コンサルティング業界には、戦略系のMBB、総合系のBIG4、日系の新興勢力、特定領域に絞ったブティック型・領域特化型など、性格の異なるファームが並び立っています。BIG4は4グループ合計で売上約2100億ドル、従業員約150万人に達する一方、戦略ファーム最大手のマッキンゼーは売上150億ドル規模と、同じコンサルティング業界でも規模は大きく異なります。
本記事では、MBB3社の各特徴と違い、A・T・カーニーやローランド・ベルガーなどの戦略ファーム、BIG4各社の規模、ベイカレントをはじめとする新興勢力、機能・業界特化型ファームなどを解説します。

A.T.カーニー・BCG出身の藤熊浩平氏による『コンサルティングビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を、コンサル転職をご検討中の方に無料でお届けしています。業界の歴史から主要ファーム、プロジェクトの進め方、キャリアまでを1冊で押さえられます。本記事はその一部を抜粋したものです。
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MBBとは何か
最も長い歴史を持ち、コンサルティングの本家本流ともいえる戦略ファームにおいて、売上規模の観点でも、知名度の観点でも、トップ3はマッキンゼー&カンパニー、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、ベイン&カンパニーです。その頭文字をとって「MBB」と呼ばれたりもします。まずは、この3社から見ていきましょう。
①マッキンゼー&カンパニー
世界60か国以上に展開し、約4万人の従業員を抱え、150億ドル(約2兆円)超の売上を誇る、世界最大の戦略コンサルティングファームです。
創業者は、社名にもなっているジェームズ・O・マッキンゼーですが、現在の礎を築いたのは、「経営コンサルティング産業の父」ともいわれるマービン・バウアーです。彼は、MECEやロジックツリーなどのコンサル思考法のベースを作り、従来の「グレイヘア・コンサルティング」から、「ファクトベース・コンサルティング」への転換を図りました。
前者は経験豊富な老紳士(グレイヘア)によるアドバイス、後者はデータや分析に基づく提言のことを指しますが、この転換によって「コンサルティングの民主化(豊富な経験を持った人だけのものから、新人でも実施可能なものに)」が果たされ、現在の規模拡大へとつながっています。
日本にも1971年から進出し、日本のコンサルティング市場を切り開いてきました。
一方、例えばマッキンゼー・ジャパンのホームページ上に、外国人のパートナー(共同経営者)が数多く並んでいることからも、日本に深く根を張って活動しているというよりも、あくまで「グローバルファームの一支店」という色合いが強いように見受けられます。
知り合い伝手に聞く話からも、グローバル案件の比率や海外オフィスへのトランスファー制度、日本オフィスでの英語使用頻度など、いずれをとってもグローバルファーム感が最も強い印象です。
②ボストン コンサルティング グループ(BCG)
後発ながら、マッキンゼーに迫る勢いで拡大を続ける、世界第2位の戦略コンサルティングファームです。
創業者はブルース・ヘンダーソンですが、戦略ファームの中では珍しく、人の名前ではなく、創業の場所(ボストン)が社名になっています。そのため、特定の個人による主義主張のようなものが少なく、各コンサルタントの個性を尊重し、「多様性からの連帯」を標榜しているのが特徴です。
象徴的な例として、BCGではグローバルで大きな意思決定を行う場合、各国のパートナーによる投票が行われます。その際、若手からシニアまで平等に1人1票が与えられるため、数で勝る若手の意見が通りやすく、柔軟に変化してきたファームでもあります。
また、社名を「コンサルティング グループ」としている点も特徴で、コンサルティング以外の事業も含めることのできる、待ちの広い構えをとっています。特に、デジタル領域での取り組みが象徴的で、前述のプラティニオンやガンマをはじめ、BCGデジタルベンチャーズなど、専門の子会社を次々と立ち上げ、現在はそれらを「BCG X」として統合し、傘下にデジタルテクノロジーの専門家集団を抱えています。
日本には、「外資系」戦略ファームの中で最も早くオフィスを開設し、マッキンゼーとともに日本の戦略コンサルティング市場を開拓してきました。その道中、CDIやDIなどの分離独立も経験しましたが、順調に規模を拡大し、現在は売上・人数ともに日本最大の戦略コンサルティングファームになっています。
業界内では、「マッキンゼーは劇薬、BCGは漢方薬」という例えをよく耳にします。マッキンゼーがグローバルのネットワークを活かし、世界水準のあるべき提言(劇薬)を提供するのに対して、BCGは日本企業の体質に合わせ、継続的に飲み続けられる処方箋(漢方薬)を提供するという意味合いです。経営トップの権限が強い米国企業にマッキンゼーが評価され、ミドルにも意思決定権がある日本企業にBCGが評価されていることの1つの理由かと思います。
