、投資家に対し「どのような案件に投資するのか」、「どのようなリターンがあるのか」を示す必要があります。
そのため、まずは投資方針を決定させ、投資家に説明する必要があります。
投資方針では、主に以下の内容をもとに決定します。
- 投資対象:非上場企業の業種や地域
- ファンドサイズ:募集総額
- 目標とするリターン水準:一般的に10〜20%程度
- リスク:元割れなどのリスク
- 投資期間:PEファンドの存続期間(ファンド期間)は一般的に約10年程度
投資家候補への打診
投資方針が決定したら、投資家候補へアプローチし、投資の打診が次のステップとなります。投資家候補は機関投資家や年金基金、富裕層など、ターゲットとなる投資家層を特定し決定されます。
投資家に対するアプローチは、決定した投資方針(投資額やリターンなど)についての説明や、条件交渉を行う必要があります。そのため、ゼネラル・パートナーは投資家向けの説明会や個別面談などを行い、投資家との関係性を構築することも大切です。
投資家からの出資
投資家からの出資額が、投資方針で決めた目標額に達した時点で、PEファンドが組成されますが、投資額が未達の場合は組成されません。
出資モデルが確立したら、PEファンドへの投資が決まっている投資家は出資を行います。その際、投資の全額を搬出するわけではありません。PEファンドが必要なタイミングで、必要な額を投資家に要請し、搬出を行います。
このように、必要な分だけ投資家に資金搬出の要請を行うことを「キャピタルコール」といいます。
買収案件の発掘・選定(ソーシング)
資金調達が完了したら、ソーシングを行います。ソーシングとは、投資先を発掘する業務のことです。
主に以下のような方法があります。
ソーシング方法 |
主な例 |
個人株主への提案 |
後継者がいないなどで悩むオーナー社長に対し、事業承継や株式対策としてPEファンドの活用を提案する。 |
M&A仲介会社からの案件紹介 |
M&A仲介会社から案件の紹介を受け、紹介の中からファンドの投資方針に合致する案件を選別し、検討する。 |
事業会社宛の提案 |
事業会社の経営戦略や事業戦略の一つとして、PEファンドが有する様々な知識やノウハウを事業会社に提供する。 |
金融機関からの紹介 |
金融機関から案件紹介を受け、個別に検討し、投資可否を判断する。 |
ソーシング業務は、どれだけ成長ポテンシャルのある企業を見つけることができ、いかに安く買収できるかが最終的なリターンにつながります。
そのため、PEファンドは案件情報を得るためのルートを開拓することも必要です。また案件が見つかったら、成長性や収益性、競争優位性など、投資の判断材料を集め、慎重に検討を行います。さらに財務や法務、税務など多岐にわたるデューデリジェンスを行い、企業の価値やリスクなどを調査します。
投資の実施(エグゼキューション)
エグゼギーションとは、投資を対象とする企業への投資の実行プロセスのことをいいます。選定された投資案件の企業価値の評価やデューデリジェンスを行い、買収条件の交渉を行います。
また、企業の財務状況や市場環境を徹底的に分析・調査を行い、最終的な買収契約を締結させるまでのプロセスであるため、法律事務所や金融アドバイザーと協力して行うことが一般的です。
エグゼキューションを効率的かつ正確に実行することで、投資成功の確率を高めることができます。
価値向上支援・運用(バリューアップ)
バリューアップは投資実行後の運用フェーズであり、投資先の企業価値を向上させるためのあらゆる施策を行うプロセスのことです。
具体的な施策として、企業価値を上げるための「売上の拡大」と「費用削減などでの利益率の向上」などを実行します。
以下はそれぞれの例です。
目的 |
施策例 |
売上拡大 |
商材単価の向上、商材・店舗の拡大、新規出店など |
利益率改善 |
低利益率商材の見直し、業務改善(オンライン化など)など |
バリューアップのプロセスでは、上記のような施策を講じ、経営課題の改善を行うことで、企業価値が向上し投資家が利益を得ることにつながるのです。
投資資金の回収(イグジット)
イグジットとは投資した資金を回収し、利益を得る最後のプロセスです。バリューアップを経て企業価値が向上した投資先企業を売却し、投資資金を回収します。PEファンドは、イグジットにおいては「売り手」としてM&Aを行うことになります。
