役員は、企業の経営方針や重要な意思決定に直接関わるポジションです。その責任の大きさから、転職市場では「役員の転職は難しい」と言われることも少なくありません。役員クラスの求人は大半が非公開であり、経営判断力やマネジメントの実績など、選考で問われる水準も高く、一般的な転職とは進め方が大きく異なります。
一方で、役員としての経験やリーダーシップを求めている企業は多く、経営人材が力を発揮できる場は着実に増えています。入念な準備を行い、自分に合ったポジションを見極めることができれば、これまでの経験を武器に新たなキャリアを切り拓くことは十分に可能です。
本記事では、役員が転職を考える主な理由や転職が難しいとされる背景を整理したうえで、取締役の競業避止義務をはじめとする法的制限の有無、そして転職を成功に導く7つの具体的な戦略を解説します。
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役員が転職を考える主な理由
役員が転職を決断する背景にはどのような理由があるのか、代表的な5つのパターンを解説します。
キャリアアップの限界を感じている
現職でこれ以上の役割拡大やポジションアップが見込めないと感じたとき、外部にキャリアの可能性を求めるケースがあります。たとえば、常務取締役として成果を上げてきたものの、社長への登用が社内の序列や創業家の意向によって事実上閉ざされているような状況です。
こうした場合、自身の経営スキルをより大きな事業規模で試したいという意欲が転職の原動力になります。現職にやりがいを感じていたとしても、中長期的なキャリアの天井が見えた段階で選択肢を広げておくことは、決して後ろ向きな判断ではありません。
経営方針が合わない
経営者の交代や市場環境の変化をきっかけに、会社の方向性と自身の経営理念にズレが生じることがあります。取締役会での意見対立が常態化し、自分が目指す経営のあり方との溝が深まれば、持ち味を十分に活かしにくくなるでしょう。
経営方針をめぐる相違は、個人の努力だけでは解消しにくい構造的な問題です。無理に合わせ続ければ企業全体のパフォーマンスにも影響しかねないため、自身と企業の双方にとってより良い道を模索した結果として、転職という選択肢が浮上することがあります。
新たなキャリアに挑戦したい
役員としての職務をひと通りやり遂げた達成感から、まったく異なるフィールドに身を置きたいと考えるケースは珍しくありません。大企業の役員からスタートアップのCxOへの転身、異業界でのプロ経営者への挑戦、あるいは現場に近い立場で社員と直接課題に取り組む働き方への回帰など、目指す方向性は人によって大きく異なります。
特に40代後半から50代前半は「残りのキャリアで何を成し遂げたいか」を見つめ直す時期と重なりやすく、これまでの経験を別の形で活かしたいという思いが転職を後押しするケースがあります。
人間関係の悪化やストレスの蓄積
経営陣内の派閥争いやオーナー社長との方向性の相違など、人間関係の問題が転職の引き金になることもあります。また、重大な意思決定を連続で担うプレッシャーの蓄積が、心身の疲弊につながるケースも珍しくありません。
特に中小企業やオーナー企業では、社長個人の意向が経営判断に色濃く反映されるため、役員であっても自身の裁量を発揮しにくいと感じる場面はあるでしょう。こうしたストレスが限界に達したとき、より風通しの良い意思決定環境を求めて転職を決断するケースがあります。
ヘッドハンティングを受けた
エグゼクティブサーチやヘッドハンターからのスカウトをきっかけに転職を検討し始める人もいます。役員としての実績や専門性が市場で高く評価されている人材ほど、転職を打診される機会は多くなる傾向があります。
現職に大きな不満がなくても、提示されたポジションの経営裁量の大きさや報酬条件に魅力を感じ、転職に踏み切る役員も少なくありません。
役員転職が難しいとされる理由
役員転職には、一般的な転職とは異なるハードルが複数存在します。
求められるスキル・経験のレベルが高い
役員は企業経営の中枢を担うポジションであり、採用にあたってはスキルが多面的に評価されます。マネジメントの実績はもちろん、財務・会計の知識、事業戦略の立案力、IT・DXへの理解、グローバル経営の経験など、幅広い領域にわたる能力が必要です。
また、スキルが求人要件に合致しているだけでは不十分であり、選考においてはカルチャーフィットなども厳しくチェックされます。ここ数年はコーポレートガバナンス強化の流れもあり、スキルマトリックス(事業戦略、財務・会計、IT・DX、グローバル経営、法務・コンプライアンスなどの領域を一覧化したもの)を用いて取締役候補を評価する企業も増えてきました。自身の強み・弱みを客観的に把握しておくと、応募先の選定や面接での訴求ポイントが明確になるでしょう。
既存の経営陣・社員との関係構築が難しい
外部から役員として入社する場合、すでに形成されている経営チームや組織文化に短期間で溶け込む必要があります。しかし、生え抜きの役員や長年在籍する社員のなかには、外部出身者に対して警戒感や抵抗感を抱く人もいるでしょう。
早期に信頼を勝ち取りながら成果を出していくには、既存メンバーの意見に耳を傾けつつ、小さな成功体験を積み重ねるアプローチが重要です。この関係構築の難しさが、役員転職のハードルを一段と高くしている要因の一つと言えるでしょう。
求人を見つけにくい
役員クラスのポジションは、大半が非公開求人として扱われます。役員の退任や交代に関する情報が外部に漏れると、従業員の動揺や取引先の不安を招くおそれがあるためです。
一般的な転職サイトにはほとんど掲載されないため、そもそも求人情報を入手すること自体が難しい場合もあるでしょう。役員転職を検討する際は、経営人材・CxO領域に精通した転職エージェント・エグゼクティブサーチとの関係構築が不可欠と言えます。
役員(取締役)の転職に法的制限はある?