③ベイン&カンパニー
BCGに在籍していたビル・ベイン他4名が分離独立する形で設立した、比較的新しい戦略コンサルティングファームです。最後発ながら、業界に新機軸を持ち込んで急成長し、現在ではグローバルで3本の指に数えられる存在になっています。
BCGと袂を分かった際、まず掲げたのが「結果主義」でした。そして、クライアント企業の長期的な成長にコミットするべく、「1業種1社」の契約の縛りを設けます。
また、コンサルティングの成果は、最終的に「株価」によって評価されるべきとの考えから、クライアントの株価を長期的にトラッキングし、市場平均の約4倍のパフォーマンスを挙げていることも公表しています。
他にも、「結果主義」を体現するものとして、従来の固定フィーではなく、成果報酬型の料金体系を業界に先駆けて導入しています。その最たる例として、ベインキャピタルという投資ファンドを設立し、株式を取得して経営に深く関与することで企業価値を高め、最終的にIPO(新規株式公開)や他社への売却を通じて利益を得るビジネスも手がけています。
ベインの企業風土を象徴するものとして、「True North(真北)の精神」という言葉が挙げられます。方位磁針が指し示す方向(磁北)は、地軸が傾いているため、「真北」からは少しズレていて、「クライアントが北だと思っている方向は、真に進むべき方向ではないかもしれない」、そこから転じて、「常にクライアント、社員、コミュニティに対して正しいことを行う」という信条を表しています。
これは企業ロゴにもなっていて、実際に社内でも、「それはTrue Northなのか」という問いかけが、日常的になされるそうです。
続いて、MBB以外の、現存する主要な戦略ファームについても見ていきましょう。
④A・T・カーニー
創業者のアンドリュー・トーマス・カーニーは、先ほどのマッキンゼー氏とともに、一時期は「カーニー&マッキンゼー」という看板で活動をしていました。その後、戦略を重視するマッキンゼー&カンパニーと、オペレーションを重視するカーニー&カンパニー(後にA・T・カーニーに改称)に分かれ、そのまま現在に至ります。
現在もオペレーション改善に強みを持ち、「Tangible Results(目に見える成果)」にこだわる点が特徴のファームです。実際に私が在籍していた時は、半分くらいがコスト削減系のプロジェクトでした。
一時期は、前述のEDS社の傘下に入っていましたが、2006年にMBO(経営陣による株の買い戻し)を行い、現在は再び独立した戦略ファームになっています。
⑤アーサー・D・リトル(ADL)
前述の通り、リトル博士によって設立された、100年以上もの歴史を持つ世界最古の戦略コンサルティングファームです。大学の研究所からスタートしたという出自を引き継ぎ、現在もR & D(研究開発)や技術経営の領域に強みを持つ点が特徴です。
一時期は、民事再生法の適用を受け、仏大手エンジニアリング企業のアルトランの傘下に入りますが、2012年にMBOによって再び独立しています。
⑥ローランド・ベルガー
BCG出身のローランド・ベルガーが、ドイツのミュンヘンで設立し、ヨーロッパからグローバルに展開していった、欧州系最大の戦略コンサルティングファームです。
欧州にルーツを持つことから、米国の株主至上主義・短期利益追求型の経営をアンチテーゼに、「長期的な視野」を持った経営支援を掲げています。また、ドイツに本社があり、製造業(特に自動車業界)に強みを持つ点も特徴です。
日本のコンサルティング業界内では、「体育会系」のファームとしてエッジが立っています(日本オフィス固有のカルチャーなのか、グローバル共通なのかは不明です)。
BIG4とは何か
現在のコンサルティング業界の最大勢力は、会計事務所に出自を持つ総合ファームです。規模の順に並べると、「デロイト トウシュ トーマツ」「プライスウォーターハウスクーパース(PwC)」「アーンスト&ヤング(EY)」「KPMG」の4つが主要グループで、まとめて「BIG 4」と呼ばれたりもします。それぞれ順に紹介していきましょう。
①デロイト トウシュ トーマツ
社名は、米国人のウィリアム・ウェルチ・デロイト、英国人のジョージ・トウシュ、そして日本人の等松農夫蔵の3人の会計士に由来します。
グローバルで売上は約650億ドル(約10兆円)、従業員は約46万人を数える、BIG 4の中でも最大の総合ファームです。戦略ファームの中で最大のマッキンゼーと比べると、売上は約4倍、従業員数は約9倍の規模になります。2013年にモニター・グループを買収し、現在はモニター デロイトというブランドを傘下に持ちます。
日本ではデロイト トーマツグループの傘下に、デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)を保有し、5000人超の従業員を抱えています。