イグジットの手法としては、主に以下のような種類があります。
手法 |
内容 |
IPO(Initial Public Offering:新規株式公開) |
今まで上場していなかった会社が、株式を証券取引所に上場させること |
M&A(Mergers and Acquisitions:合併・買収) |
経営者や出資者が会社あるいは事業を売却して資金を得る方法 |
IPOは上場の準備に時間がかかるのに対し、M&Aはそのような準備は必要ありません。条件の合う買い手が見つかれば、すぐに売却できるメリットがあります。以前は、日本ではIPO、アメリカではM&Aが主流のイグジットとの方法でした。しかし現在(2025年4月)では、日本でもM&Aによるイグジットが増加傾向にあります。
イグジットが成功したら、投資家にリターンを分配し、最終的にファンドの利益が確定します。わかりやすく解説すると、「回収した資金−投資した資金=PEファンドの利益」です。また多くの場合、全ての余剰金がリターンとして分配されるのではなく、マネージメントフィーと呼ばれる管理報酬を差し引いた金額が投資家に分配されます。
PEファンドは、イグジットで少しでも高く投資先を売却することが、多くの利益を生むポイントとなります。
PEファンドの出資を受けるメリット
PEファンドからの出資によって、企業側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、PEファンドの5つのメリットについて解説していきます。
PEファンドの出資を受けるメリット
- 資金調達ができる
- 企業価値の向上を図ることができる
- 自社に必要な人材を紹介してもらうことができる
- 社風や企業文化が変質しにくい
- M&Aのサポートを得ることができる
資金調達ができる
ある程度の実績を持つ企業ならばともかく、設立間もないスタートアップやベンチャーにとって、事業資金の調達はとても悩ましい問題です。銀行の融資を受けようとしても、信用の基盤となる実績が必要であり、それがなければ何らかの担保を求められます。
「そんなものがあれば、わざわざ融資など受けない」というのが、経営者の本音でしょう。 申込みにあたっては事業計画書をはじめとする書類を作らなければならず、それらの書類は詳細かつ厳格に審査されます。つまり、銀行からの融資は、手間と時間がかかる上、ハードルが高いのです。 ですが、PEファンドは違います。ファンドは企業の現状よりも、将来性を重視します。そのため、収益を生む確実なビジネスモデルがあれば、自社株の譲渡という形で資金調達が可能です。
さらに、ファンドから調達する資金はエクイティファイナンスとなり、利子をつける必要がありません。そのため、得られた資金を全て、事業拡大と企業価値向上のために使うことができるのです。
企業価値の向上を図ることができる
PEファンドは、投資先企業の株価を高めた後に株式を売却することで、利益を得るという仕組みのファンドです。つまり、投資先企業の価値が高いほど、多くの利益をつかむことができるという仕組みになっているのです。 そのため、ファンドは投資先企業に、企業価値向上のための専門チームを派遣します。彼らはいわば「経営のプロ」であるため、現時点での会社の問題点や改善策を提示し、さらなる成長への道筋を示します。これは、投資を受ける企業にとっては大きなメリットです。
創業間もないスタートアップや技術系のベンチャーは、往々にして経営力が乏しいものです。しかし、プロ経営者の手法を間近で見ることで、そのノウハウを学ぶことができます。資金を得て、企業価値の向上を図れるだけでなく、プロフェッショナルな経営を学ぶこともできる。これは、ファンドからの出資によって得ることができる、大きなメリットです。
自社に必要な人材を紹介してもらうことができる
PEファンドは、様々な業界の企業に投資しています。つまり、それだけ多くの業界にパイプを持ち、情報を得られる立場にあるというわけです。 あらゆる業界で人不足が問題となっている現在、優秀な人材を確保することは、全ての企業の重要課題となっています。しかし、募集・採用には多くのコストがかかり、社内のマンパワーも消費されます。
