コンサルティングファームの一般的なキャリアは、アナリスト、コンサルタント、マネジャー、プリンシパル、パートナーという5つの段階に分かれています。昇進には3〜5年の期間制約があり、期間内に上がれなければ退職を求められる「Up or Out」の仕組みがあります。定年まで勤める人は入社者の1%に満たないとされ、多くが数年で次のキャリアへ進みます。
本記事では、各役職に求められる役割と昇進の条件、専門性を高めるコースや出向・兼業といった複線化するキャリアパス、事業会社・スタートアップ・投資ファンドなどファームを離れた後の主な進路を解説します。

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コンサルの役職と「Up or Out」
ここでは、コンサルティングファームでのキャリアトラックについて紹介していきます。キャリアトラックを紹介する上で、コンサルティングファームの組織構造についても、軽く触れておきましょう。
戦略ファームの場合は、パートナー(共同経営者)1人に対して、それ以下のメンバーが5~10人というのが一般的な体制となります。
また別の見方をすると、1人のパートナーが2~3人のマネジャーを管理し、さらに各マネジャーが2~3人のメンバーを管理するというのが、最も基本的な構造になります。そして、パートナーの人数が増えるのに比例して、ピラミッド全体も大きくなり、その中の階層も増えていく構図にあります。
ただし、階層が増えるのはピラミッドの上層の方で、例えばBCGでは、パートナーの中でも、さらに7階級あるとされます。一方、ピラミッドの下層の方は、どのファームもだいたい同じ階層になっていて、マネジャー層・メンバー層それぞれ2段階に分けて、パートナーまで4階級あることが多いです。
各ランクの呼び方は、ファームによって多少の差はありますが、「①アナリスト→②コンサルタント→③マネジャー→④プリンシパル→⑤パートナー」というのが一般的です。それぞれ順番に紹介していきましょう。
①アナリスト
アナリストは、新卒や中途(未経験)で入社した場合の最初のポジションになります。まだ「見習いコンサルタント」の位置づけで、マネジャーやコンサルタントの下について、指示を受けた「タスク(作業)」を確実にやり遂げることが求められます。
ひと通りの仕事を覚え、1人で担当パートを完遂(=自走)できるようになると、次のコンサルタントに昇進します。
②コンサルタント
その名の通り、「1人前のコンサルタント」として、プロジェクトの中心的な役割を担います。必要に応じてマネジャーの助けを借りながら、時にはアナリストの面倒も見ながら、プロジェクトの大事なモジュールを受け持ち、自らの責任においてクライアントに「バリュー(付加価値)」を提供することが求められます。
複数のメンバーをマネージしながら、クライアントに安定的に価値を届けられるようになると、次のマネジャーに昇進します。
③マネジャー
ここからは管理職になり、事業会社でいうと「課長」のようなポジションになります。プロジェクトにおいては、オーケストラの指揮者のように、全体を見渡せる場所から、パートナーやメンバーを動かして、クライアントへの提供価値をコーディネートします。
同時に、メンバー育成にも責任を持ち、メンターやキャリアアドバイザーとしての役割も加わります。また、この時期から特定の業界やテーマに関する専門性を磨くことも求められ、「プラクティス」と呼ばれる専門グループにも所属するようになります。
既存クライアントからの〝ご指名〟でフォロー契約を獲得したり、新規クライアントへの提案活動に貢献できるようになったりすると、次のプリンシパルに昇進します。
④プリンシパル
事業会社でいうと「部長」のようなポジションになり、所属する部門(プラクティス)の成長に向けた貢献が求められ、ファームによっては個人の売上目標を課せられるところもあります。複数のプロジェクトのマネジャーロールを担いつつ、同時に営業活動でも成果を出すことが求められる、もしかしたら一番タフな時期かもしれません。
営業では、複数のクライアントと継続的な関係を築いて、一定の売上目標をクリアし、社内でも360度評価の結果などでファームの経営者としての資質が認められると、次のパートナー候補にノミネートされます。
⑤パートナー
事業会社でいうと「執行役員」のようなポジションになり、グローバルでの承認を経て就任します。クライアントの伴走者(パートナー)として経営者の悩みに寄り添う役割と、コンサルティングファームの共同経営者(パートナー)として経営そのものを担う役割の、二足の草鞋を履くことになります。後者の役割については、マネージング・ディレクター(MD)と呼ぶファームもあり、例えばBCGでは、2つの役割を合わせた「マネージング・ディレクター&パートナー(MDP)」という役職名になっています。
