戦略コンサルティングファームのプロジェクトは、パートナーが部分的に関与し、マネジャー1名とコンサルタント3名が入る体制が標準です。期間は平均3か月で、費用は1億円を超えることもあります。
高額な料金の裏側には、厳選された人材、情報を価値に変える仕組み、グローバルネットワークという3つの要素があります。
本記事では、「戦略をコンサルする」という仕事の中身、戦略ファームが付加価値を生み出す3つの仕組み、コンサルフィーの決まり方、成果報酬型ビジネスへの動きなどを解説します。

A.T.カーニー・BCG出身の藤熊浩平氏による『コンサルティングビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を、コンサル転職をご検討中の方に無料でお届けしています。業界の歴史から主要ファーム、プロジェクトの進め方、キャリアまでを1冊で押さえられます。本記事はその一部を抜粋したものです。
無料で書籍を受け取る ›※コンサルティング業界への転職を希望される方が対象です。当社コンサルタントとの面談完了後、ご指定の住所へお送りします。
コンサル未経験から60%以上が大手ファームに内定
未経験コンサル転職の成否は能力の差ではなく
『準備』と『情報』の差にあります。
業界特有の選考基準を知らないまま
転職活動をしてもうまくいきません。
タイグロンパートナーズでは、専門コンサルタントが応募先選定から選考対策・年収交渉まで伴走します。
- 豊富な業界知見・人脈・経験
- 実績に基づく独自の選考対策
- 中長期視点でのアドバイス
「戦略をコンサルする」とはどういうことか
戦略コンサルティングファームは、実際にどのような支援を行い、具体的にどのような付加価値を提供しているのでしょうか。まず、「戦略をコンサルする」とはどういうことかについて解説します。
「戦略」と対をなすものとして、「戦術」という言葉があります。いずれも軍事用語ですが、「戦略」は、最終的に戦争に勝つための、大局的な構想や長期的な計画のことを指し、「戦術」は、それらに沿って戦争を効果的・効率的に進めるための、局面ごとの最適な手法や具体的な行動のことを指します。
これらを企業活動に置き換えると、競合に勝つための大局的な構想や長期的な計画を支援するのが「戦略」コンサル、局面ごとの最適な手法や具体的なツールの導入を支援するのが「専門」コンサルという棲み分けになります。
つまり、「戦略をコンサルする」ためには、大局的に構想する広い視野と、長期的な計画を立てる高い視座の、2つが必要になるということです。
また、戦略コンサルの最終ゴールは、「クライアントを競争に勝たせること」なので、「1業種1社」の支援が基本で、競合関係にある企業を同時に支援することはご法度です。さらに、競合は競合で、勝つための「戦略」を練ってくる(場合によっては別のコンサルが支援している)ので、単純で静的なゲームではなく、複雑で動的なゲームとなります。
したがって、戦略コンサルが提供するものは、あらかじめパッケージ化された一般解ではなく、常にカスタマイズされた個別解となります。
一方、「戦略」という言葉は、現在では広義に使われていて、「●●戦略」という形で、いろんなレベル感のものが混在しています。例えば、会社組織の階層別に、次のようなものが挙げられます。
・全社レベル:中長期成長戦略、グローバル戦略、事業ポートフォリオ戦略、R & D戦略、M & A戦略など
・事業レベル:新規事業戦略、新興市場参入戦略、ブランドポートフォリオ戦略、アライアンス戦略など
・業務レベル:マーケティング戦略(商品戦略、価格戦略、チャネル戦略、プロモーション戦略)、営業戦略、システム戦略、調達戦略、財務戦略、人事戦略など
前半の方は、「経営課題」や「CXOアジェンダ」などと呼ばれるもので、より広い視野と高い視座から「個別解」を導き出す必要があるため、戦略コンサルの主戦場となります。後半の方も、戦略コンサルの支援メニューに含まれますが、より深い専門性に基づいた「一般解(セオリー的なもの)」も存在するため、専門コンサルと競合している領域になります。
ただし、両者で価値を提供する際の切り口は異なり、戦略コンサルが「WHY(なぜすべきか)」や「WHAT(何をすべきか)」に応えるのに対して、専門コンサルは「HOW(どうすべきか)」に応えるという違いがあります。
戦略コンサルの価値提供モデル
では、戦略ファーム各社は、付加価値をどのように生み出しているのでしょうか。
結論から言うと、戦略コンサルの付加価値の源泉は、「①人材」「②情報加工システム」「③グローバルネットワーク」の3要素の組み合わせにあると考えています。
それぞれ順番に紹介していきましょう。
①人材
戦略ファームは、「ベスト&ブライテスト(最良で聡明)」といわれる人たちを惹きつけ、厳選採用し、手塩にかけて育成しています。その上で、「Up or Out(昇進しなければ退職)」と呼ばれる自然淘汰の仕組みを導入して、在籍するコンサルタントの質を常に一定以上に保っています。
②情報加工システム
コンサルティング業は「情報を付加価値に転換する仕事」ともいえます。戦略コンサルの場合は特に、前述の通り、見るべき情報の範囲が広く、考慮すべき時間軸も長くなるので、価値転換の生産性がとても重要になります。そのため、戦略ファーム内には、個人の思考の仕方においても、チームの連携の仕方においても、生産性を高めるためのノウハウが蓄積され、プロセスが整備されています。