また、それ以前に、自社にどのような人材が必要なのか、それを明確にするところから始めなくてはなりません。 こうした難題に対しても、ファンドは頼れる味方になってくれるのです。自社のどの部署に、どのような人材が必要なのかを正確に見極めることができ、またうまくいけば信頼に足る人材を紹介してもらうこともできるでしょう。これもまた、PEファンドを利用して得ることができる、大きなメリットといえます。
社風や企業文化が変質しにくい
危機に瀕している自社を再建したいという場合、ファンドの出資を受けるほか、他企業とのM&Aによる子会社化という方法もあります。どちらが良いかはケースバイケースですから、一概に良し悪しを決めることはできません。しかし、子会社化の道を選んだ場合、これまで培ってきた自社の社風や企業文化を、捨てざるをえない状況になる場合があります。
これは、多くの社員にとって、特に長年自社に貢献してきたベテラン社員にとっては非常につらいことでしょう。 一方、PEファンドの場合、必ずしもそのようなことにはなりません。むしろ、企業価値のさらなる向上に結びつくと判断されれば、今までどおりの社内文化を維持することが奨励されるでしょう。
M&Aのサポートを得ることができる
「事業承継の必要があるが、後継者がいない」そのようなときは、M&Aによる売却を目指すケースもあります。PEファンドは、そこでも頼りになる存在です。 M&Aを実効性のある形で進めるためには、専門的な知識と戦略が必要です。信頼できる仲介会社に依頼できたとしても、「全て丸投げ」というわけにはいきません。
ですが、PEファンドは、最終的な利益を得る「EXIT」としてM&Aを選択することも多いため、M&A戦略の専門家をそろえています。彼らのサポートを得ることができれば、大きな力となるでしょう。自社の価値をとことん高め、その上で最適な売却先を確保できるはずです。
PEファンドの出資を受けるデメリット
PEファンドの出資を受ける際には、先述したような多くのメリットがある一方、デメリットも存在します。続いては、PEファンドの代表的な2つのデメリットについて解説します。
経営の自由度が低下する
出資を受ければ、当然ながら経営の自由度は下がります。PEファンドは、株式の譲渡によって出資を受けるスタイルであるため、「ファンドの保有する株式数=議決権の大きさ」となります。出資額が大きいほどファンドの議決権が大きくなり、自社経営陣による経営の自由度が制限されることになるでしょう。
【保有株式数による議決権の違い】
- 発行株式の3分の2以上を保有している場合:特別決議を単独で可決できる(会社の解散、合併の承認、定款の変更など)
- 発行株式の2分の1超を保有している場合:普通決議を単独で可決できる(配当の決定、役員報酬の決定、取締役の選任と解任など)
- 発行株式の3分の1超を保有している場合:特別決議に対して拒否権を行使できる
ファンドからの出資を受けると多くのメリットを享受できますが、一方で経営が自分の手を離れ、ファンドに委ねられることになります。それを容認できない経営者は、少なくないでしょう。 企業としての実利を取るか経営者としての心情を優先するか、よく検討して決断することをおすすめします。
EXITの先を見据えておく必要がある
シンプルにいえば、PEファンドの目的は「利益を得ること」です。企業に出資し、その企業の価値を高めようと尽力するのは、あくまで目的を果たすための手段です。出資した企業の経営に参画し、業務効率化や人材の紹介を行って成長拡大を推進するのは、その先にIPOやM&Aなどの出口戦略、つまりEXITがあるからです。その時期は通常、出資の3年後から5年後といわれます。
ファンドがEXITを果たし、利益を手にしたら、投資先企業はその先、ファンドの助力を得ることはできません。つまり、自社の成長のために様々なサポートをしてくれるからといって、そのサポートに依存してしまうと、EXIT以降の経営が立ち行かなくなる危険性があるのです。 そうした危険を回避するため、常にEXITの先を見据え、戦略を練り、準備しておく必要があります。それでこそ、長期にわたる事業の継続と成長を実現することができるのです。
主なPEファンド一覧
