コンサルタントに共通して求められる最も基礎的なスキルが、ロジカルシンキングです。思考のOSとして個人の生産性を高めるだけでなく、チームで議論するときの共通言語、クライアントに提案を伝えるときのコミュニケーション技術としても使われます。MECEやロジックツリー、フェルミ推定といった手法も、すべてロジカルシンキングを土台にしています。
本記事では、ロジカルシンキングの基本となる演繹法と帰納法、要素を分けるMECE、原因を掘り下げるロジックツリー、結論を伝えるピラミッドストラクチャー、概算で見通しを立てるフェルミ推定などを解説します。

A.T.カーニー・BCG出身の藤熊浩平氏による『コンサルティングビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を、コンサル転職をご検討中の方に無料でお届けしています。業界の歴史から主要ファーム、プロジェクトの進め方、キャリアまでを1冊で押さえられます。本記事はその一部を抜粋したものです。
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ロジカルシンキングとは?コンサルの万能スキル
コンサルタント個人の仕事にフォーカスを当て、そこで求められる普遍的な「コンサルティングスキル」について解説していきます。まずは、コンサルティングとはどのような仕事なのか、改めておさらいしておきましょう。
先ほど「コンサルワーク」とは、個人/チーム/クライアントの各階層において、仮説検証のサイクルを高速で回し、仮説を日々進化させ、付加価値へと昇華させている活動と紹介しました。そして、これら3つの階層のいずれにおいても活躍するのが、「ロジカルシンキング」です。
まず、コンサルタント個人としては、限られた時間の中で、生産性(投下時間あたりの付加価値)を高く仕事をする必要があります。その際、頭の中を整理し、考えるスピードと精度を高める「思考のOS」とも言える働きをするのが、ロジカルシンキングです。
一方、コンサルティングは個人プレーではなくチームプレーなので、皆で議論しながら、付加価値を重ね合わせることも重要になります。その際、ロジカルシンキングは「議論の共通言語」としての役割も果たします。
さらに、コンサルティングはクライアントを介して世の中に価値を届ける仕事でもあります。その際、クライアントの行動変容を促すための「コミュニケーション技術」としても、ロジカルシンキングは活用されます。
このように、ロジカルシンキングは、コンサルティングワークにおける、最も基礎的で汎用的な必須スキルと言えます。
では、「ロジカルシンキング」、日本語でいう「論理的思考」とは、どのようなスキルなのでしょうか。辞書的な説明では「物事を構造化して、筋道を立てて考えること」とあります。もう少し深掘ってみましょう。
まず「構造化」について。同じく辞書的な説明では「物事の全体像を定義し、その中にある構成要素と構成要素間の関係を、わかりやすく見えるようにすること」とあります。
これを体現するものとして「ピラミッド」がよく使われます。三角形の頂点にいくほど抽象的な概念や結論、底辺にいくほど具体的な事象や論拠を配置して、全体と個別要素の位置関係を可視化するものになります。
そして、このピラミッドを横方向に展開していくのが「MECE」、縦方向に接続していくのが「ロジックツリー」や「ピラミッドストラクチャー」と呼ばれるコンサルスキルになりますが、その詳細については後段で改めて解説します。
次に「筋道」について。これは、構造化したピラミッドが崩れないように、ブロックをどう組み立てていくか、という話になります。このブロックの組み立て方として、大きく「演繹法」と「帰納法」があります。
演繹法
演繹法は、教科書的には「アリストテレスの三段論法(大前提→小前提→結論)」が有名ですが、コンサルティングの世界では「空雨傘」の三段論法をよく使います。
「『空』を観察して、『雨』が降りそうと判断したら、『傘』を持っていくことを提案する」というように、「事実→解釈→行動」の順番でそれぞれを切り分けて組み立てていく論理展開です。
帰納法
帰納法は、複数の事象に共通する本質的な要素(エッセンス)を抽出し、そこから一般的な法則を導き出す論理展開です。コンサルティングの場面においても、抽出したエッセンスを、他のものに置き換える「例え話(メタファー)」や、他の領域に適用する「類推(アナロジー)」がよく使われます。
このような頭の使い方を「アナロジー思考」と呼んだりもしますが、こちらも後段で改めて解説したいと思います。
図 演繹法と帰納法
【演繹法】