そこから先には、「シニア」という冠がついたり(「上級執行役員」のようなイメージ)、プラクティス全体を統括する役割が付加されたり(「常務」や「専務」のようなイメージ)、グローバルのボードメンバーになったり(「取締役」のイメージ)、という階段が続いています。
これらの階段を上る際には、それぞれ制限時間があり、3~5年の間に次のランクへと進めなければ、「昇進ウィンドウ」が閉じる(=退職勧告をされる)ことになります。
これが、いわゆる「Up or Out」の仕組みであり、ファームに在籍している間は、常にこの「昇進時計(プロモーションクロック)」が回っている状態にあります。
逆に早い人だと、3年おきにトントン拍子で昇進していくので、新卒で入社すると、20代でマネジャー、30代でパートナーというのもよくある環境です。そのため、コンサルティングファームは、「ドッグイヤー(犬の1年間は人間の7年分に相当)」や「精神と時の部屋(『ドラゴンボール』に登場する1日で1年分の修行ができる部屋)」などと言われることもあります。
複線化するコンサルのキャリアパス
前段で、コンサルティングファームの本流ともいえる「1本線のキャリアパス」について紹介してきました。その過程では、様々なプロジェクトを経験し、幅広い知見を携える「ジェネラリスト」としての側面と、徐々に注力領域を絞り込み、専門的な知見を深める「スペシャリスト」としての側面を兼ね備えて、「T型」人材へと育っていきます。
一方でコンサルタントの中には、早くから専門領域を定めて、特定の業界やテーマを究める、「I型」キャリアを志向する人もいます。こうした人に向けては、「エキスパートキャリアトラック(ECT)」という「Up or Out」が適用されないパスも用意されています。その目指す先は、クライアントに寄り添う「パートナー」ではなく、専門領域を統括する「ディレクター」と呼ばれるポジションとなることが多いです。
このキャリアパスには、別の役割もあります。ファームの規模を拡大しようとする際、厳格に「Up or Out」を適用し、次々にアウトにしてしまうと、成長スピードにブレーキがかかってしまいます。そのため、「ECT」は人材確保のための「受け皿(迂回ルート)」としても機能しています。
最近では、デジタル領域のエキスパートなど、入社時点から「I型」の人材も積極的に採用しており、〝トラディショナル〟コンサルタントとエキスパートの混成チームで支援するプロジェクトも増えてきています。
また、コンサルティングファームは、「人」が唯一とも言える商品であり資産なので、優秀なタレントに長く活躍してもらうために、様々な支援制度を用意しています。ライフステージに合わせた産休・育休制度をはじめ、通常のコンサルティング以外の経験を積む機会も、各社それぞれ充実させています。
よく使われるのは、語学留学や海外MBA取得の支援制度で、ファームに在籍しながら、昇進時計を一旦止めて、スキルアップを図ることが可能です。あるいは、グローバル連携が密なファームでは、海外オフィスへのトランスファー制度も頻繁に活用されています。
また、クライアント企業への「出向」を、積極的に後押ししているファームもあります。新卒あがりのコンサルタントは、「事業経験がない」というコンプレックスを抱えがちなので、その解消にも一役買っています。「出向」なので、給料はファームの持ち出しにはなりますが、クライアントの内部情報を知ることができ、そこから新しいプロジェクトにつながることもあるので、結果的にビジネス観点でも〝ペイ〟していると考えられます。
最近は一部のファームでは(弊社もその1つですが)、「50%社員」を認めているところもあります。当然ながら、他のファームとの兼業や、クライアントとコンフリクトのある業務に携わるのはご法度ですが、残り50%の時間を使い、大学で研究活動をしたり、家業を手伝ったり、自身の事業を立ち上げたりすることを、場合によっては奨励しています。
そこで経験したことが、本業のコンサルティング業務に活かせることが、往々にしてあるからです。
コンサルティングファームの本流は、実は「1本線」の「モノカルチャー」な世界だったりもするのですが、足元ではこのように、多様な人材や働き方も包摂されるようになってきています。「複線」化するキャリアパスに、新たな「血」が合流し、BCGが掲げるような「多様性からの連帯」を、本当の意味で実現しうる土壌が整いつつあります。
多方面で活躍するコンサル出身者の転職先
ここまで見てきたように、どのファームも競い合って、多様なキャリアや柔軟な働き方、魅力的な報酬を用意してはいるものの、大半の人は遅かれ早かれ、どこかで退社(卒業)をします。実際のところ、定年まで勤めあげるのは、入社したうちの1%にも満たないのではないかと思います。
つまり、コンサルティングファームは、構成員が続々と入れ替わる「かりそめの場」であり、社会に人材を次々と輩出する「プラットフォーム」とも言えます。