企業の概要や、主な投資先の業態についてまとめているので、PEファンドへの転職に興味のある方は参考にしてみてください。
外資系PEファンド10選
外資系PEファンドは、グローバルなネットワークと豊富な資金力で比較的大規模な投資案件を手掛けることが多いのが特徴です。海外のPEファンドと連携して投資を行うケースも見られます。
一般的に、日系のPEファンドと比較して高い年収水準である傾向があります。転職においては、高い英語力はもちろんのこと、M&A案件などの実務経験があると、選考で有利になる可能性が高いでしょう。
以下が主な外資系PEファンドです。
ブラックストーン・グループ(Blackstone)
ブラックストーン・グループは、1985年に設立され、アメリカのニューヨークに本社を置いている米PEファンドです。
世界各国に多くのオフィスを保有しており、2007年に日本オフィスが設立されました。
1兆ドル超の運用資産残高を有する世界最大級のオルタナティブ投資運用会社であり、世界三大ファンドの1つとして知られています。12,500件超えの不動産と、250社超の投資先企業を保有しており、スケールの大きさが特徴です。
出典:ブラックストーン・グループ
コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)
コールバーグ・クラビス・ロバーツも、世界最大級のPEファンドです。1976年にアメリカのニューヨークで創設され、2006年にKKRジャパンが設立されました。
KKRの特徴として、借入金を使用して企業を買収する手法であるレバレッジド・バイアウト(LBO:借入金を活用した企業買収)を得意としています。1998年に当時の史上最大金額である250億ドルで、RJRナビスコを買収したことで有名になりました。
インフラや不動産、クレジットなど、様々な資産クラスの運用を行っています。
出典:コールバーグ・クラビス・ロバーツ
カーライル・グループ(The Carlyle Group)
カーライル・グループは、世界最大かつ最も多角的なグローバル投資会社の1つです。1987年にアメリカのワシントンDCに設立され、現在は4大陸の29のオフィスで活動しています。カーライル・ジャパンは2000年に設立され、日本で事業を行うグローバルな投資会社の中で最も長い歴史をもっています。
カーライル・グループは、3つの事業セグメントと636の投資ビークル(投資者と資産を結ぶ組織)にわたって、4,410億ドルの資産を管理しています。主な投資先としては、エレクトロニクスや飲食、情報通信など様々な業界での投資を行っているのが特徴です。
出典:カーライル・グループ
ベインキャピタル( Bain Capital LLC)
ベインキャピタルは、1984年に設立されたアメリカのボストンに本社を置く世界最大規模のPEファンドです。全世界で約12兆円の資金運用、1,030社の企業買収・投資実績があり、投資先の長期的なサポートや成長支援を強みとしています。
2006年に日本オフィスが設立され、在籍する多数の投資プロプロフェッショナルによって大型投資を実現させています。また、日本マーケットについての深い理解と専門知識を持ち合わせており、日本で活躍するPEファンドでは最大規模とされています。
出典:ベインキャピタル
CVCキャピタルパートナーズ株式会社(CVC Capital Partners)
CVCキャピタルパートナーズ株式会社は、英国に本社を置く世界最大級のPEファンドであり、1981年に設立されました。同社は世界に29か所のオフィスを展開しており、約13兆円の資産運用を行っています。
また2003年には日本拠点を開設、2024年の2月にはアジア・太平洋地域を投資対象とする6号ファンド(68億ドル)を組成しました。
CVCキャピタルパートナーズ株式会社は、長期的な投資戦略と多角的なサポートを特徴です。また、多様な業界への投資を行っており、人材・教育やヘルスケア、サービス業などが投資先として挙げられます。
出典:CVCキャピタルパートナーズ株式会社
TPGキャピタル株式会社(TPG Capital)