【帰納法】

MECEとは何か
ロジカルシンキングの概要を紹介したところで、続いては「ピラミッド」の横の展開、「MECE(ミーシー)」について、解説していきます。MECEとは、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の頭文字をとったもので、日本語でいうと「もれなく、ダブりなく」という意味になります。
「ピラミッド」がより強固な構造になるためには、同じ階層に位置するブロック同士が、がっちりとスクラムを組めている必要があります。逆に、「抜けもれ」があってブロックのすき間が空いたり、「重なり」があってブロックがはみ出したりすると、ピラミッドの土台が揺らいでしまいます。そのため、しっかりとした論理構造を組み立てていく上で、MECEが重要な役割を果たします。
コンサルティングワークにおいて、MECEを活用して要素に切り分けていく際には、①単位、②切り口(軸)、③順番の3つのポイントに留意する必要があります。
①単位
例えば、組体操で人間ピラミッドを作る際、同じ段の人と「体格」が揃っていないと、バランスを保てずピラミッドが崩れてしまいます。同じようにMECEを活用する際にも、隣同士の「大きさ」感を揃えることが重要です。
また、同じ段の人が「横一列」に並んでいなければ、いびつな形のピラミッドになってしまいます。同様に、MECEを活用する際にも、隣同士の「レベル(位相)」感を揃えることが重要です。
もう1つ、「マジックナンバー3」を念頭に置くことも大事です。人間の認知能力は、3個以下と4個以上では、異なるメカニズムが働いているとされます。3個以下の場合は、パッと見て理解し、記憶することができますが、4個以上になると、理解や記憶に時間を要し、思考の流暢さにブレーキがかかります。
そのため、MECEを活用する際も、2個か3個に分解するのが理想です。
②切り口(軸)
例えば、1匹の魚を捌くとき、包丁の入れ方には様々あり、縦にブツ切りにして3等分にすることもできますし、身と骨に切り分けて3枚におろすこともできます。
実は、MECEな状態を作ること自体は難しいスキルではありません。極端な話、最後に「その他」をつければ、少なくとも「もれ」はなくなるからです。
そうではなく、大事なのは「意味のある分け方」をすることです。先ほどの例で言うと、魚を廃棄するのであればブツ切りでも問題ないですが、おいしい刺身にしたいのであればきれいな状態で身を切り取る必要があります。
つまり、「意味がある」かどうかは、何のために分けるのか、分けた後に何をしたいのかによって、変わってくるということです。
話は変わりますが、マーケティング戦略を検討する際、STP(セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング)というステップを踏むのが一般的です。
この最初の「セグメンテーション」が、MECEを活用する場面ですが、セグメントへの切り分け方は無数に存在します。それらの中で、次の「ターゲティング」につながるセグメンテーション、すなわち、有望なターゲットをあぶり出せるような切り口(軸)が、「意味のある分け方」になります。
③順番
先ほどのマーケティングの例を続けると、生活者をセグメンテーションする際の軸は、年齢・性別・居住地・職業・年収・ライフステージなど、無限に挙げられます。これらを闇雲にかけ算して、メッシュに切り刻んでしてしまうと、次のターゲティングにつながらない、「意味のない分け方(セグメンテーション)」になってしまいます。
そこで大事なのは、重要な軸から順番に切り分けることです。最初の包丁の入れ方を間違えると、後戻りが効かなくなります。例えば、消費者のライフステージに寄り添ったマーケティングをしたいときに、最初の軸に年齢や性別を持ってきてしまうと、「20代男性」「30代女性」といったブツ切りの単位で打ち手を講じることになってしまいます。
この「重要な軸を見極める」というのは、コンサルティングの場面でよく使われる大事な考え方です。そして、これを応用したのが、有名なPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析になります。
BCGが1970年代に提唱したフレームワークで、「市長成長率」と「市場シェア」の2軸をとり、商品や事業の位置づけ(花形/金のなる木/問題児/負け犬)を整理して、資源配分を最適化する手法です。
PPM自体は、あくまで1つの活用例ですが、根底にある大事な考え方は、最も重要な独立した2軸を見極めること、そして、それらを縦横にとり、2次元の平面にマトリクスで表現して、意思決定を促すことにあります。
逆の言い方をすれば、軸同士が相関する場合には、2軸をとる意味がなくなりますし、軸が3つ以上もある場合には、視覚的な意思決定ができなくなります。
ちなみに、こうした「ビジネスフレームワーク」は、その状況において最初に適用すべき切り口(軸)を、意味のある分け方と適切な単位で、あらかじめMECEに分解したもので、「思考のショートカット」としての役割を果たします。
図 PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)


