「第二新卒での転職はやめておいた方がいい」という意見を見て、不安を覚えた方もいるのではないでしょうか。実際は、第二新卒であることが必ずしも不利に働くとは限りません。第二新卒に対しては短期離職への懸念がある一方で、若手人材を求める企業からのニーズは高く、適切な準備と対策を進めれば、希望のキャリアを実現できる可能性は十分にあります。
本記事では「第二新卒の転職はやめとけ」と言われる理由や企業が第二新卒を求める背景、転職を成功させるためのポイントを詳しく解説します。
「第二新卒の転職はやめとけ」と言われる3つの主な理由
「第二新卒の転職はやめとけ」という意見の背景にある、企業側の懸念や一般的な通説について解説します。
新卒よりも採用数が少ない
第二新卒の転職が難しいと言われる一因として、新卒採用と比較して採用数が限られていることが挙げられます。
多くの日本企業では、長年にわたり新卒一括採用を人材獲得の主軸に置いてきました。年度ごとにまとまった人数の新卒者を採用し、一斉に研修を受けさせ、組織文化を醸成していくスタイルが根付いています。この採用方針のもとでは、第二新卒の採用はイレギュラーな位置づけになりやすく、採用数も少なくなりがちです。
また「第二新卒」という明確な採用枠を設けず、通年採用や欠員補充といった中途採用の枠組みで募集する企業もあります。その場合、第二新卒者は、数年以上の実務経験を持つ即戦力人材と同じ枠組みで比較されることになるため、実績面で見劣りし、選考を通過する難易度が上がってしまう可能性も否めません。
短期離職に対してネガティブな評価を受けやすい
「短期間で会社を辞めた」という事実は、採用担当者にネガティブな印象を与える可能性があります。
採用広告費や人材紹介会社への手数料、入社後の研修費用、担当者の人件費など、企業が社員を採用し、育成するために必要なコストは決して少なくありません。株式会社マイナビの2023年調査によると、新卒採用の入社予定者一名当たりの採用費用の平均は56.8万円です。企業は、これらの人材への投資を、社員が長期的に活躍し、利益を生み出すことで回収するのです。
出典:マイナビキャリアリサーチLab|マイナビ 2024年卒 企業新卒内定状況調査
このような背景から、短期離職によって人材への投資を回収できなくなるリスクを懸念し、厳しい選考が実施されるケースは少なくありません。特に、前職の退職理由が曖昧であったり、他責の傾向が見えたりすると、忍耐力やストレス耐性が低いと判断され、内定獲得が難しくなります。
スキル・経験不足により選択肢が限定される
社会人経験が1年から3年程度と短い第二新卒は、職務経歴書や面接でアピールできる具体的な実績や専門スキルが不足しがちです。
例えば、ITエンジニアの求人で「〇〇の開発経験3年以上」といった応募資格が設けられている場合、経験年数が満たない第二新卒は書類選考の段階で対象外となってしまいます。同様に、マーケティング職で具体的なキャンペーンの成功実績が求められたり、経理職で年次決算の経験が問われたりする場面では、実績を十分にアピールするのが難しいでしょう。
結果として、第二新卒が応募できる求人は、未経験者歓迎の「ポテンシャル採用」の枠に偏る傾向です。キャリアチェンジを目指す上ではメリットにもなりますが、特定の専門分野でキャリアを深めたいと考えている場合、希望する求人が見つかりにくい可能性があります。
企業が第二新卒を欲しがる理由
ネガティブな側面ばかりが注目されがちな第二新卒ですが、企業側には第二新卒を積極的に採用したい明確な理由とメリットが存在します。
深刻な若手人材不足を補いたいから
多くの企業が第二新卒に注目する背景には、深刻な若手人材不足があります。
労働力の中核を担う生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8,716万人をピークに減少を続けており、多くの業界で人手不足が深刻化しています。労働力人口の減少は新卒採用にも影響を及ぼしており、大手企業でさえ計画通りの人数を確保するのが難しくなっています。
出典:総務省|令和4年版 情報通信白書 生産年齢人口の減少
そこで、新卒採用で充足できなかった若手層の欠員を補う貴重な存在として、第二新卒に注目が集まっているのです。
株式会社マイナビが実施した調査によると、2025年以降の採用活動において「第二新卒を採用する予定がある」と回答した企業は80.9%にのぼり、企業の高い採用意欲がうかがえます。
出典:マイナビキャリアリサーチLab | 企業人材ニーズ調査2024年版
教育コストが低く、即戦力に近いから
第二新卒は、社会人経験がゼロの新卒と比較して、教育コストを抑えられるというメリットがあります。
新卒を採用した場合、企業はビジネスマナー研修やコンプライアンス研修など、社会人としての土台を作るための初期研修に時間と費用をかけなければなりません。しかし、第二新卒であれば、前職での経験を通じて、基本的なビジネスマナーやITスキル、報連相といった社会人としての基礎を一通り身につけているため、研修のコストや手間を大幅に削減できます。