TPGキャピタル株式会社は、1992年に設立したアメリカのサンフランシスコに本社を置くPEファンドです。全世界10か国に17のオフィスを持ち、300名超のプロフェッショナルを誇る世界最大規模のPEファンドとされており、運用資産は1兆300億ドル以上にのぼります。
設立当初は「テキサス・パシフィック・グループ」として活動しておりましたが、2007年に現在のTPGキャピタルに社名変更しました。
2007年にタカラトミーへの投資を行うなど、日本でも実績がありましたが、現在は日本市場から撤退しています。主な投資先は、小売や電気通信、航空、レジャー、ヘルスケアなど、多岐な業種にわたります。
出典:TPGキャピタル株式会社
ペルミラ・アドバイザーズ株式会社(Permira Advisers)
ペルミラ・アドバイザーズ株式会社は、1985年に英国で設立されたヨーロッパ最大のPEファンドです。2005年にアジア最初の拠点として日本へ進出し、複数の大型案件の買収を行いましたが、現在は日本から撤退しています。
ベルミラは、異なるソリューションの提供を強みとしており、グローバルな事業展開を見据えた支援や、優秀人材の獲得まで、各社のニーズに合わせた提案を行います。
小売・消費財、ヘルスケア、金融サービス、産業サービス、テクノロジーなど、多岐にわたる業種へ投資を行っています。
出典:ペルミラ・アドバイザーズ株式会社
MBKパートナーズ株式会社(MBK Partners)
MBKパートナーズ株式会社は、2005年にアメリカのカーライル出身の6名によって設立された、北アジア最大のPEファンドです。主に東京、上海、香港、北京、ソウルの5拠点で独立して活動しているのが特徴です。
MBKパートナーズ株式会社は、公認会計士資格保有者や、外資金融、外資コンサルなどの勤務経験者など、80名以上の投資専門家が在籍していることが強みです。主な投資先の業種は、エレクトロニクスやヘルスケア・介護への投資を行っています。
また日本ではこれまでに、ユニバーサルスタジオジャパンへの投資実績や、コメダ珈琲の買収で話題を集めました。
出典:MBKパートナーズ株式会社
シティック・キャピタル・パートナーズ(CITIC Capital Partners)
シティック・キャピタル・パートナーズは、2002年に設立の香港に拠点を置くPEファンドです。中国、日本、米国のそれぞれの企業を対象にした中国系のファンドであり、約280名超の社員数を有しています。
中国の投資家に加え、様々な国際的投資家グループの資産140億ドルを投資運用しており、特に中国市場の発展に大きく寄与してきたPEファンドの1つです。またその中で、日本企業に特化した運営をしているのが、2004年に設立したCITICキャピタル・パートナーズ・ジャパンです。中国の資本を使って日本企業の活性化を目的に設立され、現在は、「トラスター・キャピタル・パートナーズ・ジャパン」に社名変更しています。
出典:シティック・キャピタル・パートナーズ
ロングリーチグループ(The Longreach Group)
株式会社ロングリーチグループは、日本を中心にアジア地域における投資を行うPEファンドです。2003年に設立され、東京と香港の2拠点を中心に投資業務を行っています。
日本企業の成長を中期的視点で支援することを目的としており、現在では、日本およびアジア経済の成長にの永続的成長に貢献しているのが特徴です。
また、これまで4つのファンドを設立し、国内外の機関投資家、年金、金融機関、大学基金、政府系ファンドからのLP(有限責任組合員)出資など、約2,900億円規模の投資運用実績を有しています。
出典:ロングリーチグループ
日系PEファンド13選
日系PEファンドは、日本に拠点を置き、主に国内の企業や事業を投資対象とするファンドです。その成り立ちや特徴は様々で、特定の金融機関や事業会社に属さない「独立系」のファンドに加え、銀行、証券会社、保険会社などが母体となる「金融機関系」、総合商社などが設立した「事業会社系」などがあります。
投資スタイルとしては、外資系ファンドと比較して、中堅・中小企業への投資や、より長期的視点での経営支援、現場との密接な連携(ハンズオン支援)を重視する傾向が見られます。
外資系ファンドに比べて働きやすく、チームプレイを重視しているファンドが多い傾向にあります。
以下、代表的な日系PEファンドをご紹介します。
