シンクタンクは、社会課題の調査・研究や政策提言を行う機関として、日本の政策形成や企業の経営戦略に大きな影響を与えてきました。国や社会の根幹をなす制度設計や政策立案に直接関与できる点は、シンクタンクで働く大きな魅力です。
本記事では、シンクタンクの具体的な仕事内容、働き方やキャリアパス、転職を成功させるためのポイントを詳しく解説します。
シンクタンクとは?
シンクタンクとは、政治、経済、社会、科学技術といった幅広い分野に関する調査・研究を行い、その成果をもとに政策提言や企業の戦略立案などを支援する専門機関です。「頭脳集団」と称されることもあり、客観的な立場から専門的な知見を提供する役割を担っています。
シンクタンクの歴史
シンクタンクの起源として、20世紀初頭のイギリスで設立された「フェビアン協会」や、アメリカの「ブルッキングス研究所」が挙げられます。これらの組織は、政府や民間企業から独立した立場で社会・経済問題に関する研究を行い、政策立案に影響を与えることを目的としていました。
「シンクタンク(Think Tank)」という言葉は、第二次世界大戦中にアメリカの軍関係者が、作戦を練るための安全な場所を指す俗語として使用したことが語源とされています。戦後、この言葉が政策研究機関を指す呼称として定着し、世界中に同様の組織が設立されていきました。
日本では、1965年に日本初の本格的な民間総合シンクタンクとして野村総合研究所が設立されたことを皮切りに、多くのシンクタンクが誕生し、日本の経済成長と社会の発展に貢献しています。
シンクタンクの分類
日本のシンクタンクは設立母体や役割によって、大きく「政府系」と「民間系」の2つに分類できます。
政府系シンクタンクは、各省庁の附属機関として設置され、国の政策立案に直結する調査研究を主な役割としています。国際情勢やマクロ経済、外交・安全保障、社会保障といった、国の舵取りに関わる極めて公共性の高いテーマを扱う点が特徴です。
<代表的な政府系シンクタンク>
- 内閣府経済社会総合研究所
- 財務省財務総合政策研究所(PRI)
- 独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
- 防衛研究所(NIDS)
民間系シンクタンクは、金融機関や大手事業会社などを母体とする組織です。政府系シンクタンクと同様に官公庁向けの調査研究を行いながら、加えて民間企業の経営戦略立案や新規事業開発、さらにはITシステムの構築・運用といった、よりビジネスに近い領域のサービスを幅広く提供しています。
<代表的な民間系シンクタンク>
- 株式会社野村総合研究所(NRI)
- 株式会社日本総合研究所(JRI)
- みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社
- 株式会社三菱総合研究所(MRI)
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
関連記事:野村総研(NRI)とは?事業内容・社風・働き方・年収を徹底解説
コンサルティングファームとの違い
シンクタンクとコンサルティングファームの主な違いは以下の通りです。
| 項目 |
シンクタンク |
コンサルティングファーム |
| 目的 |
政策研究・提言 |
企業の経営課題解決 |
| クライアント |
政府・官公庁・自治体が中心 |
民間企業が中心 |
| 提供サービス |
受託調査にもとづく研究レポートの作成・提出 |
経営戦略立案、業務改革の実行支援 |
| 働き方 |
オフィスワークが中心 |
クライアント先への常駐も多い |
民間系シンクタンクと、コンサルティングファームの境界線は曖昧になりつつあります。例えば、野村総合研究所や三菱総合研究所など大手シンクタンクは、調査研究にとどまらず、経営コンサルティングやITソリューションの提供に注力しています。反対に、PwCコンサルティングが独自のシンクタンク部門「PwC Intelligence」を設立するなど、相互の領域に進出する動きも見られます。
関連記事:シンクタンクとコンサルの違いは?それぞれに向いている人と代表的企業
シンクタンクの役割・仕事内容