役員転職に関する法的な制約の有無と、トラブルを避けるために確認しておくべき事項を整理します。
役員にも職業選択の自由がある
役員の転職を一律に禁止する法律は存在しません。日本国憲法第22条第1項では、すべての国民に職業選択の自由が保障されており、役員であっても退職後の転職は原則として自由です。
会社法第356条では、取締役の在任中の行動を規制する規定が設けられています。しかし、取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引を行う場合に、取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)の承認を得なければならないというルールであり、退任後の転職を直接制限するものではありません。したがって、退任した役員が新たな職に就くこと自体は、法律上問題ないと言えます。
出典:e-Gov 法令検索|会社法
競業避止義務はどこまで有効か
就任時や退任時に締結した契約書・委任契約書・誓約書のなかに競業避止条項が含まれている場合は、転職に一定の制限がかかる可能性があります。
退任後の競業避止義務が法的に有効かどうかは、制限の期間、地域的な範囲、対象となる職種・業界の範囲、代償措置(退職金の上乗せなど)の有無などを総合的に考慮して判断される傾向があります。
制限期間については1〜3年程度が妥当とされるケースが多く、合理性を欠く過度な制限は無効と判断されるケースが多いようです。
なお、競業避止に関する合意がない場合でも、退任した取締役には不正競争防止法にもとづく営業秘密の保持義務が残ります。在任中に知り得た営業秘密を持ち出して転職先で利用する行為は、法的リスクが極めて高い点に留意してください。
出典:e-Gov 法令検索|不正競争防止法
トラブルを避けるために確認すべきこと
法的なトラブルを未然に防ぐために、転職活動を始める際は役員就任時に締結した契約書・委任契約書・誓約書の内容をあらためて確認しましょう。
契約条項の解釈や有効期間の判断に不安がある場合は、訴訟リスクを避けるためにも弁護士への相談を検討することをおすすめします。
役員転職を成功させるためのポイント7つ
役員転職を成功させるには、戦略的な準備が必要です。ここでは、具体的なアクションを7つのポイントに整理して解説します。
1.役員に求められる経歴・スキルを理解する
まず押さえておきたいのは、企業が候補者にどのような能力を期待しているかを正しく把握することです。採用側の目線を理解しないまま選考に臨んでも、自分の強みを効果的にアピールすることはできません。
役員に求められるスキルは幅広く、経営判断力やマネジメント実績に加えて、戦略を描く力、組織を動かすリーダーシップ、社内外の関係者と連携するコミュニケーション力などが問われます。
選考では、こうした要素を踏まえて「自分はどの領域で即戦力になれるのか」を明確に伝えられるかどうかが内定獲得に直結します。
CxOの各役職が担う役割やスキル要件については、以下の記事もあわせてご確認ください。
関連記事:CxOとは?各役職の役割やCxO人材に必要なスキル・キャリアパスを徹底解説
2.自身の強みや市場価値を把握する
自身に合ったポジションを見極め、選考で他の候補者との差別化につながるアピールをするために、キャリアの棚卸しをしておきましょう。これまでの実績を「何を」「どれくらいの規模で」「どのような成果につなげたか」という視点で整理するのがポイントです。事業の立ち上げや再建、P/Lの改善、大規模な組織改革、M&Aの推進といった経営に直結する成果は、選考で特に重視されるため、数字を交えて語れるようにしておきましょう。
ただし、自身の成果を客観的に整理し、言語化するのは難しい場合もあります。経営人材の転職支援に精通した転職エージェントを活用し、フィードバックを受けるのも一つの方法です。
経営人材に必要なスキルや資質の全体像を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:経営人材とは?種類や仕事内容、必要なスキルを解説
3.役員報酬やポジションに固執しない
報酬やポジションにこだわりすぎると、選択肢を自ら狭めてしまう場合があります。