日本産業パートナーズ株式会社
日本産業パートナーズ株式会社は、2002年に設立されたPEファンドです。主に、企業の事業再編にともなうカーブアウト(事業部門の切り出し・分社化)や、独立した中堅企業の事業再構築において、資金提供や経営面でのサポートを行っています。
投資対象は製造業を中心に、流通業やサービス業なども含んでおり、特に事業再編やMBO(経営陣による買収)といった分野で豊富な投資経験を持っています。
設立当初は、みずほフィナンシャルグループの関連会社でしたが、株式の売却などによって2014年に独立系PEファンドとなりました。
出典:日本産業パートナーズ株式会社
株式会社アドバンテッジパートナーズ
株式会社アドバンテッジパートナーズは1992年に設立された日系PEファンドです。1997年には、日本で最初のバイアウト専門ファンドを設立しました。
100件を超える投資実績を有しており、4,000億円以上のコミット額と25年以上の投資ノウハウを持ち合わせた日本最高レベルのPEファンドといえるでしょう。
また国内だけでなく、海外からの投資も受け入れており、国外の機関投資家からの協調ファンドを合わせて大規模な案件にも対応しています。
主な投資先は、製造業やテクノロジー、流通・小売、ITサービスなど、様々な業種の企業に投資を行っています。
出典:株式会社アドバンテッジパートナーズ
ユニゾン・キャピタル株式会社
ユニゾン・キャピタル株式会社は、日韓連携を投資テーマの1つとしている日系PEファンドです。1998年に設立し、日本国内におけるPEファンドのパイオニアとして知られています。
ユニゾン・キャピタル株式会社は主にヘルスケア、コンシューマー、B2Bサービスでの投資に注力しています。具体的には医薬品や歯科・薬局などの医療サービス基盤構築、小売・外食・食品などのブランド育成や店舗網拡大、法人向け専門サービスの案件を中心に事業承継やスピンオフなどの案件で企業の成長を支援しています。
また、20年以上にわたる投資活動を通じて培ったノウハウやネットワークを駆使しており、運用実績は約5,000億円を超えています。
出典:ユニゾン・キャピタル株式会社
ポラリス・キャピタル・グループ株式会社
ポラリス・キャピタル・グループ株式会社は、2004年に設立した日系PEファンドです。
みずほ証券を母体として設立され、金融系グループ発の独立系PEファンドとしてユニークな特徴を活かしたネットワークを形成しています。また、「ハンズオン型」のバリューアップノウハウを有しており、国内PEファンド随一の30件以上の投資実績があります。さらに、投資銀行、事業会社、経営コンサルティングなど、多種多様な業務経歴を持つ人材が揃っていることも強みです。
主な投資先の業種は、ヘルスケア、食品、情報通信、人材など、様々な業種への投資を行っています。
出典:ポラリス・キャピタル・グループ株式会社
インテグラル株式会社
インテグラル株式会社は、2007年に設立された日系PEファンドであり、「ハイブリッド型投資」という独自の手法を有している点が特徴です。ハイブリッド投資とは、ファンド資金と自己資金を組み合わせて投資することで、投資先企業を長期的に支援し、持続的な成長を促す手法を指します。
また、企業価値向上支援チーム「i-Engine」による経営支援も充実しており、国内PEファンドの中でも信頼度の高いPEファンドといえるでしょう。
出典:インテグラル株式会社
J-STAR株式会社
J-STAR株式会社は2006年に日本で設立され、投資を通じて日本の中堅・中小企業の課題を解決するPEファンドです。
設立してから案件数は年々増加し、ファンドサイズも拡大しているため、コンスタントな投資実績のあるPEファンドとして信頼度の高さが特徴です。また、投資先企業に入り込んでバリューアップに注力することで知られており、投資先企業との密なコミュニケーションが強みとされています。
主な投資先の業種は、ヘルスケア、情報通信、不動産、物流など、様々な業種の投資実績があります。
出典:J-STAR株式会社
MCPキャピタル株式会社