シンクタンクの業務は、伝統的な政策提言・調査研究から、経営コンサルティング、ITソリューションの提供まで多岐にわたります。特に民間系シンクタンクでは、調査研究で培った知見をベースに、クライアント企業の経営課題解決からシステム構築まで一貫して支援するケースが増えています。
政策提言・調査研究
政策提言・調査研究は、シンクタンクの原点ともいえる業務領域です。国や地方自治体からの委託を受け、少子高齢化、環境問題、地域活性化、エネルギー政策といった社会課題に対する調査・分析を行い、政策の方向性を提言します。
統計データの収集・分析、海外事例の調査、有識者へのヒアリング、シミュレーションモデルの構築などが業務の中心です。成果物は報告書や白書、政策提言書としてまとめられ、政府の審議会や国会での議論に活用されることもあります。
経営コンサルティング・戦略立案
多くの民間系シンクタンクでは、調査研究部門で培った高度な専門性やマクロな知見を活かし、民間企業に対する経営コンサルティングサービスを提供しています。
その内容は、一般的な戦略コンサルティングファームと同様に、クライアント企業の持続的な成長を支援するものです。例えば、中長期経営計画の策定、新規事業開発、M&A戦略、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進、サステナビリティ経営(ESG/SDGs)の導入支援など、経営層が抱える高度な課題に対応します。
シンクタンクならではの強みは、官公庁とのリレーションや政策動向に関する深い知見を、民間企業の戦略立案に活かせる点です。法改正や規制緩和といったマクロ環境の変化をいち早くとらえ、それを事業機会としてクライアントに提案できる点は、他のコンサルティングファームにはない独自の価値といえるでしょう。
ITソリューション・システム構築
政策提言や経営コンサルティングと並んで、シンクタンクの収益の柱となっているのがITソリューション・システム構築事業です。金融機関向けの基幹業務システムや官公庁向けの行政システムなど、ミッションクリティカルな領域を幅広くカバーしています。
調査・提言にとどまらず、それを具体的なシステムとして社会に実装するまでを一気通貫で手掛ける点が、単なる調査機関との大きな違いです。シンクタンクは、長年にわたる実績と技術力を背景に、日本の社会基盤を根底から支える重要な役割を担っています。
シンクタンクで働く3つの魅力
政策立案から経営戦略、ITソリューションまで幅広い領域で社会に貢献できるシンクタンクには、独自の魅力があります。
社会貢献度の高いプロジェクトに携われる
社会貢献性の高い業務に携われる点は、シンクタンクで働く魅力の一つです。一企業の利益を追求するだけでなく、国や社会全体が抱えるマクロな課題解決に貢献できます。
カーボンニュートラルや少子化対策、デジタル社会の実現といった国家的テーマに対し、調査・分析から政策提言まで一貫して携われるため、自らの仕事が社会を形作っている実感を得られるでしょう。
以下は、国内の5大シンクタンクが手掛ける公共性の高いプロジェクトの一例です。
| シンクタンク名 |
プロジェクト事例 |
| 野村総合研究所 |
テクノロジーマップの整備などに向けた調査研究事業(デジタル庁) |
| 日本総合研究所 |
ヘルスケア産業高度化推進事業(経済産業省) |
| みずほリサーチ&テクノロジーズ |
企業経営におけるDEI(ダイバーシティ&エクイティ&インクルージョン)の浸透や多様な人材の活躍に向けた調査事業(経済産業省) |
| 三菱総合研究所 |
令和7年度 フュージョンエネルギーの社会実装促進に向けた調査(内閣府) |
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング |
欧州諸国における少子化対策に係る会計検査に関する調査研究(会計検査院) |
多様な経験を通じて市場価値を高められる
調査・研究活動を通じて特定分野の専門的な知見を深められる点も、シンクタンクの魅力です。膨大な情報を整理・分析し、論理的な提言に落とし込むスキルは、コンサルティング業界だけでなく、事業会社の経営企画や役員ポジション、官公庁など、様々なフィールドで高く評価されます。