例えば、役員報酬は以下のように企業規模によって大きく異なるため、現職と同じ水準を前提にすると候補先がかなり限られてしまう可能性があります。
|
500人以上1,000人未満 |
1,000人以上3,000人未満 |
3,000人以上 |
| 社長 |
4,226万円 |
5,276万円 |
8,603万円 |
| 副社長 |
3,511万円 |
3,948万円 |
6,009万円 |
| 専務 |
2,543万円 |
3,344万円 |
4,545万円 |
| 常務 |
2,154万円 |
2,464万円 |
3,355万円 |
| 専任取締役 |
1,837万円 |
2,100万円 |
2,991万円 |
出典:人事院「令和5年度 民間企業における役員報酬(給与)調査」
スタートアップやベンチャー企業の場合、ベース年収は大企業より低い傾向がありますが、ストックオプションやインセンティブを通じて中長期的に大きなリターンを得られる可能性もあります。目先の報酬・ポジションだけではなく、企業の成長ポテンシャルや裁量の大きさなども含めて総合的に判断するのが重要です。
4.円満退職を目指す
役員の退職は会社全体に与える影響が大きく、進め方次第では前職との関係だけでなく、業界内での信用にも響きかねません。
取締役は原則2年、監査役は原則4年の任期が定められており、途中で辞任すると後任選定や経営体制に支障をきたす可能性があります。どうしても任期中に退職する場合は、企業側と十分に話し合い、引き継ぎを丁寧に行ったうえで合意を得る必要があります。
また、転職活動をしている事実が社内に漏れると従業員の動揺や取引先の不安を招きかねないため、信頼できるエージェントを介して秘匿性を保ちながら進めましょう。転職先の公表タイミングにも配慮し、前職と良好な関係を保つことが、結果として自身のキャリアを守ることにつながります。
5.企業のカルチャーや経営陣との相性を確認する
スキルや経験が十分であっても、経営陣との価値観やカルチャーが合わなければ、入社後に力を発揮するのは難しくなります。転職先を検討する際は、経営理念や意思決定のスタイル、変革に対する組織の許容度などを事前に調べておきましょう。選考の過程で社長や他の取締役と直接話す機会を持ち、価値観や経営スタイルの相性を確認できれば、ミスマッチを減らせます。
ただし、口コミサイトの情報だけで判断するのは避けた方がよいでしょう。業界内の知人や転職エージェントを通じて、経営陣の人柄や社内の雰囲気について情報収集しておくことをおすすめします。
6.中小企業・ベンチャー企業への転職も検討する
大企業の役員ポジションは社内昇進で埋まるケースが多く、外部からの採用枠は基本的に少ない傾向があります。選択肢を広げたい場合は、中小企業やベンチャー企業への転職も視野に入れましょう。
中小企業やベンチャー企業では、経営体制の強化や事業拡大のために外部から経営人材を迎え入れたいというニーズが高い傾向にあります。役員の経験がなくても、特定の業界で際立った実績を持っている人材や、専門性の高い領域で成果を上げてきた人材であれば、役員として登用される可能性も十分にあります。
また、組織規模が小さいぶん、経営への関与度や意思決定の裁量は大きく、事業を自分の手で動かしている手応えは感じやすいでしょう。
報酬面だけでなく、経営者としてどれだけ成長できるか、キャリアの幅をどう広げられるかという観点でも検討してみてください。プロ経営者としてのキャリアに関心のある方は、以下の記事も参考にしてみましょう。
関連記事:プロ経営者になるにはどうすればいい?必要な資質・スキルやキャリア戦略を徹底解説
7.役員転職の実績が豊富な転職エージェントを活用する
役員ポジションへの転職を目指す場合は、経営人材・CxO領域の転職支援実績が豊富な転職エージェントを活用しましょう。
役員ポジションの求人は、一般的な転職サイトに公開されることが少なく、求人情報の入手自体が難しいケースもあります。また、転職先の経営課題や経営陣の人柄といった内部情報はWeb上に出回ることは少なく、選考対策においては専門的な知識が必要とされる場面も多いため、ご自身だけの力で内定獲得を目指すのは難しいでしょう。
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