コンサルティングファームで経験を積んだあと、次のキャリアとして事業会社を考える方は少なくありません。しかし、コンサルから事業会社への転職は、別のコンサルティングファームへ移る転職とは勝手が大きく異なります。
結論からいうと、ポストコンサル転職で事業会社を目指すなら、次のポイントを押さえておく必要があります。
- 受け入れ先は大手企業が中心で、ポジションの数は限られている
- 年収と役職が合いやすいのは、マネージャーからシニアマネージャー層
- 入社後に活躍できるかは、他部署を巻き込む「泥臭さ」を受け入れられるかで分かれる
- 求人はタイミング次第のため、早めに転職エージェントと接点を持っておく
今回、タイグロンパートナーズのコンサルタントである新山と野村に話を聞きました。新山は日系・外資系のエレクトロニクスメーカーやIT関連企業で15年以上エンジニアとして働き、システム開発のPMなどを経験したのち、現在はコンサル周りの転職支援を担当しています。野村は大手商社系メーカーなどで工場長や営業マネージャーを経験し、現在はコンサル・ポストコンサルを中心に、幅広い業界・職種の転職を支援しています。
事業会社で長く働いてきた2人の視点から、コンサル出身者が事業会社でどう評価され、入社後にどこでつまずきやすいのかを整理しました。
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コンサルから事業会社へ転職する人の割合と、事業会社を目指す理由
タイグロンパートナーズに届くコンサルティングファームの方からのご相談のうち、事業会社を希望する方は感覚値として2割ほどです。残りの8割ほどは、再び別のコンサルティングファームへ移る転職です。とくに、一度事業会社からコンサルに移った方が「もう一度事業会社に戻りたい」と相談に来られるケースが多い印象があります。
事業会社を目指す理由として多いのは、当事者として事業に関わりたいという思いです。コンサルタントは、クライアントの事業に第三者として関わる仕事です。「自分で事業を手がけたい」「手触り感のある仕事がしたい」と考えて、事業会社への転職を希望される方が多くいます。
転職先として多い業界と部門
コンサル出身者の転職希望先として多いのは、商社、一部の金融機関、製造業、サービス業などで、受け入れ先は大手企業が中心です。とくに、コンサルタントとして現在携わっているインダストリー(業界)に関連する企業を希望するケースが多く見られます。コンサルティングファームで一定の年収を得ている方は大手企業でなければ条件が合いにくいため、受け入れ先の数はかなり限られるのが現状です。
配属先は経営企画や事業企画のほか、DX戦略やシステム開発の部門へ移る方も一定数います。現在はコンサルティングファームがDXやITの領域まで幅広く手がけているため、DX・IT領域の経験を生かせる部門も転職先の候補に入ります。ただし、事業開発のような部門はそもそも多くの人員を必要としません。募集が出てもすぐに埋まってしまうことが多く、採用はタイミングに左右されやすいのが実情です。
さらに、年収レンジや、どのポジションで条件を合わせるかまで細かく詰めていくと、事業会社への転職には時間がかかります。「事業会社の経営企画なら、どこかが採用してくれるだろう」という感覚で動き出すと、現実とのギャップに戸惑うことになりかねません。
事業会社がコンサル出身者に期待すること
大手の事業会社がコンサル出身者に期待していることは、主に次の3つです。
1つ目は、コンサルに発注していた業務の内製化です。大手の事業会社はコンサルティングファームにプロジェクトを発注しているケースが多く、発注していた業務を社内で担えるようにしたいと考えています。
2つ目は、他社を巻き込むプロジェクトマネジメント力です。新しい事業を1つの会社だけでは実現できないケースが、いまは多く出てきています。ジョイントベンチャーをつくる、コンソーシアム(複数の企業による共同事業体)を組んで進めるといった場面では、他社を巻き込むプロジェクトの経験者が欲しいというニーズが生まれ、コンサル出身者に白羽の矢が立つことがあります。
3つ目は、市場の情報をもたらし、新しい一歩を踏み出す起爆剤となる役割です。コンサルティングファームは多くのクライアントと付き合いがあるため、マーケットに関する情報をよく知っています。コンサル出身者から新しい知見を得たいという期待が、大手の事業会社にはあると感じます。
ほかの事業会社で経営企画や事業企画を担ってきた人材は、どうしても1つの会社のなかでの経験が中心になりがちです。一方、コンサル出身者には、様々なクライアントやプロジェクトを通じて汎用性のあるハイレベルな経験を積み、外の知見を持ち込んで第三者の視点から網羅的に物事を見られるというイメージがあります。