特に、同業界や同職種へ転職する第二新卒であれば、専門用語や業務プロセスへの理解も早く、早期に戦力化できる「即戦力候補」として企業から高く評価されることもあるでしょう。
入社時期を柔軟に調整できるから
企業の採用活動における柔軟性の高さも、第二新卒が求められる理由の一つです。
新卒採用は、一般的に広報活動から選考、内定、入社まで1年以上の期間を要し、入社時期も4月に集中します。
一方、第二新卒の採用は通年で行われるのが一般的です。これにより、企業は急な欠員が生じた際や、新規事業の立ち上げで急遽人員が必要になった場合など、自社の事業計画に合わせて必要な時期に必要な若手人材を確保できます。
「やめとけ」は嘘?第二新卒ならではの強み
「短期離職」や「スキル不足」といったネガティブな側面の裏返しとして、第二新卒には転職市場で評価されやすい独自の強みがあります。
ポテンシャルと若さを兼ね備えた将来性
企業は第二新卒に対して、現時点でのスキルや経験以上に、ポテンシャルや将来性に期待しています。
社会人経験が短い分、前職のやり方に固執することなく、新しい知識や価値観、業務プロセスを素直に吸収できる点や、新しい環境へスムーズに溶け込める適応力の高さが企業にとっての魅力です。
企業は、数年後、数十年後を見据え、自社の未来を担うリーダー・幹部候補として、第二新卒の長期的なキャリア形成に期待しています。
社会人基礎力と明確なキャリアビジョン
第二新卒には、社会人基礎力や明確なキャリアビジョンといった、新卒にはない強みがあります。
第二新卒の場合、前職でビジネスマナーやビジネス文書の作成、報連相といった基礎的なスキルは一通り習得しているため、新卒よりも教育コストを抑えることが可能です。
さらに、一度就職を経験し、課題や理想とのギャップを感じたからこそ、自身のキャリアについて深い洞察を得ています。「どのような環境で、何を成し遂げたいのか」という実務経験にもとづく具体的な職業観を持っていることが多く、入社後のミスマッチが起こりにくい傾向にあります。
「第二新卒でコンサルティング業界への転職はやめとけ」は本当?
第二新卒の転職先として人気のコンサルティング業界について、第二新卒が挑戦する際のリアルな実情を解説します。
なぜコンサルティング業界への転職は「やめとけ」と言われるのか
コンサルティング業界への転職に対して否定的な意見が多いのは、未経験者にとってはハードルが高いと考えられているからです。
コンサルタントには極めて高いレベルの論理的思考力が求められます。クライアントが抱える複雑な経営課題を構造的に理解し、解決策を導き出す能力は、選考段階でケース面接などを通して厳しく評価されます。
また、コンサルティング業界は激務であることで知られています。プロジェクトの納期が迫ると、深夜や休日関係なく働かざるを得ない場面も少なくありません。成果主義が徹底されており、「Up or Out(昇進か、さもなくば退職か)」というカルチャーが根付いているコンサルティングファームも存在します。
コンサルティング業界で活躍するためには、強いプレッシャーに耐えうる精神的・肉体的なタフさが必要です。
第二新卒のコンサルティング業界への転職市場のリアル
第二新卒がコンサルティング業界へ転職するチャンスは拡大しつつあります。
日本ではコンサルティング市場全体が拡大基調にあり、特に企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)需要の高まりは著しく、IT戦略や業務改革を支援できるコンサルタントが慢性的に不足しているのが現状です。このような旺盛な需要を背景に、BIG4やアクセンチュアといった大手コンサルティングファームでは、通年で大規模な採用を継続しています。
また、国内市場に精通し、日本企業の特有の課題に合わせたソリューションを提供できる日系コンサルティングファームも売上を大きく拡大させており、積極的な採用活動を行っています。
コンサルタントに向いている人・向いていない人の特徴
コンサルタントに向いているのは、知的好奇心が旺盛で、未知の業界やテーマについて学ぶことを楽しめる人です。複雑な事象を構造的にとらえ、筋道を立てて考える論理的思考力や、限られた情報から精度の高い結論を導き出す仮説思考が得意な人も適性があります。また、厳しいプレッシャーや長時間労働にも耐えうる、精神的・肉体的なタフさも不可欠な要素です。
一方、受け身の姿勢で仕事に取り組むタイプの人は、コンサルタントに向いていません。コンサルタントの仕事には明確な正解がないため、自ら課題を設定し、解決策を模索し続ける姿勢が必要になります。また、物事を抽象的にとらえるのが苦手な人や、対人関係のプレッシャーに弱い人も、コンサルティング業界に適応するのは難しいでしょう。