MCPキャピタル株式会社は、2000年にみずほキャピタルパートナーズとしてのPE業務を開始したファンドです。「日本企業の持続的な成長支援」を理念としており、一般的なバイアウトファンドと異なり、長期的な視点で株式を保有し、中長期的な施策も含めた経営支援を行う点が特徴です。投資先企業の成長を重視し、そのIPO(株式上場)実績は国内バイアウトファンドの中で最多を誇ります。経営者との対話を重ね、戦略策定、M&A、人材紹介、ガバナンス向上など、戦略策定や経営改善などのサポートをチームで提供しています。
主な投資先の業種は、製造業や小売、情報通信などに投資実行を行っています。
出典:MCPキャピタル株式会社
ニューホライズン キャピタル株式会社
ニューホライズン キャピタル株式会社は、2002年に日本で設立した日系PEファンドです。
累計投資総額2,500億円超の実績があり、PEファンド投資に関する経験と知識を有するプロフェッショナルチームによるハンズオン型の支援を強みとしています。
国内中堅・中小企業への投資を中心に、投資先の経営陣、従業員とともに企業価値の向上を支援しています。
主な投資先としては、小売、流通・卸、消費財や製造業、ヘルスケアなど、幅広い業種への投資実行を行っています。
出典:ニューホライズン キャピタル株式会社
ティーキャピタルパートナーズ株式会社
ティーキャピタルパートナーズ株式会社は、1991年に「東京海上キャピタル」として設立した日系PEファンドです。2019年に東京海上グループからのMBOにより、社名を現在の「ティーキャピタルパートナーズ」に変更しました。累計コミット額は2,200億円超と、安定した実績のある老舗PEファンドです。優れた中堅・中小企業への投資にフォーカスをした投資スタイルが特徴となります。
また主な投資先の業種は、エレクトロニクス、アパレル、ヘルスケア、自動車など、様々です。
出典:ティーキャピタルパートナーズ株式会社
日本みらいキャピタル株式会社
日本みらいキャピタル株式会社は、2002年に設立した日系PEファンドです。バイアウトスキルと再生スキルを持ち合わせ、投資企業の成長戦略の実行を支援しています。
また、製造業/非製造業、事業再生から成長戦略支援までの幅広い投資実績を持ち合わせているのも特徴の一つです。
出典:日本みらいキャピタル株式会社
エンデバー・ユナイテッド株式会社
エンデバー・ユナイテッド株式会社は、「にっぽんのための投資ファンド」を掲げる国内最大級の和製独立系ファンドです。
2002年にグループ設立後、12本、合計約3,000億円の投資実績を達成し、通算の株式投資件数は80社超えの、国内最大実績を誇ります。
また、事業継承やカーブアウト投資をメインに展開しており、投資先企業が抱える経営課題や経営資源の状況に応じた支援を強みとしています。
投資実績のある業種は、製造、建設・不動産、飲食、小売など、様々な業種に投資実行を行っています。
出典:エンバー・ユナイテッド株式会社
クレアシオン・キャピタル株式会社
クレアシオン・キャピタル株式会社は、1991年に日本アジア投資株式会社の子会社としてJAIC投資顧問株式会社を設立、その後2011年に商号変更しました。
M&Aアドバイザリー、事業継承・企業再編コンサルティングにおいて高い専門性を持つクレアシオン・インベストメント株式会社との資本・業務提携により、バイアウトを中心としたPEファンドとなりました。
また最大の特徴として「IPO Exit」を強く志向しており、投資企業が独立企業として永続的に発展できるよう支援しています。
主な投資先の業種は、金融、卸売、旅行、製造業など、様々な業種に投資実行を行っています。
出典:クレアシオン・キャピタル株式会社
サンライズキャピタル株式会社
サンライズキャピタル株式会社は、国内優良中堅企業の経営体制の強化に特化した日系ファンドです。CLSAキャピタル・パートナーズを前身とし、2006年にPE投資会社として設立しました。
アジア全域での豊富な投資経験と深い市場知識を活用したサービスを強みとし、国内成長を促進させるだけでなく、海外への事業展開の支援も行っているのが特徴です。
主な投資先として、消費財、ヘルスケア、小売、物流、製造などの様々な業種への投資実績を行っています。
出典:サンライズキャピタル株式会社
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