例えるなら、戦略ファームは、情報の「インプット(収集)→プロセッシング(加工)→アウトプット(価値)」を高速で行う生産ラインを配備した「付加価値製造工場」のようなものです。
③グローバルネットワーク
世界中にオフィスを展開していることのアドバンテージは、先ほどの「生産ライン」に流し込む情報の範囲と精度が高まることです。日本のコンサルティングビジネスの黎明期には、単純な「情報のアービトラージ(海外と国内の情報格差によるサヤ取り)」も行われていましたが、今ではインターネットの普及により、そのモデルは通用しなくなりました。そのため、公開情報だけではなく、「活きた情報」を仕入れるべく、どの戦略ファームも、グローバルのネットワーキングを重視しています。
コンサルティングファームでは、「業界」別と「機能」別に、「プラクティス」と呼ばれる専門グループを組成して、そこでグローバルの知見を共有・蓄積しています。
例えば、私がBCGにいた時には、所属する「消費財プラクティス」と「マーケティング&セールスプラクティス」で、それぞれ「アジア」と「グローバル」の単位で、年に計4回、世界各国のプロジェクトで得られた最新知見を、互いに共有する場がありました。そして、そこで仕入れた「活きた情報」が、クライアントへの付加価値につながったり、そこで築いた人間関係が、プロジェクトで困った時の助け舟になったりもしました。
以上の3つが、戦略コンサルティングファームにおける「付加価値を継続的に提供できる仕組み」と考えています。
例えてみるなら、戦略ファームは、コンサルタントというハイスペックなプロセッサーを使って、付加価値の創出に特化したアルゴリズムを進化させ続けている、「グローバルレベルの巨大生成AI」のようなものかもしれません。

A.T.カーニー・BCG出身の藤熊浩平氏による『コンサルティングビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を、コンサル転職をご検討中の方に無料でお届けしています。業界の歴史から主要ファーム、プロジェクトの進め方、キャリアまでを1冊で押さえられます。本記事はその一部を抜粋したものです。
無料で書籍を受け取る ›※コンサルティング業界への転職を希望される方が対象です。当社コンサルタントとの面談完了後、ご指定の住所へお送りします。
戦略ファームのコンサルフィー(報酬)はいくらか
コンサルティングビジネスが成立する要件には、「①付加価値を継続的に提供できる仕組み」と、「②価値に対して相応の対価を支払ってくれるクライアントがいること」の2つがあります。
前段で、戦略ファームの「①価値提供モデル」を紹介しましたが、これが「ビジネス」といえるためには、もう1つの成立要件②をクリアする必要があります。
では、戦略ファームは、どのようにして「相応の対価」を稼いでいるのでしょうか。
実は、戦略コンサルティングは、「お金を稼ぐ」という観点では、とても「効率の悪い」ビジネスなのです。
先ほど、戦略コンサルが提供するものは、「あらかじめパッケージ化された一般解ではなく、常にカスタマイズされた個別解となる」という話をしました。これをビジネス的な観点から捉え直してみると、「量産化によるスケールメリットを享受することができず、毎回手間ひまかけて〝一点もの〟を作り込むため、労働集約的にならざるを得ない」、つまり、「効率的に稼げていない」ということになります。
コンサルティング業界には、ファームの効率性を測るモノサシとして、「パートナー・レバレッジ」という指標があります。これは、ファームの経営陣(パートナー)の数に対して、それ以下のメンバーの比率がどれくらいかを示す指標です。戦略ファームの場合、「5~10」が一般的な水準となります。
これが、総合ファームになると「10~30」の水準になり、パートナーが深く関与しなくても回るような、定型化された仕事の割合が多い、つまり、「効率的に稼げている」ということになります。
そのため戦略ファームがクライアントに請求するフィーは、どうしても高くなる構造にあります。一般的なフィーの見積もりは、「プロジェクトに従事するコンサルタントの単価(チャージレート)×関与する工数」によって算出しますが、戦略ファームの単価は、ジュニアコンサルタントでも月に数百万円、シニアコンサルタントになると月に一千万円を超えることもあります。
戦略プロジェクトの場合、「パートナー(部分関与)+マネジャー1名+コンサルタント3名」という体制が標準の座組となり、月あたりで数千万円のフィーがかかってきます。
そして、プロジェクトの期間は平均3ヶ月なので、戦略ファームに発注すると優に1億円以上を支払うことになります。
1億円以上のコンサルフィーとなると、戦略ファームに依頼ができるのは、おのずと大企業(または政府)に限られてしまいます。目安としては、売上で1千億円以上、営業利益で100億円以上を稼いでいる企業だと、1億円のコンサルフィーの負担が利益の1%未満となるので、継続的に戦略ファームに発注できるという計算になります。
