マッキンゼー・アンド・カンパニーは、世界中の政府やトップ企業の経営層が抱える最重要課題の解決を支援する、世界最高峰のコンサルティングファームです。日本においても1971年にアジア初の拠点として東京オフィスを開設して以来、50年以上にわたって数多くの企業の変革を支援し、産業界に大きな影響を与えてきました。
本記事では、同社の事業内容や強み、社風、キャリアパス、働き方の実態や年収を詳しく解説します。
マッキンゼーはどんな会社?
「世界最強のファーム」とも称されるマッキンゼー・アンド・カンパニーが、どのような特徴を持つ企業なのかを解説します。
基本情報
| 創業(米国本社) |
1926年 |
| 設立(日本支社) |
1971年 |
| 所在地 |
・東京オフィス
〒106-0032 東京都港区六本木一丁目9番10号 アークヒルズ仙石山森タワー32階
・関西オフィス
〒530-0011 大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 B棟 |
| 代表者 |
岩谷 直幸 |
| 従業員数
(世界全体) |
4万3,000名以上
(2025年10月4日時点) |
| 沿革 |
1926年: ジェームズ・O・マッキンゼーが米国シカゴで同社を創業
1959年: 米国外初の拠点としてロンドンオフィスを開設
1971年: アジア初の拠点として東京オフィスを開設
2018年: 日本における2拠点目として大阪に関西オフィスを開設 |
マッキンゼーは、科学的かつ客観的な事実にもとづき経営課題を分析するアプローチを世界で初めて確立し、経営コンサルティングという分野を切り拓いた業界のパイオニアです。
「To help create positive, enduring change in the world(世界に創造的かつ持続的な変化を生み出す後押しをする。)」をパーパスとして掲げ、単なる短期的な業績改善ではなく、クライアントや社会全体に長期的なポジティブな影響を与えることを目指しています。
事業内容・強み
マッキンゼーが提供するコンサルティングサービスは、「CEOエクセレンス」「マッキンゼー・デジタル」「RTS(企業変革・企業再生)」の3つが中核となっています。
CEOエクセレンスでは、グローバル企業のトップが抱える複雑な経営課題に対し、戦略策定や組織改革といった観点から包括的なソリューションを提供しています。
マッキンゼー・デジタルは、日本の「失われた30年」を取り戻すという使命のもと、単なるIT導入にとどまらず、デジタル変革を通じた事業モデルの再構築や新たな価値創造までを一貫してサポートする点が特徴です。
RTSは、企業変革や事業再生に特化した特別ユニットで、短期間に集中して大規模な企業変革や事業再生を成功させるため、変革目標の策定から実行完了まで一気通貫で支援し、大幅な業績改善を実現します。
また、同社の強みは「One Firm Policy」のもと、全世界の知見と人材を一つのプロジェクトに結集させられる組織力です。国境や部門の垣根を越え、課題解決に最適なチームを編成することで、クライアントに最高の価値を提供しています。また、創業以来培ってきたファクトベースの分析力も、同社を特徴づける要素の一つです。
関連記事:マッキンゼーは何がすごいのか?トップ戦略ファームの特徴を徹底解説
プロジェクト事例
マッキンゼーでのプロジェクト事例を紹介します。
アリアンツの保険事業変革支援
ドイツの保険大手アリアンツと協働し、激しい価格競争下にあった自動車保険事業の変革を支援しました。AIによる価格設定やデジタル自動化を導入し、幅広い顧客層へのアプローチを確立。市場成長率の2倍を超える契約増と高い収益性を両立させ、競争の激しい市場での持続的な成長を実現しました。
出典:McKinsey|Allianz drives end-to-end transformation for profitable growth and customer delight
アップルのリサイクル素材活用促進プロジェクト
アップルの2030年カーボンニュートラル達成に向け、リサイクル素材の活用拡大を支援しました。独自ツール「MineSpans」で世界の鉱山データを分析し、循環型素材の市場機会を特定。アップル製品のマグネットはほぼ100%リサイクルレアアースで製造されるなど、業界全体のサステナビリティ推進に貢献しました。
出典:McKinsey|How Apple is helping unearth a path toward increasing the global use of circular materials
エミレーツNBDのAI主導型組織変革
UAE最大級の銀行エミレーツNBDのAI主導型組織への変革を支援しました。同社はマッキンゼーのAI専門組織「QuantumBlack」と協働し、分散型データ基盤を構築しました。100以上のAIモデルを開発し、AI投資に対し5~7倍のリターン創出を目指す大規模なDXを推進しています。
出典:McKinsey|How a UAE bank transformed to lead with AI and advanced analytics