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ロジックツリーとピラミッドストラクチャーの違い
続いて、ピラミッドの縦の接続、「ロジックツリー」と「ピラミッドストラクチャー」について解説していきます。
ロジックツリー
ロジックツリーは、プロジェクトの前半に活躍する、原因を分析し、課題を特定するための、問題解決の手法です。BCGの「論点整理」やマッキンゼーの「イシューアナリシス」も、このロジックツリーを使って作成します。
ピラミッド(ツリー)の最上位に、「論点」や「イシュー」、あるいは「解決したい問題」を配置し、そこから「Why」を繰り返して「原因」を掘り下げ、「真因(=課題)」を見定めにいくアプローチになります。先ほどと同じく、留意点を3つ紹介します。
1つ目は、言わずもがなですが、原因の階層ごとに、「MECE」感のある要因分解を心がけることです。要因の「抜けもれ」があると、「真因」を見逃す可能性が出てくるので、一階層ずつ丁寧に掘り下げていくことが大事になります。
2つ目は、何度も「Why(なぜ)」を繰り返すことです。トヨタには「なぜなぜ5回」という言葉もあるそうですが、「表層的な原因」ではなく「根源的な真因」にたどり着くまで、繰り返し深掘りを行うことが重要です。逆に、「表層的な原因」で止まってしまうと、「コインの裏返し」のような打ち手しか出てきません。
例えば、「売上の減少」という問題があったとして、「客数」×「客単価」に因数分解してみると、「客単価」は変わっておらず、「客数」が減っていることがわかったとしましょう。ここで「Why」を止めてしまうと、「客数が減っているので、客数を増やそう」というような、トートロジー的な打ち手しか講じることができません。
そうではなく、これ以上はもう要因分解できない、というところまで掘り進めることが重要で、そこで突き当たった「真因(=課題)」の裏返しが、具体的なアクションにつながっていれば、十分な深さまで掘り込めたといえます。
一方、「マジックナンバー3」で「なぜなぜ5回」を繰り返すと、理論上は「3」の「5乗」で「243の要因」が出てくることになります。さすがにここまでやるのは現実的ではなく、実際には「枝」や「葉」を取捨選択しながら掘り進めていきます。そのため、最終的な姿は、均整のとれた「ピラミッド」ではなく、いくつかの深い「根」を持つ「樹形図(ツリー)」のようになります。
最後は、「因果関係」と「相関関係」を混同しないことです。これはデータ分析が関わる際には特に意識すべきことで、相関関係にある2つのデータを安易に因果で結んでしまうと、「第3の要因」を見落とす可能性が出てきます。
例えば、初めて球場に来た野球ファンの「応援ユニフォームの購入率」と「再来場率」に相関関係があった場合、「応援ユニフォームを買った」ので「また球場に来た」という因果は、はたして正しいでしょうか。もしかしたら、「観戦体験が最高だった」という第3の要因があり、「また球場に来ようと思った」ので「応援ユニフォームを買った」という逆の因果も、可能性としては考えられます。
このように、データを解釈する際には、「本当にそうか」という視点を常に持ちながら、ロジックツリーに組み込むことが大事なのです。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは、プロジェクトの後半に活躍する、提案する内容を納得感ある形で伝えるための、コミュニケーションの手法です。ピラミッドの最上位に最終的な「結論」や「主張」を配置し、それを支える「根拠」や、さらにその「根拠」を支える「ファクト」を、演繹法や帰納法などを活用しながら組み立てていきます。
プロジェクトの後半にもなると、様々なファクトが集まっているので、ピラミッドの「上(結論)」から「下(根拠)」への「Why So ?(なぜそう言えるか?)」だけではなく、「下(ファクト)」から「上(主張)」への「So What ?(そこから何が言えるか?)」も組み合わせながら、論理構造を固めていきます。
余談ですが、コンサルタントは口ぐせで、「理由は3つあって」と言ったりしますが、それは頭の中にこのピラミッドストラクチャーが浮かんでいるからです。
こうしたピラミッド作りを通じて、具体と抽象の往復運動を繰り返していると、本質的な要素(エッセンス)の抽出力、つまり、「アナロジー思考」が鍛えられていきます。
アナロジー思考のわかりやすい例として、「なぞかけ」があります。「〇〇とかけまして、△△ととく。その心は、どちらも□□でしょう」というフォーマットの言葉遊びです。
この遊びを面白くするポイントは、できるだけ遠く離れた、異質なものを組み合わせることで、そこに意外な共通点を見出せると「なるほど」感が高まります。
コンサルティングの世界には、「ベンチマーク」という他の業界や企業の先進的な取り組みを参考にする手法があります。その際、「表層的なマネゴト」で終わるのか、「本質的な示唆」を得られるのかは、ひとえにこのアナロジー思考の習熟度にかかっています。
そして、「なぞかけ」と同様、できるだけ遠くの業界や、ビジネス以外の領域での取り組みから、意外性のある示唆を見出せると、クライアントへの付加価値が高まります。
また、このアナロジー思考を、プロジェクトを通じて、様々な業界や企業を対象に繰り返していると、そこに共通する構造や相似パターンが浮かび上がってきます。そうすると、まだ経験したことがない業界や企業を目の前にしても、中の構造が推測できるようになり、その積み重ねの先に、世の中のスケルトンが透けて見えるような感覚になります。
もしかしたらこれは、ロジカルシンキングやアナロジー思考を駆使して、世の中を縦横無尽に思索している、コンサルタントだからこそ見える景色なのかもしれません。
図 ロジックツリー