実際に、戦略ファームの主なクライアントは、売上1兆円を超える大企業が中心となり、戦略ファームは1つの企業から複数のプロジェクトを受注し、年間で10億円以上を稼いでいたりもします。
一方、クライアントの側からすると、3ヶ月で1億円は相当に高い買い物になるので、それ以上の成果が上がらなければ、継続的な依頼はかないません。
そのため、戦略ファームではクライアントにまず、コンサルフィーを「費用」ではなく「投資」と位置づけるようコミュニケーションします。その上で、投資に対するリターン(ROI)の目標を10倍以上に設定します。
言い換えると、1億円の戦略プロジェクトを請け負う場合、最終的に10億円以上の利益をクライアントにもたらすことが期待される水準となります。あるいは、それ以上の成果を約束できない場合は、プロジェクトをお断りすることもあります。
なお、本当に10倍以上のリターンが上がるなら、クライアントにとっては大成功の投資となります。例えば、2倍のコンサルフィーを支払ったとしても、十分にお釣りがくると言えるでしょう。
このことにいち早く着目したのが、先ほど紹介したベイン&カンパニーでした。そして、「結果にコミット」し、成果が上がった暁にはより高い報酬をいただく(逆に一定の成果を得られない場合は報酬がなくなる)という、新たな報酬体系を導入しました。
戦略ファームの成果報酬型ビジネスへのチャレンジ
ベインが先駆けて導入した成果報酬型の料金体系は、戦略コンサルティングビジネスの「効率の悪さ」を解消しうる妙手である一方で、実際に導入するにはハードルもあります。
まず、クライアントとの間で「成果」の線引きをいかに行うか、の課題があります。
例えば「売上の拡大」という結果は、それまでのクライアントの企業活動の積み重ねも含めた複合要因でもあるので、どこまでがコンサルティングプロジェクトの「成果」なのかの線引きが難しくなります。その一方、「コスト削減」の場合は、責任範囲の切り分けや「成果」の判定がしやすいので、すでに成果報酬の導入が進んでいます。
また、クライアントとの間に利益相反が生じうる、という課題もあります。
先ほどの「コスト削減」を例にとると、コンサルティングファームのビジネスとしては、できるだけ多くのコストを下げた方が儲かるので、「投資的な費用(将来的に大きな利益につながる可能性があるもの)」までも削減しようとしてしまいがちです。コスト削減のプロジェクトで成果を上げたら、自分たちのコンサルフィーまで減らされてしまった、というのは、コンサルティング業界でよく聞く笑い話です。
足元のコンサルティング業界では、総合ファームが戦略ファームを飲み込み、「異業種格闘戦」が繰り広げられています。そんな中、戦略ファーム各社も生き残りをかけて、労働集約型の非効率的なビジネスから脱却し、より効率的に稼げる成果報酬型のビジネスを志向します。
一方、成果報酬の導入にはいくつかのハードルがあることも前述の通りです。それらを乗り越える大胆な解決策として、「成果の線引き」も「利益相反」も関係なくなるように、会社ないしは事業を「丸ごと請け負う」という手段に打って出ます。
ベインが、ベインキャピタルという投資ファンドを設立し、対象会社の株主になって、企業価値を高めた後に売却して利益を得るという、コンサルティングとは別のビジネスを展開していることは、先ほど紹介した通りです。
BCGは、BCGデジタルベンチャーズ(現・BCG X)を筆頭に、クライアントとの合弁会社(JV)を設立し、同じく企業価値の向上によって利益を得るビジネスモデルにチャレンジしています。
例えば海外では、スターバックスと、会員向けに個別最適化したマーケティングを行うJV(Formation)を設立しています。日本でも、ユニ・チャームと、中国で育児メディアの運営を行うJV(Onedot)を設立したり、三越伊勢丹ホールディングスと、パーソナルスタイリングサービスを提供するJV(DROBE)を設立したりしています。
マッキンゼーは、また別の手法で「RTS(Reset, Transform, Sustain)」という会社や事業を「丸ごと変革する」プログラムを開発し、成果報酬型の料金体系を導入しています。
こちらに関してマッキンゼーは、「RTSはコンサルティングサービスではありません。クライアント企業自身と、マッキンゼーがお互いに変革の成功をコミットすることを約束し、実行するパートナーシップです」と述べており、すでに200社を超える導入実績があるとされています。
戦略ファームの高い報酬は、厳選された人材、情報を価値に変える仕組み、グローバルの知見という3つの要素に支えられています。一方で労働集約型のモデルには限界があり、各社は成果報酬型への転換を模索しています。

A.T.カーニー・BCG出身の藤熊浩平氏による『コンサルティングビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を、コンサル転職をご検討中の方に無料でお届けしています。業界の歴史から主要ファーム、プロジェクトの進め方、キャリアまでを1冊で押さえられます。本記事はその一部を抜粋したものです。
無料で書籍を受け取る ›※コンサルティング業界への転職を希望される方が対象です。当社コンサルタントとの面談完了後、ご指定の住所へお送りします。