役職別の現実:マネージャーが狙い目になる理由と年収のネック
事業会社への転職を考えているなら、マネージャーの段階で一度検討しておくほうがよいでしょう。年収と役職は、コンサルから事業会社への転職でネックになりやすいポイントです。実際に事業会社の経営企画や事業企画へ転職する方も、コンサルティングファームの役職でいうとジュニアクラスではなく、マネージャーかシニアマネージャーが多い傾向があります。
マネージャーは年収がかろうじて合う
マネージャークラスは、事業会社との年収がかろうじて合うケースが多い層です。一般的なコンサルティングファームでも大手でも、マネージャーであれば年収は1,000万円を少し超える程度が目安で、事業会社では課長か、さらに上のポジションでの採用になります。
ディレクター以上は年収が合いにくい
ディレクター以上になると、年収が合いにくくなります。いまの年収水準のまま移るには、事業会社で事業本部長クラス以上のポジションが必要になるためです。しかし、すでにいる事業本部長を退けてまで外から人を迎える会社はほとんどなく、実際には事業本部長の下につく形になって年収は下がってしまいます。
ディレクター以上の方が事業会社へ移るのは、年収を下げてでも転職先の事業に携わりたいという明確な意志がある場合に限られ、受け入れてくれる会社があるかどうかも見極める必要があります。
ジュニアクラスは「事業会社での経験がない人」と見られやすい
ジュニアクラスの場合、選考は一般的な中途採用とほとんど変わりません。プロジェクトマネジメントを数多く経験しているシニアコンサルタントであれば一定の評価の対象になりますが、マネジメント経験が少なければコンサルでの経験値はあまり考慮されず、「事業会社での経験もない人」として見られやすくなります。事業会社側が見ているのは、プロジェクトのP/L(損益)をどこまで見てきたか、チームビルディングの経験があるか、といった点だからです。
一方で、ジュニアクラスの方から「一度は事業会社で経営企画や事業企画をやりたい」というご相談は数多くいただきます。ただし、ポジションが出るタイミングや企業側の状況もあり、期待と現実のギャップが大きくなりやすいです。ジュニアクラスの方にとって最も重要なのは、自分が売り込むべきスキルや経験を引き出し、職務経歴書などでいかに際立たせておけるかでしょう。
入社後に活躍する人・苦戦する人の違い
コンサルと事業会社のギャップを理解したうえで入社した方ほど、入社後に成果を出しやすい傾向があります。マネージャーやシニアマネージャーの方はプレゼンが得意な方も多く、面接の選考自体はさほど厳しくならないケースが多いため、差が出るのは入社後です。
第三者として関わる作法が抜けないと苦戦しやすい
コンサルタントとして、クライアントに第三者的に関わる作法が身につきすぎていると、事業会社で活躍するのが難しくなることがあります。たとえば、入社してすぐに「既存のシステムに問題がある」「プロセスを変えなければならない」と、外から指摘する立場のまま動いてしまうと、社内で摩擦が起きやすくなります。
ハイパフォーマーとして活躍しているのは、まず現状をきちんと把握し、周りの人を巻き込みながら仕事を進められる人です。
転職エージェントに悩みを相談できる人は、事業会社で成果を出しやすい
事業会社で活躍できそうかどうかは、転職エージェントとの面談の段階で、ある程度わかることもあります。エージェントを業者のように扱う方もいれば、自分の悩みをさらけ出して率直に相談してくださる方もいて、事業会社でハイパフォーマーになりやすいのは後者の方だという印象です。
また、何でも知っているという構えで面談に臨むなど、相手と対等に向き合う姿勢が見えにくい場合は、入社後に周囲とぶつかってしまわないか気になることがあります。
事業会社で求められる「泥臭さ」とスコープへの向き合い方
事業会社では、他部署と調整しながら少しずつ物事を積み上げる泥臭さと、自分の業務範囲の外にある仕事も引き受ける姿勢が求められます。入社後に他部署との調整や業務範囲外の仕事を自分が引き受けられるかどうかを、事前に考えておくことが重要です。
他部署との権限調整や交渉を積み上げる
事業会社では、プロジェクトを進めるだけでは仕事が立ち行きません。事業でも企画でも、他部署と権限を調整し、交渉しながら巻き込んでいく場面が非常に多くあります。他部署を巻き込む覚悟がないまま入社し、思うように力を発揮できないという話を耳にすることは少なくありません。