それを象徴するものとして、「マッキンゼーマフィア」という言葉があります。最大の戦略ファームとして、100年近くにわたり業界トップに君臨してきたマッキンゼーは、卒業生(アルムナイ)の数もまた業界最多です。加えて、その卒業生のネットワークが、社会の各方面に影響力を及ぼしていることから、俗に「マフィア」と呼ばれています。
ちなみに、マッキンゼー出身の知人からも、マッキンゼーは「アルムナイファースト」の会社で、ファームはそのために存在し、採用の時点から将来的に社会で活躍しそうかという目線で見ている、という話を聞いたことがあります。
マッキンゼーに限らず、戦略ファームはいずれも、厳選採用をしているので、社内には個性的なタレントがあふれ、卒業後の進路もバラエティ豊かです。例えば、私のA・T・カーニーの同期には、『バチェラー・ジャパン』に出演し、本当に〝タレント〟になった人もいますし、BCGの同期には、小説家になった後に、都知事選に出馬した人もいます。
彼らは際立って特殊な例ですが、卒業後のよくある進路をいくつか紹介します。
最もオーソドックスなのは、事業会社への転職です。
コンサルティングを通じて様々な業界を経験する中で、より当事者として携わりたくなったという場合もあれば、ライフステージが変わる中で、よりサステナブルな働き方をしたくなったという場合もあります。よくあるポジションは、日本の大企業の経営企画、外資系企業の日本法人の事業開発、老舗オーナー企業の経営参謀、メガベンチャーの経営幹部などです。これらはいずれも、経済条件を大きく下げずに転職できる先になります。また、転職後にコンサルティングファームのクライアント側に回ることもあります。
最近増えているのは、スタートアップへの転職です。
会社の草創期から参画し、幹部ポジションとして事業の成長をリードしながら、最終的に新規株式上場(IPO)を目指すというのが、よくあるパターンです。ベースの給与が下がるのと引き換えに、生株やストックオプションをもらって、上場(または売却)時のキャピタルゲインを期待する、「ハイリスク・ハイリターン」な転職です。
よりハイリスクな選択肢として、自ら起業する人もいます。
背水の陣を敷き、100%事業に専念する場合もあれば、フリーコンサルタントや50%社員としてキャッシュを回しながら、並行して事業を育てていく場合もあります。
「コンサルティングと起業は全く別物で、コンサルタント出身の起業家は成功しない」と言われたりもしますが、そもそも起業は「多産多死モデル」である中で、コンサルタント出身者の成功確率は、世の中の平均と比べて圧倒的に高いように思います。
また、人気の転職先として、投資ファンドがあります。
前段でベインキャピタルやカーライルについて触れましたが、その日本チームは数十名程度の少数精鋭部隊で、投資銀行か戦略ファームの出身者しか採用しないという、さらに狭き門となっています。その分、よりハードな環境になりますが、戦略ファーム出身者にとっては、経済条件がアップするほぼ唯一の転職先かもしれません。
会社を「安く買って高く売る」ビジネスモデルゆえ、かつて「ハゲタカ」と揶揄された時期もありましたが、ファンドビジネスが成熟するに従い、利益の源泉が「金融スキーム」から「バリューアップ(経営改善)」へとシフトし、コンサルタント出身者が活躍する場面も増えてきています。近しいところでは、ファンドの投資先に飛び込み、「ハンズオン」で企業変革を主導する道を選ぶコンサルタントもいます。
しかしながら、結局のところ、他のコンサルティングファームへの移籍が、数としては一番多いかと思います。理由は人それぞれですが、コンサルティング業界の裾野が広がり、選択肢が増える中で、より自らの価値観とマッチし、個々人の〝想い〟の実現につながるプラットフォームを選べるようになったことも、追い風になっていると考えられます。
最後に付け加えると、コンサルティングファームはどこも、基本的には「出戻りOK」(むしろ大歓迎)です。そのため、どの道に進むにせよ、考え方によっては、ノーリスクでチャレンジができるという、とても恵まれた環境にあると言えます。
コンサルティングファームは歴史的には「Up or Out」によって人が入れ替わる業界であり、数年で次のキャリアへ進む方も少なくありません。転職先は事業会社、スタートアップ、投資ファンドと幅広く、出戻りが歓迎される点も特徴です。

A.T.カーニー・BCG出身の藤熊浩平氏による『コンサルティングビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を、コンサル転職をご検討中の方に無料でお届けしています。業界の歴史から主要ファーム、プロジェクトの進め方、キャリアまでを1冊で押さえられます。本記事はその一部を抜粋したものです。
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