②プライスウォーターハウスクーパース(PwC)
社名は、3人の名前(プライス氏、ウォーターハウス氏、クーパー氏)に由来します。
グローバルでデロイトに次ぐ規模を誇り、売上は約550億ドル(約8兆円)、従業員は約37万人を数えます。2014年にブーズ&カンパニーを買収し、現在はストラテジー&という戦略コンサルティングチームを傘下に持ちます。
日本ではPwCジャパングループの傘下に、PwCコンサルティングを保有し、約5000人の従業員を抱えています。
③アーンスト&ヤング(EY)
社名は、同じく人名(アーンスト兄弟とヤング氏)に由来します。
グローバルでの売上は約510億ドル(約8兆円)、従業員数は約40万人で、PwCに匹敵する規模を誇ります。2014年にパルテノン・グループを買収し、現在はEYパルテノンというブランドを傘下に持ちます。
日本ではEYジャパンの傘下に、EYストラテジー・アンド・コンサルティングを保有し、約4000人の従業員を抱えています。
④KPMG
社名は、4人の人名(クリンヴェルド氏、ピート氏、マーウィック氏、ゲルデラー氏)の頭文字からきています。
グローバルでの売上は約380億ドル(約5兆円)、従業員数は約28万人で、BIG 4の中ではやや小さい規模となっています。
日本ではKPMGジャパンの傘下に、KPMGコンサルティングを保有し、約2000人の従業員を抱えています。
4グループ合わせると、グローバルの売上は約2100億ドル(約30兆円)、従業員数は約150万人と、「BIG」と呼ばれる理由がおわかりいただけるかと思います。

A.T.カーニー・BCG出身の藤熊浩平氏による『コンサルティングビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を、コンサル転職をご検討中の方に無料でお届けしています。業界の歴史から主要ファーム、プロジェクトの進め方、キャリアまでを1冊で押さえられます。本記事はその一部を抜粋したものです。
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ベイカレントなど、コンサルティング業界の新興勢力
ここからは、新興勢力による下からの突き上げについて見ていきます。
新興系のファームのいくつかは、すでに業界再編の渦に飲み込まれています。その状況下で、独立系として生き残っているファームの急先鋒が「ベイカレント」です。
ベイカレントは、1998年に設立された有限会社ピーシーワークスが起源となります。当初はその名の通り、システムの受託会社でしたが、2006年に社名をベイカレント・コンサルティングに変更し、コンサルティングファームへの転換を図ります。
その後も順調に拡大を続け、2016年に東証マザーズに上場し、2022年には東証プライム市場に鞍替えしています。2024年には持株会社制に移行し、現在はベイカレント(持株会社)の傘下に、ベイカレント・コンサルティングとベイカレント・テクノロジーを抱える体制になっています。
直近(24年2月期)の売上は939億円で、そのうち105億円(1割強)をファイザー1社から稼いでいます。これは、「コロナワクチン特需」によるものと言われています。従業員は4321人で、BIG 4の日本法人と肩を並べる規模にまで達しています。
単純な割り算をすると、1人当たり売上高は約2200万円で、アクセンチュアの日本法人(約3000万円/人)と比べると、約3分の2の単価水準になります。また、平均給与が約1100万円なので、粗利がおよそ5割のビジネスとなります。
資本市場からの期待は高く、上場時には300億円程度だった時価総額が、一時期は1兆円の大台に迫る時期もありました。現在もPER(株価収益率)は20~30倍と、高い水準で推移しています。
では、なぜベイカレントは、ここまで急成長できたのでしょうか。
まず、売上拡大の観点では「製販分離」を行ったことが挙げられます。
コンサルティングファームでは、パートナーと呼ばれる経験豊富なコンサルタントが、営業を行うと同時に、デリバリー(納品)に対しても責任を持つ、「製販一体」型モデルが一般的です。それに対してベイカレントは、専門の「営業部隊」を持ち、そこで受注したプロジェクトを、「納品部隊(コンサルタント)」にパスするという、分業体制をとっています。当然ながらこの体制では、「CXOアジェンダ」のような戦略プロジェクトは受注できませんが、「現場の業務代行」のような仕事は数多く拾ってくることができます。
次に、人材確保の観点では、新卒採用に力を入れていることが特徴です。
かつては競合ファームからの「引き抜き」で、裁判沙汰になったこともありましたが、その後は新卒市場でのブランディングに注力し、現在では年間200人以上の学生を採用しています。もしかしたら、業界内での評判と新卒市場での評価に、最もギャップがあるファームかもしれません。