マッキンゼーの社風
世界中からトップ人材が集まるマッキンゼーの、リアルなカルチャーについて解説します。
「Up or Out」に代表される徹底した実力主義
マッキンゼーの社風を語る上で欠かせないのが、「Up or Out」に代表される徹底した実力主義です。同社では常に成長し続けることが求められ、一定期間内に次の役職へ昇進(Up)できなければ、ファームを去る(Out)という厳しい文化があります。
一方で、半期ごとに「SAR(セミ・アニュアル・レビュー)」と呼ばれる人事評価が行われ、年齢や在籍年数に関係なく、個人の成果と能力によって公正に処遇が決定されます。これは、成果を出せば誰にでも圧倒的なスピードで成長できる機会が与えられている環境とも言えます。常に高いパフォーマンスを求めるこの環境が、世界最高峰のプロフェッショナルファームとしての地位を確固たるものとしているのです。
多様性を尊重するインクルーシブなカルチャー
マッキンゼーには国籍、性別、専門分野などを問わず、多様なバックグラウンドをもつ人材が集まっており、多様性を尊重するインクルーシブなカルチャーが根付いています。
多様な視点が交わることで、より優れた結論が生まれるという信念のもと、異なる意見にも敬意をもって耳を傾け、建設的な議論を行うことが推奨されています。
実際に、LGBTQ+を支援する取り組みや女性の活躍推進にもグローバルで積極的に取り組んでおり、2024年末時点で全社員の45.9%を女性が占めるなど、具体的な成果にもつながっています。
フラットな組織とフィードバックの文化
役職に関わらず、誰もが率直に意見を交わすことができる風通しのよい社風も特徴です。新人コンサルタントであっても、パートナーに対して臆することなく自らの意見を述べ、議論に参加する文化があります。
また、「One Firm Policy」により、コンサルタントは所属オフィスに関係なく、産業別・機能別のグループに分かれて世界中のプロジェクトに関わります。これにより、知識や意見がグローバルで活発に共有され、組織全体として成長していく仕組みが構築されています。
マッキンゼーのキャリアパスと成長環境
マッキンゼーの入社後にどのようなキャリアを歩み、どのように成長していけるのかを具体的に解説します。
キャリアパス・仕事内容
マッキンゼーの役職別の仕事内容を表にまとめ、解説します。
| 役職 |
主な職務内容 |
| ビジネスアナリスト |
情報収集、データ分析、資料作成 |
| アソシエイト |
プロジェクトの特定領域を担当、仮説構築と検証、クライアントとの議論 |
| エンゲージメント・マネージャー |
プロジェクト全体の管理、クライアントとの関係構築、チームメンバーの育成 |
| アソシエイト・パートナー |
複数プロジェクトの統括、クライアントの経営層との関係構築 |
| パートナー/シニアパートナー |
ファームの経営、新規案件獲得 |
特定の業界や機能の専門性を深めるスペシャリストとしての道と、幅広い領域で活躍するジェネラリストとしての道があり、本人の希望に応じてキャリアを選択できます。
また、「組織の目標達成のために個人がある」のではなく、「個々人のキャリアゴールを支援するためにマッキンゼーが存在する」という「My Own McKinsey」の思想が根付いています。この文化が、社員一人ひとりの自律的なキャリア形成を可能にしているのです。
世界最高峰の人材育成・研修制度
マッキンゼーには、コンサルティング未経験者でもプロフェッショナルへと成長できる、世界最高水準の人材育成制度が整っています。
入社後の集合研修から始まり、各役職で求められるスキルに応じたグローバル標準のトレーニングプログラムや、語学研修やMBA留学への費用補助など、多数の制度が用意されています。
ポストコンサルタントのキャリア
マッキンゼーで培った経験は、様々な業界や職種で活かすことができるため、事業会社の経営層、ベンチャー企業の創業者、投資ファンドのプロフェッショナルなど、多様なキャリアが考えられます。
卒業生(アルムナイ)には著名人も多く、同社の出身者によるネットワークは「マッキンゼーマフィア」と呼ばれることもあります。これは、マッキンゼー出身者が各界で重要なポジションを占め、強固なネットワークを築いていることを示す言葉です。
- 南場智子氏(株式会社ディー・エヌ・エー 創業者)
- 安達保氏(株式会社ベネッセホールディングス元代表取締役会長CEO)
- 田中裕輔氏(株式会社ロコンド代表取締役)
- 谷村格氏(エムスリー株式会社代表取締役)
- 高島宏平氏(オイシックス・ラ・大地株式会社代表取締役)
激務は本当?マッキンゼーの働き方
「激務」のイメージが先行しがちなマッキンゼーのリアルな労働環境について解説します。
残業時間とワークライフバランスの実態
OpenWorkなどの口コミサイトによると、平均残業時間は月間70時間前後が目安とされています。一般的な企業と比較すると長時間労働と言えますが、クライアントが抱える経営の最重要課題に深くコミットするコンサルティング業界は、必然的に労働時間は長くなる傾向にあります。プロジェクトの山場では深夜や休日の稼働も発生することも少なくないため、プライベートとの両立は容易ではないかもしれません。