「経営企画」「事業企画」という部署名にとらわれすぎるのも、よくありません。部署名のイメージだけで経営企画の仕事内容を決めつけて入社すると、入社後に苦しくなりがちです。
「スコープ外」という線引きは通用しない
事業会社で新しいことを始めようとすると、誰も担当しない仕事を誰かが担わなければなりません。極端に言えば、回ってくるのはジョブディスクリプション(職務内容を定めた記述書)に書かれていない仕事です。誰が拾うのかよくわからないボールを突然持たされることもあり、持たされた課題を解決してこそ評価される側面があります。
実際に、コンサルから事業会社へ移った方から「思っていたのと違う。聞いていた内容とまったく違う仕事を任されている」というご相談をいただいたことがあります。コンサルタントであれば、プロジェクトで合意したスコープ(業務範囲)と違う仕事を頼まれたときは交渉するのが普通ですが、正社員として入った事業会社では同じようにはいきません。
日本の大手企業には総合職採用の文化があり、ジョブ型雇用が進みつつあるとはいえ、職務の範囲では切り分けられない仕事が現実として存在します。「私の仕事の範囲外です」という線引きは基本的に通用せず、スコープへの意識が強く残ったままだと、ハイパフォーマーとして定着しきれないこともあり得ます。
企業選びでは、事業内容以上に経営者との相性を見る
企業選びで事業内容以上に大事なのは、経営者の思想とどれだけ合うかです。事業会社への転職を考える方はサービスや事業の内容を重視して企業を見ることが多いのですが、会社として決めた事業の方向性に、入社した人が待ったをかけるのはかなり難しいことです。会社の方向性に共感し、一緒に走っていける人でなければ、うまくいきません。
とくに経営企画や事業企画の部門は、社長直轄の部署であるケースが多くあります。トップダウンの会社も非常に多いため、代表と人間的にどれだけ合うか、同じ理念で同じ方向を向いて走れるかが、大きな比重を占めます。
事業会社への転職を成功させる進め方
事業会社への転職は、動き出すタイミングを見極めたうえで、早めに転職エージェントと接点を持ち、長い目で進めるのが基本です。
狙い目はマネージャー経験を2〜3年積んだころ
目安としては、マネージャーになってから2〜3年ほど経験を積んだうえで動くと、転職が決まる確率は上がりやすいでしょう。ただし、条件の調整や求人のタイミングにも左右されます。若すぎる段階で動くのはもったいなく、逆に年齢を重ねすぎると話が難しくなることがあります。前述の通り、ジュニアクラスではコンサルでの経験が評価されにくく、ディレクター以上では年収が合いにくいためです。
求人はタイミング次第のため、早めに転職エージェントと接点を持つ
事業会社のポジションは求人が出てこない限り応募できないため、転職活動は比較的長い期間をかけ、転職エージェントと定期的に話しながら進めるのが基本になります。別のコンサルティングファームへ移る転職であれば2〜3カ月で決まることもありますが、事業会社への転職はまったく勝手が違います。「今の環境に不満があるので、2カ月後には転職したい」という進め方では、うまくいくケースはかなり少ないでしょう。
事業会社を真剣に考えるなら、早めに転職エージェントと接点を持ち、「時間がかかってもいいので、よい案件があれば紹介してほしい」と伝えておくことが大切です。たまたま出ていた求人に応募して決まることは多くありません。まずは相談をしておき、エージェントの頭のなかにある候補者リストに入れてもらうだけでも、取り組んでおく価値があります。
まとめ
コンサルから事業会社への転職は、別のコンサルティングファームへ移る転職に比べて受け入れ先が限られ、年収・役職・タイミングの調整が欠かせない転職です。押さえておきたいポイントは次の通りです。
- 受け入れ先は大手企業が中心で、経営企画や事業開発のポジションはタイミング次第
- 年収と役職が合いやすいのはマネージャーからシニアマネージャー層で、ジュニアクラスはコンサル経験が評価されにくい
- 入社後は、現状把握と他部署の巻き込み、ジョブディスクリプションにない仕事も引き受ける泥臭さが求められる
- 企業選びでは事業内容に加えて、経営者との相性も重視する
- 早めに転職エージェントと接点を持ち、長い目で機会を待つ
事業会社で活躍できるかどうかは、入社前に期待と現実のギャップをどれだけ埋めておけるかにかかっています。
タイグロンパートナーズでは、ポストコンサルの転職について、まだ情報収集の段階の方からのご相談もお受けしています。お気軽にご相談ください。
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