また、日系シンクタンクには、外資系コンサルティングファームに見られるような「Up or Out(昇進か退職か)」の文化ではないのが一般的です。そのため、長期的に腰を据えて研究や業務に打ち込める環境が整っており、専門性を磨きたい人にとって魅力的な環境と言えます。
高年収が期待できる
シンクタンクの業務は、社会や経済に対する深い洞察やデータ分析など、高度な専門性を要します。そのため、一般企業と比較して高年収を期待できる点が魅力です。
以下は、5大シンクタンクの年収目安をまとめたものです。
※有価証券報告書、タイグロンパートナーズ独自の調査をもとに作成
出典:株式会社野村総合研究所|2025年3月期(第60期)有価証券報告書
出典:株式会社三菱総合研究所|2025年9月期(第56期)有価証券報告書
日系のシンクタンクは年功序列の給与体系をベースにしていることが多く、短期的に見れば戦略コンサルティングファームのような年収は望みにくいかもしれません。しかし、その分、安定的に昇給が見込めるという側面もあります。
評価制度に成果主義を導入するシンクタンクも増えており、高い専門性を持つ人材やプロジェクトで大きな成果を上げた人材は、年齢に関わらず高い報酬を得ることも可能です。
関連記事:野村総合研究所(NRI)の平均年収は?年齢別の年収や高年収の理由を解説
シンクタンクの働き方・キャリアパス
高い専門性が求められるシンクタンクでは、どのような働き方が可能で、将来的にどのようなステップアップが期待できるのでしょうか。口コミサイトの情報などをもとに、シンクタンクにおける働き方やキャリアパスを紐解いていきます。
主要シンクタンクの平均残業時間
担当するプロジェクトや部署によって異なりますが、シンクタンクでは働き方改革の推進により、労働環境の改善が進んでいます。
以下は、5大シンクタンクの平均残業時間を口コミサイトの情報をもとにまとめた表です。
| 会社名 |
平均残業時間 |
| みずほリサーチ&テクノロジーズ |
33.0時間 |
| 日本総合研究所 |
36.9時間 |
| 三菱総合研究所 |
40.5時間 |
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC) |
42.2時間 |
| 野村総合研究所 |
45.3時間 |
※OpenWorkなどの口コミサイトをもとに作成(2025年12月19日時点)
戦略コンサルティングファームの平均残業時間(例:マッキンゼー・アンド・カンパニー75.8時間、ボストン コンサルティング グループ69.3時間)と比較すると、シンクタンクの残業時間は総じて短い傾向にあります。
プロジェクトの繁忙期や納期前には業務が集中することもありますが、休暇は比較的取得しやすく、オンとオフのメリハリをつけた働き方が可能です。
一般的なキャリアパス
シンクタンクでは、専門性を深めながら段階的に役割を広げていくのが一般的です。
研究員・アソシエイト
キャリアの初期段階では、プロジェクトのメンバーとして、データ収集や統計分析、報告書の作成など、基礎的な実務を担います。上位研究員の指導を受けながら、小規模なプロジェクトの補佐として、政策・経済・地域振興・企業戦略といった複数のテーマに関与し、研究員としての土台を築いていきます。
主任研究員・プロジェクトマネージャー
プロジェクトの中核を担うリーダーとして、チーム全体を統括し、複数の研究員を率いる役割を担います。研究テーマの選定やプロジェクトの進行管理、外部の専門家や行政機関との調整といったマネジメント業務を主体的に行い、担当プロジェクトを成功に導きます。
主席研究員・シニアフェロー
特定領域における第一人者として、組織の顔となる存在です。組織の中核として意思決定に関与し、その深い知見をもって政府の政策形成や企業の経営戦略へ直接的な助言を行います。担当分野のテーマ設定やプロジェクトの配分、外部機関との共同研究を主導することで、ファーム全体の研究活動を牽引していきます。
多くのシンクタンクでは、マネジメント職だけでなく、専門性を追求し続ける専門職としてのキャリアパスも用意されており、自身の志向に合わせたキャリアを構築できます。
シンクタンク転職のポイント