第二新卒の転職を成功に導く5つのポイント
第二新卒という立場を最大限に活かし、後悔のない転職を実現するためのポイントを解説します。
ポイント①:「Will-Can-Must」でキャリアの棚卸しとキャリアの軸を明確化
転職活動を始める前に、まずはこれまでの経験を振り返り、キャリアの軸を明確にしましょう。なぜ転職したいのか、次の会社で何を成し遂げたいのかを明確にしないまま活動を始めても、面接で説得力のあるアピールはできません。
自己分析には「Will-Can-Must」のフレームワークを活用するのが有効です。
- Will(やりたいこと):自分のやりたいことや情熱を注げる分野
- Can(できること):前職の経験を通じて得たスキルや知識、自身の強み
- Must(すべきこと):社会や職場で求められている役割・スキル
上記3つの重なりが大きい仕事であれば、満足度は高くなります。
並行して、転職先に求める譲れない条件を洗い出し、優先順位をつけることも重要です。給与や勤務地、働きがい、企業文化など、自身が仕事に求める要素をリストアップし、順位付けをしておきましょう。あらかじめ優先順位を明確にしておくことで、企業選びで迷った際も判断しやすくなります。
ポイント②:「ネガティブな退職理由」をポジティブに変換する
面接で退職理由を伝える際は、前職への不満を述べるのではなく、自身の成長や目標達成のための前向きなステップとして説明することが必要です。採用担当者が納得できる、ポジティブな伝え方を意識しましょう。
以下に、よくある退職理由と、それを前向きに伝えるための言い換え例を紹介します。
ネガティブな退職理由 |
ポジティブな変換例 |
残業が多かった |
業務の生産性を高め、限られた時間で成果を出す働き方を追求したい |
仕事にやりがいを感じられなかった |
一つの業務だけでなく、より上流の企画段階から関わることで、事業全体に貢献できる仕事がしたい |
人間関係が悪かった |
多様な価値観を持つメンバーと協働しながら、チームとして成果を最大化できる環境で働きたい |
退職理由と志望動機に一貫性を持たせ、具体的なエピソードを交えながら語ることで、採用担当者に「意欲の高い人材」といった印象を与えられるでしょう。
ポイント③:企業文化や事業内容の徹底的なリサーチ
入社後のミスマッチを防ぎ、短期離職を繰り返さないためには、徹底的な企業研究が欠かせません。求人票に書かれている表面的な情報だけでなく、多角的な視点から企業を深く理解する必要があります。
企業の公式サイトや採用ページはもちろんのこと、実際に働く社員の声が聞ける社員インタビュー記事や、企業の評判がわかる口コミサイトにも目を通しましょう。
また、その企業のビジネスモデルや業界内での立ち位置を理解することも必要です。競合他社と比較してどのような強みがあるのか、今後どのような事業展開を目指しているのかを把握した上で、自身のキャリアプランがその会社で働くことで実現できるのかを見極めましょう。
ポイント④:選考対策(書類・面接)を入念に行う
第二新卒の選考では、スキルではなくポテンシャルや学習意欲を効果的にアピールする必要があります。
職務経歴書では、単に業務内容を羅列するのではなく、自身がどのような課題に対して、どのように考え、行動し、どのような成果を出したのかを具体的な数字を用いて記述しましょう。「〇〇という課題に対し、△△を提案・実行した結果、売上が前月比110%になった」というように、具体的な行動と成果をセットで示すことで、貢献度やポテンシャルが伝わりやすくなります。
面接では、結論から先に話す「結論ファースト」で論理的に話す練習をしておきましょう。短い経験であっても前職で何を学び、応募先企業でどう活かせるのかを具体的に語れるように準備しておくことが大切です。
面接の最後にある逆質問は、単なる疑問解消の場ではありません。企業への理解度と入社意欲を示すチャンスです。「〇〇という事業に将来性を感じていますが、若手社員にはどのような役割を期待していますか」といった、自身の活躍をイメージさせる質の高い質問を準備しましょう。
ポイント⑤:第二新卒に強い転職エージェントを活用する
第二新卒の転職活動は、キャリアの棚卸しから企業研究、選考対策までやるべきことが多岐にわたるため、独力での対策には限界があります。特に、第二新卒から人気のコンサルティング業界を目指すのであれば、業界に精通した転職エージェントの活用が成功への近道です。
転職エージェントを活用すると、個人のスキルや志向に合った質の高い求人情報を入手できます。また、プロのコンサルタントとの面談を通じて、客観的な視点から自己分析を深め、自分だけでは気付けなかった強みやキャリアの可能性を発見することも可能です。さらに、志望する企業ごとの傾向に合わせた、書類選考・面接に対する質の高いサポートを受けられます。
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