また、コスト競争力の観点では、日系の独立ファームなので、外資系ファームの日本法人と違い、親会社に上納するロイヤリティ負担がない点も有利に働いています。
そんなベイカレントを追随するのが、「ライズ・コンサルティング・グループ」です。同社は、ベイカレント出身者が立ち上げた会社で、ビジネスモデルも類似していることから、「ベイカレ兄弟」と呼ばれることもあります。
2010年の設立後から順調に成長し、2023年に東証グロース市場に上場します。直近の決算(24年2月期)では、売上は62億円(うち3割はNTTデータ)、従業員は264人、1人当たり売上高は約2300万円、平均給与は約1150万円と、ベイカレントのおよそ15分の1の相似形と言えます。
続いては、アクセンチュア出身者らが立ち上げた「グロービング」です。
2017年に設立し、2024年10月には東証グロース市場に上場します。直近の決算(24年5月期)では、売上は42億円(本田技研工業・三井化学・パーソルクロステクノロジーがそれぞれ1割強)、従業員は203人、1人当たり売上高は約2100万円、平均給与は約1500万円と、ベイカレントのおよそ20分の1、ライズの約3分の2の相似形になります。
次々と生まれる特化型コンサル
前段で紹介したのは、総合ファーム出身者が中心となって立ち上げた「総合型」の新興勢力でした。ここでは、戦略ファーム出身者が中心となって立ち上げた「特化型」の新興勢力について紹介します。
まず古いところでは「経営共創基盤(IGPI)」があります。創業者はBCGに入社後、CDI(コーポレイト ディレクション)のスピンアウトに携わり、その後は産業再生機構のCOOを経て、2007年にIGPIを立ち上げます。
同社は「企業再生」に特化したファームとして、コンサルティング支援にとどまらず、自己勘定投資も行っています。経営難に陥った地方の交通事業者(鉄道・バス会社など)を数多く傘下に収めていることでも有名です。
このように、「専門性を活かした支援メニュー」に特化してコンサルティングを行うファームは、その後も次々と生まれています。
例えば2008年、ブーズ&カンパニー出身者らが「成果報酬型のコスト削減」に特化した「プロレド・パートナーズ」を立ち上げます。その後、2018年には東証マザーズ市場に上場し、現在は東証プライム市場に移行しています。
ほかにも2011年に、マッキンゼー出身者が「ビジネスDD」に特化した「ロゴズ・パートナーズ」を立ち上げます。2019年には、ベイン出身者も、同様の特化モデルで「リゾルブ・アンド・キャピタル」を立ち上げています。
2016年には、BCG出身者が「カスタムAIによるビジネス課題解決」に特化した「Laboro.AI」を立ち上げます。そして2023年に東証グロース市場に上場しています。
2018年には、BCG出身者が「マーケティングリサーチに基づく事業開発支援」に特化した「クエスト」を立ち上げます。現在は、マーケティング調査を行うクエストリサーチと、事業開発を支援するクエストに分社化しています。
これらはいずれも、業界を横断して展開する「機能(テーマ)特化型」のファームですが、縦軸側に比重を置く「業界特化型」のファームも出てきています。
例えば2020年、カーニー出身者が「ソーシャルセクター(NPO・NGOなど)」の支援に注力する「オウルズコンサルティンググループ」を立ち上げます。同社は、年間総工数のうち10%以上を、社会貢献団体へのプロボノ活動に投じている点が特徴です。
ほかにも2022年に、カーニー・BCGの出身者が、「エンタメ・スポーツ業界」の支援に注力する「SHAPE Partners(シェイプパートナーズ)」を立ち上げます。同社は当領域において、ビジネス観点での支援に閉じず、エンタメ企業のクリエイティブ観点での支援や、プロスポーツチームの競技観点での支援など、〝本丸テーマ〟にも精力的に取り組んでいることが特徴です。また、子会社のSHAPE Sportsでは、コンサルティング以外のスポーツ関連事業にも取り組んでいます。
図 日本のコンサルティング業界のプレイヤーズマップ

コンサルティング業界には、戦略系のMBB、総合系のBIG4、日系の新興勢力、領域特化型と、性格の異なるファームが並び立っています。規模も強みも社風も、ファームごとに大きく異なります。

A.T.カーニー・BCG出身の藤熊浩平氏による『コンサルティングビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を、コンサル転職をご検討中の方に無料でお届けしています。業界の歴史から主要ファーム、プロジェクトの進め方、キャリアまでを1冊で押さえられます。本記事はその一部を抜粋したものです。
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