ただし、近年はファーム全体で働き方改革も進んでおり、以前よりは労働時間は改善傾向にあるとされています。
プロジェクトベースでの働き方
マッキンゼーでは、数カ月単位のプロジェクトにアサインされ、その期間中は業務に集中するワークスタイルが基本です。プロジェクトの合間には「Take Time」と呼ばれる5〜10週間の長期休暇を取得することが可能で、メリハリをつけた働き方が浸透しています。
また、プロフェッショナルとして成果さえ出していれば、日々の働き方は個人の裁量に委ねられる部分も大きいとされています。
マッキンゼーの年収・福利厚生
世界最高水準と言われる報酬と、それを支える福利厚生制度について解説します。
役職別の年収レンジ
マッキンゼーのコンサルタント職における、役職ごとの標準的な年収レンジは以下の通りです。
| 役職 |
勤務年数(目安) |
年収(目安) |
| ビジネスアナリスト |
1~3年目 |
600万円~900万円 |
| ジュニア・アソシエイト |
2~3年目 |
700万円~1,300万円 |
| アソシエイト |
3~5年目 |
1,000万円~1,500万円 |
| エンゲージメント・マネージャー |
5~7年目 |
1,600万円~2,200万円 |
| アソシエイト・パートナー |
8~10年目 |
2,000万円~3,000万円以上 |
| シニアパートナー |
10~20年目 |
5,000万円~ |
| パートナー |
20年〜 |
数億円~ |
関連記事:マッキンゼーの年収・給料は?転職難易度やリアルな働き方も紹介
実力主義が徹底されているため、20代で1,000万円以上の年収を得ることも可能です。
手厚い福利厚生制度
社員をサポートする福利厚生制度も充実しています。退職金制度や各種社会保険はもちろんのこと、健康診断やカウンセリングを含む健康サポートや語学研修やMBA留学支援など、社員が最高のパフォーマンスを発揮できるような環境が整えられています。
マッキンゼーの転職難易度と選考のポイント
世界最難関と言われるマッキンゼーへの転職を実現するためのポイントを、求める人物像や選考フローとあわせて解説します。
関連記事:マッキンゼーに転職するには?難易度や選考の流れと対策、注意点
コンサルティング業界最難関水準の転職難易度
マッキンゼーは、戦略コンサルティングファームの中でもトップの人気と難易度を誇ります。限られた採用枠に対して国内外のトップ大学・大学院、ビジネススクールの出身者や、他業界で顕著な実績をもつ優秀な応募者が殺到する上、コンサルタントとして極めて高度なスキルや資質が求められるため、付け焼き刃の対策では内定獲得は困難です。
ただし、必ずしもコンサルティング経験が必須というわけではありません。カルチャーへのフィットや、特定業界に対する深い知見、そして高度な論理的思考力やコミュニケーション力などコンサルタントとしてのポテンシャルをアピールできれば、未経験でも選考を通過できる可能性があります。
求める人物像
マッキンゼーが求めるのは、以下の能力や資質を高いレベルで兼ね備えた人材です。
- 複雑な課題の本質を見抜き、構造的に解決策を導き出す問題解決能力・論理的思考力
- 年齢や役職に関係なく、周囲を巻き込みチームを牽引するリーダーシップ・コミュニケーション力
- プレッシャーのかかる環境下でも、常に学び成長し続けられる姿勢
- ビジネスレベルの英語力
同社では、これらの能力をバランス良く備え、クライアントの重要課題解決に貢献できるプロ意識の高い人材が求められています。
ケース面接への対策は必須
マッキンゼーの選考を突破する上で、高いハードルとなるのが「ケース面接」です。ケース面接では、与えられた課題に対し、制限時間内に論理的な解決策を提示する必要があります。
回答の正しさそのものよりも、結論に至るまでの思考プロセスやコミュニケーション力、発想力などが評価されるため、問題集や模擬面接などを通じて日頃から論理的思考力を鍛えておくことが重要です。
ただし、ケース面接は選考プロセスの1つに過ぎないため、書類選考や通常の面接の対策を怠ると選考通過は難しくなります。内定を獲得するためには、総合的な対策が必要です。
戦略コンサルティングファームへの転職に強い転職エージェントを活用しよう
戦略コンサルティングファームへの転職を成功させるためには、ファームの強みやカルチャーなどを深く理解した上で、一貫性のある転職理由を用意する必要があります。また、難易度の高い選考を突破するために、徹底した情報収集や面接対策も欠かせません。
しかし、他の応募者との差別化につながるようなアピールをするためには、選考対策における専門的な知識が必須。そこで活用したいのが、コンサルティングファームへの転職支援実績が豊富な転職エージェントです。
タイグロンパートナーズは、年収1,000万円以上のハイクラス・プロフェッショナル求人に特化し、コンサルティングファームへの転職支援にも豊富な実績があります。あなたのキャリアを次のステージへ引き上げるために、他社とは一線を画す質の高いサポートを提供していますので、ぜひタイグロンパートナーズの転職・キャリア相談にお申し込みください。