図 ピラミッドストラクチャー

フェルミ推定とは?コンサルティングの現場でも活躍
ここまで、最も基礎的で汎用的なコンサルスキルであるロジカルシンキングについて、活用する際の留意点とともに紹介してきました。さらに付け加えるならば、ロジカルシンキングをより有効活用するためには、そこに当てはめる「言葉」と「数字」の精度を高める必要があります。
つまり、コンサルスキルは、突き詰めると「国語」と「算数」に行き着くともいえます。ここでは、「算数」の方に焦点を当てて、「MECE×ロジックツリー」のピラミッドに「数字」を当てはめた、ロジカルシンキングの実践例でもある「フェルミ推定」について、詳しく紹介していきます。
フェルミ推定といえば、今ではコンサルティングファームの採用試験(ケース面接)の定番として広く知られています。では、なぜ「フェルミ推定」と呼ばれているか、ご存じでしょうか。
名前の由来は、ノーベル賞も受賞した物理学者、エンリコ・フェルミです。彼は宇宙の広さを考えると、宇宙人が存在する確率は極めて高い一方、現実にはこれまで人類と接した痕跡がないことを指摘し、この矛盾は「フェルミのパラドックス」と呼ばれます。
その後、フランク・ドレイクという天体物理学者が、人類とコンタクトしうる地球外文明の数を推計する「ドレイクの方程式」を提示します。この方程式は、7つのパラメータのかけ算で構成され、各々の値をどれだけ小さく見積もったとしても、1よりも大きい(=宇宙人とコンタクトしうる)という結果が出ます。
今から50年以上も前の話ですが、ドレイク博士をはじめ、その結果を信じた人たちは、地球外知的生命体探査プロジェクトを立ち上げ、その取り組みは今もなお続いています。
現在ではフェルミ推定は、ケース面接をパスするための「技術(スキル)」的な側面にフォーカスが当たることが多いようにも見受けられます。しかし、名前の由来を知れば、その本質は、未知なる問いに対峙した際、わずかな手がかりを頼りに前へと進もうとする「意思(マインド)」の方にあるのだとわかるはずです。
フェルミ推定は、別名「バック・オブ・エンベロープ(封筒の裏で行うような計算)」と呼ばれたりもします。実際のコンサルティングワークでは、さすがに封筒を使うことはありませんが、ホワイトボードを使って同様の計算を行うことはよくあります。
先ほど、コンサルティングプロジェクトは、仮説検証のサイクルを高速で回している、と紹介しましたが、その過程で、大まかな仮説を作ったり、サクっと検証したりする際に、フェルミ推定は活躍します。
例えば、新規事業開発系のプロジェクトでは、市場全体を見渡した上で、どこにどんな事業機会がありそうか、ブレストをしながら幅出しをします。その際、それぞれの事業の〝ざっくりとした規模感〟、1億円規模なのか/10億円規模なのか/100億円規模なのかくらいのオーダー感でフェルミ推定を行い、そもそも検討するに値するかを見極めます。
また、既存事業改善系のプロジェクトでは、エクセルで壮大なシミュレーションモデルを組むこともあります。その際も、フェルミ推定で〝できあがりの数字のイメージ感〟を持った上で、ゴールシーク的に分析を行い、仮説検証のサイクルを回します。
このように、フェルミ推定は「机上の計算」ではありますが、当座の仮説をもとに前へ進もうとする「意思」を内包した、実践的な「技術」なのです。
ロジカルシンキングを土台に、MECE、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャー、フェルミ推定を使い分けるのがコンサルタントの思考法です。いずれも、使い方を誤ると表面的な結論に終わってしまう点は共通しています。

A.T.カーニー・BCG出身の藤熊浩平氏による『コンサルティングビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を、コンサル転職をご検討中の方に無料でお届けしています。業界の歴史から主要ファーム、プロジェクトの進め方、キャリアまでを1冊で押さえられます。本記事はその一部を抜粋したものです。
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