入社難易度の高いシンクタンクへ転職するためには、選考の特徴を理解した上で、戦略的に準備を進める必要があります。
選考における学歴や資格の重要性
シンクタンクの採用において、学歴は必須要件ではありません。しかし、結果として高学歴の人材が多く採用される傾向にあるのは事実です。
その理由として、シンクタンクの業務には膨大な文献や統計データを読み解き、論理的に整理して提言にまとめる能力が求められる点が挙げられます。大学院での研究経験や論文執筆の経験を持つ人材は、こうしたスキルを身につけているケースが多く、選考で評価されやすい傾向があります。
資格については、特定の資格が採用の必須条件となることは稀です。ただし、大学院修士号やMBAといった学位、公認会計士など難関資格は、専門性の証明として評価される場合があります。
必要なスキル・経験
シンクタンクへの転職で求められるスキル・経験は、大きく以下の4つに分類されます。
1つ目は、高い論理的思考力とドキュメンテーション能力です。複雑な社会課題や経営課題を構造的に整理し、クライアントにわかりやすく伝える力が必要とされます。
2つ目は、特定分野への深い知見やデータ分析スキルです。エネルギー、医療・ヘルスケア、金融、サステナビリティ、地域振興など、シンクタンクが扱うテーマは多岐にわたります。特定分野での実務経験や研究経験を持つ人材は即戦力として評価されやすいでしょう。
3つ目は、関連する業界での実務経験です。金融機関での勤務経験、事業会社の経営企画部門での経験、官公庁や自治体での政策立案経験などは、シンクタンクの業務と親和性が高く評価されやすい傾向にあります。
4つ目は、英語力です。海外事例の調査や国際機関との連携、グローバル企業へのコンサルティングなど、英語を使用する場面は少なくありません。ビジネスレベルの英語力があれば、担当できるプロジェクトの幅が広がります。
シンクタンクに向いている人の特徴
シンクタンクで活躍できる人材には、いくつかの共通した特徴があります。
知的好奇心・探究心を持つ人
シンクタンクの仕事の根幹は、地道な調査と分析です。短期的な成果だけを求めるのではなく、複雑な事象の背景や構造を粘り強く解明していくプロセスそのものを楽しめるような、強い知的好奇心や探求心を持つ人が向いています。
視座の高さ
目先の利益や一企業の都合にとらわれず、10年後、20年後の社会がどうあるべきかというマクロな視点や、社会全体をより良くしたいという高い問題意識が、質の高い提言につながります。
論理的思考力やコミュニケーション力
複雑な情報を整理し、問題の構造を明らかにし、説得力のある結論を導き出す論理的思考力は、コンサルタントに不可欠な基本スキルです。また、多様な専門性を持つ研究員や、様々な立場のクライアント、官公庁の担当者などと円滑に議論を進めるための高いコミュニケーション能力も必要です。チームワークを大切にし、異なる意見を尊重しながら成果を出せる人材が求められています。
シンクタンクの選考フロー
シンクタンクの中途採用は、一般的に以下の流れで進みます。
- 書類選考
- 適性検査
- 面接(2〜3回)
選考では、シンクタンクへの転職理由を明確に言語化するとともに、自身の経験がどの領域で活かせるのかを具体的に示すことが重要です。
また、シンクタンクやポジションによっては、志望動機や職務経験を問う一般的な質疑応答に加えて「ケース面接」が実施されることがあります。ケース面接では、与えられた課題に対して論理的に解決策を導き出すプロセスが評価されます。過去の選考事例を研究し、模擬ケース面接などで練習しておくとよいでしょう。より詳細な選考対策については、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:未経験からシンクタンクに転職できる?難易度や年収などを徹底解説
シンクタンクの選考対策には転職エージェントを活用しよう
DX推進やサステナビリティといった社会的な要請を背景に、シンクタンクも未経験者を含む多様な人材を採用するようになっています。しかし、高い専門性と論理的思考力が求められる選考を突破するためには、戦略的な対策が欠かせません。
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